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ベルリン出身のいないベルリン

ひとはさまざまな理由でベルリンに来る。性的に解放したい者や、クリエイティブな可能性を求めて来た者、ただ良質のレイヴを楽しみに来た者もいるだろう。しかし、彼らがどのようにしてベルリンへやってきたかは問題ではない。彼らは国境という概念を超えて、まったく新しい力を発しているのだ。

by Anastasiia Fedorova
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06 September 2016, 1:10am

Cathy from Taipei, Taiwan

ベルリンは、ユースカルチャーにおいて特別な意味を持つ街だ。20世紀には、その複雑な歴史が芸術家たちを何度となくベルリンに引き寄せた。1930年代にはワイマール共和国に点在したキャバレーの退廃的な美が、70年代から80年代にかけては西ベルリンの粗野な魅力が、そして90年代にはテクノレボリューションが、近代ヨーロッパという存在を形成するのに大きく貢献した。そして今、ベルリンは再びその存在感を増している。極右派が世界的に増殖するなか、ベルリンは真のコスモポリタン首都として、その輪郭を色濃くしているのだ。政治家たちが再び壁と国境を作ろうと動き出している世界情勢を脇目に、ベルリンは誰にでもオープンな姿勢を保っている。自身も移民である写真家のGeorge Nebieridzeは、常に変化しているベルリンを写真に収め続けている。

グルジア出身のNebieridzeは3年前にベルリンへと移住した。そして移住したその瞬間に、ベルリンこそが自分のいるべき場所だと感じたという。「瞬時に感じるんです」と彼は言う。「観光客でさえ、来たばかりのベルリンを"自分が帰るべき場所"と呼ぶ。ここへ移住したことで、僕は突き抜けることができました。自分がベルリンの一部になった実感があったし、切っても切り離せない存在になった感覚がありました」

ベルリンは常に変化している。その性質へのトリビュートとして、Nebieidzeは『Nobody's From Berlin in Berlin』シリーズを撮影し始めた。パーティやストリート、公園や借家で撮りためたスナップ写真のコレクションだ。「このプロジェクトに収められている写真はどれも、僕がここに暮らしてきた3年間に出会った天使と悪魔たちのものです。なかには仲の良い友達の写真もあれば、これから仲良くなりそうな知り合いの写真もある。ほとんどはパーティで出会う人たちです、もちろんね。惹かれる理由は被写体によってさまざまですが、僕はいろんなひとに気軽に声をかけて写真を撮らせてもらっています」

Nebieridzeが写すのは、ベルリン出身の人々ではない。Nebieridze同様、世界のさまざまな場所からベルリンへと移り住んだ人々ばかりだ。オーストラリア、アメリカ、ポルトガル、台湾、ロシア、そして南アフリカから来たひともいる。「ベルリンに移り住んでもうすぐ3年が経ちますが、ベルリン生まれ育ちというひとには5人と出会っていません。僕が部屋に引きこもるタイプだからとかいうわけではなく、ベルリナー嫌いだからというわけでもない。それだけこの街にはベルリン出身者が少ないということなんです。パーティにこぞって参加する人たちやアートシーンには、狂気の沙汰ともいえるレベルの多様性が見られます。それがベルリンの街に爆発的な力を生んでいるんですね。このバラエティは魅惑的で美しい」とNebieridzeは話す。「ひとつ確かなのは、ベルリン出身でなくとも、彼らは真のベルリナーだということです。シーンを作り出し、カルチャーを形作る個人こそがね。彼らなくしてベルリンという空間はありえない。私たちの存在がなければ、ベルリンもただの灰色な産業都市です」


