『2049』よりブレードランナーの続編めくフィーバー・レイの最新MV

最新ミュージックビデオ「To the Moon and Back」は暗がりにネオンが光り、退廃的で官能的な世界を描いたSF作品だ。

by Charlotte Gush
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02 November 2017, 6:24am

フィーヴァー・レイをわたしが愛する理由はいくつもある。ひとつは自身の名を冠したデビューアルバム『Fever Ray』が、魔術や異教徒女性のスピリチュアルなパワーに世界が夢中になることを予見していたから。そしてレトロなランプシェードを不気味極まりないステージ衣装にしたりするから。ザ・ナイフの片割れとしてカリン・ドレイヤー・アンデルセン(Karin Dreijer Andersson)は2004年にシングル「Heartbeats」を、2006年にアルバム『Silent Shout』を発表し、わたしたちはその不気味なサウンドに体が踊り出すのを止められなかったから。2013年にアルバム『Shaking the Habitual』を発表した際、数々のインタビューでわたしたち音楽ファンにジェンダー理論の権威であるジュディス・バトラーの存在を知らしめてくれたから。そして映画『ブレードランナー 2049』が女性軽視の視点を拭えず残念な結果に終わった今『ブレードランナー』続編のあるべき姿を見せてくれたから。

さあ悪魔的フェティシズムの世界を旅してみよう。フィーヴァー・レイが8年間の沈黙を破り前触れもほぼなく(「ほぼ」というのも、4日前に数バージョンの予告映像が公開されていたから)帰ってきた。「ディストピア的SMの世界がすぐそこに迫ってきている」と少なくとも今後数年の間、わたしたちは考えておいたほうが良いのかもしれない——このビデオはそう思わせてくれる。現実を見ても、やはり世界の終末は近いと認めずにいられないし、スマホはわたしたちを『ブレードランナー』のレプリカントにしてしまっている。だからこのビデオでフィーヴァー・レイが描いている、煙立ち込め、ネオンがまたたく『ブレードランナー』のような世界を受け入れるしかないのだ。荒廃した街が雨に濡れ、ネオンが道路を照らす。機械につながれて再起する人間たち。ゴム加工が施された服。未来的なティーパーティ。蛍光色に光る管でつながれて得る快感と絶頂。

ビデオの発表に伴い公式アナウンスはない。しかし予告映像にはフィーヴァー・レイの最新プロジェクトを知るためのヒントが並んでいる。「わたしはサディスティックだけれど心温かく、SをやるのもMをやるのも好き。同種の相手求む。アイデア、肌の温もり、息遣い、政治観、夢、そして体液を、何時間も分かち合いたい」という文が冒頭に映し出される。「この8年間で多くを学び、多くを学び損ねた。愛し、愛された8年間」と映像は続き、デビューアルバムの発表から現在までの遍歴ついて触れている。「心の奥にある恐怖心をみんなで直視して先に待ち受けている未来へと飛び込んでいきましょう。皆で肯定を」

サウンド的には「Silent Shout」にも顕著だったエレクトロニック・ビートとビデオゲーム的テンポとポップミュージックを融合させている。歌詞には「I know you like tangerine / And your kiss is sweet and creamy(タンジェリンが好きなんでしょ? あなたのキスは甘くクリーミー)」など官能的な表現や「Your lips, warm and fuzzy / I want to run my fingers up your pussy(柔らかい毛が囲む、あなたの温かい唇——あなたのあそこに指を入れたい)」などとストレートな表現も見られる。セイント・ヴィンセントがピンクの箱に顔だけ突っ込んで行なったインタビューがあるが、あのコンセプトすらフィーヴァー・レイが今打ち出している世界観を前に、ジャーナリストたちに向けた余興だったようにすら感じられる。

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