Catalin from Bucharest, Romania

Nebieridzeのレンズを前に、被写体は国籍をなくし、ベルリンの新たなトライブの一員となってしまう。なかには、自らを性的に解放したいとベルリンへやってきた者もいるだろう。そしてクリエイティブな可能性を求めて来たアーティストや、良質のレイヴを楽しみに来た者もいるだろう。しかし、Nebieridzeの写真のなかでは、彼らがどのようにしてベルリンへやってきたかは問題ではない。国境という概念を超えて、まったく新しい力を発してそこに存在しているのだ。同時に、Nebieridzeのポートレイトは新たな移民の波を捉える以上の意味を持っている。そこには、偶然出会う静かな場所を温かい視線で捉えた、オーセンティックなクオリティがある。「写真のなかで、人々はみなリラックスしています。僕は彼らに何も指示をしないので」とNebieridzeは言う。「彼らが自由を謳歌している瞬間を捉えるわけです。カメラを構えたらすぐにシャッターを切るので、彼らも身構える暇がない。大きなキャンペーン広告や著名フォトグラファーに起用されてカメラの前に立つような人も、僕の写真には多く登場しますが、僕の前でのほうが彼らはより本来の彼らの姿を見せてくれているように思います」

Steven from Leingarten, Germany

「ただ人を撮るのが好きなんです。分け隔てなくね。だからポートレイトの整理もほとんどしません」と彼は付け加える。「僕はいつも、ひとや風景をごちゃまぜにしていたんですが、今回は僕をインスパイアしてやまないベルリンの生き物たちにのみ焦点を当てることにしました。ベルリンを思うときに思い浮かべる天使と悪魔。どんな美術館も、どんな建築物も、彼らほどにベルリンを体現できはしないんです」。全体として、Nebieridzeのシリーズは、世界の若者が憧れ、そして真似しようと躍起になるであろうベルリンスタイルの記録としても成立している。彼が言うところの、クールな「真のベルリナーたち」は、スポーツウェアやレザー、毅然とした態度とユーモアのセンス(下の画像で、Vetementsへのオマージュを捧げる海賊版Tシャツなどはその好例だろう)をミックスした独自のスタイルを築き上げている。「簡単な言葉でベルリンのスタイルを言い表すのはイヤなんですが、でも特定のファッションを追っているひとがいるのも確かですよ」とNebieridzeは言う。「スポーティ・トラッシュのスタイルは依然として人気だし、スカンジナビア・スタイルのゴス好きもたくさんいます。でも、僕の写真に捉えられている人たちには、それぞれが憧れるスタイルやトレンドがあって、それが無視しがたい世界観を作り出しています。ここの人たちから大きなファッショントレンドが生まれたりもしているんですよ。最新のVetementsやGosha Rubchinskiyのショーを見ましたが、"2014年にベルリンで見たスタイルそのままじゃないか"と思いました」

Graham from Fresno, USA

いま、私たちは、"世界中から集まった若者が生むクリエイティブなエネルギーによってのみ成立する街"の好例として、そして多文化がぶつかり合って融合する世界の象徴として、ベルリンを崇めてやまない。これこそが理想郷なのだろうか? Nebieridzeは、今後もたくさんのポートレイトを撮っていくそうだ。「まだまだ写さなきゃならないものがたくさんある」と彼は言う。「ベルリンに集まる人々は、僕にとって、そして他の多くのクリエイティブな人間にとって、巨大なインスピレーション源ですから。興味深い事実として、ベルリンに来るひとも多い一方で、去っていくひとも多い。ということは、その流れは止まることがない。次から次へと刺激的なひとが現れ続けるということなんです」

Ande from New York, USA
Davide from Naples, ItalyGeorge from Tbilsi, Georgia

Jonathan from Jacksonville, USA. Matthew from Brisbane, Australia
Kewin from Paris, France

Nicolas from Vienna, Austria
Temulin from Ulaanbaatar, Mongolia

Karsten from Herne, Germany. Alexandra from Chisinau, Moldova
Braulio from Lisbon, Portugal

Nobody's from Berlin in Berlin series の詳細はこちら

Credits


Text Anastasiia Fedorova
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.