bottega veneta spring/summer 17 at milan fashion week

すべてを受け容れる真のラグジュアリーブランドBettega Venetaが誕生50周年を迎え、それを記念するアニバーサリーショーが披露された。

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03 October 2016, 9:03am

ちょっとやそっとでは感動しなくなっているショーの常連観覧者たちでも、やはりアニバーサリーショーには感動を隠せない。今年で誕生から50周年を迎えたBettega Venetaは今シーズン、しっくいの色が美しいアッカデミア・ディ・ブレラ大学でアニバーサリーショーを行なった。会場にはスタンディングオベーションが起こっていた。ショー中頃には、80年代の映画『アメリカン・ジゴロ』にBottega Venetaのバッグを持って出演したローレン・ハットンが、ベージュのトレンチコートを着て登場。Bottega Venetaが映画史に貢献してきた歴史が讃えられた。90年代にプレタポルテに参入するまで、Bottega Venetaはバッグのブランドだった——といっても、ただのバッグ屋ではない。ジャクリーン・ケネディ・オナシスからイランの皇后にいたるまで、世界のシックな女性が憧れるバッグのブランドだった。2001年にクリエイティブ・ディレクターへと就任し、2005年からはウィメンズ、その翌年からはメンズのコレクションも手掛けているトーマス・マイヤーのもと、Bottega Venetaはこれまで常に広い顧客層に向けたクリエーションをモットーとしてきた。もちろん良質なラグジュアリーの世界ではあるが、それなりの大きさの貯金箱にお金が貯まれば誰でも仲間入りができる、器の大きいブランドだ。マイヤーはそこを深く理解している。だからこそ、マイヤーはこのアニバーサリーショーでウィメンズとメンズのコレクションを入り混ぜ、モデル選びにも今季ミラノ・ファッションウィーク随一の多様性を見せたのだ。「僕はどんな分類も好きじゃない。肌の色にしろ年齢にしろ、他のどんな分類も僕はしない」とマイヤーはバックステージで力を込めて言った。

「このショーは『これを着るには16歳でなければならない』とも『これを持つには50歳でなければならない』ともイメージ付けていない。そんなイメージはナンセンスだからね。ただ自信を持って身につける——ただ、静かなラグジュアリーを楽しみさえすればいい洋服ばかりのはずだよ」。マイヤーがBottega Venetaで作り出してきたプレタポルテの世界は、これまで常にこのブランドがアクセサリーに伝承してきた「静かなラグジュアリー」という世界を反映してきた。今回のコレクションには、ひとつとして派手なショーピースは登場しなかった。しかし、力強い職人技と緻密な製造工程、そして高い技術により、ランウェイへと登場した作品はどれもが息をのむほどの美しさだった。「これ見よがしじゃないファッションがBottega Veneta。服に関しておくゆかしく、洗練と教養があって、美しく作られたシャツや素材、ディテールを見ればその違いがわかる、そんなひとのための服なんだと思う」とマイヤーは説明した。必要な要素のみを残し、Bottega Venetaのトレードマークともいえる秋を思わせる配色でとことんクラシックな服のみで成り立っている今回のコレクションについて訊くと、マイヤーは、コレクションに登場したあらゆるタイプのアイテムを挙げて説明し始めた。まるで、ソックスやシューズにいたるまでそこに意味を見出そうとするファッション界に、辛抱強く優しく説明をするかのように。

「ウィメンズには、パンツ、シャツ、セーター、スカート、ドレスがあって……でもそこに語るべきことなんてほとんどないかな。なんの意味も込められていないけれど、ただ美しいアイテム。装飾を排除した美しさと軽さ」。ショーを——ましてやアニバーサリーショーを——披露するとなればそこに何かしらのメッセージが期待される今という時代とトレンドにあって、その言葉は勇敢に響いた。しかし、マイヤーにとっては「すべてを受け容れ、本当に良質のラグジュアリーを」というBottega Venetaの核にある「メッセージなどない」という状態こそがメッセージだったのだろう。それでも、50年という歴史を持つ静かな佇まいのメゾンのために今回のようなショーを披露するということ、またジジ・ハディッドやローレン・ハットンなどをモデルに起用してウィメンズとメンズを合同でコレクション発表するということは、マイヤーに相当の柔軟性を強いたはずだ。来シーズンには、GucciやVivienne Westwoodなどのブランドがウィメンズとメンズを合同ショー形式で開催する予定で、今後はますますランウェイでの多様性——人種、年齢、性自認などあらゆる面での多様性が打ち出されていくことになるだろう。「今後もこの方向性でいこうと思っているよ」とマイヤーは、ウィメンズとメンズを入り混ぜたショー形態についての我々の質問に答えた。「会社としても、それが自然だと思うしね。メンズのファッションウィークに合わせてウィメンズを作る会社があってもいいじゃないか。コレクションはいつでも一緒に作られるんだから。僕はどちらのコレクションも同じアプローチで制作するよ。まず素材を選んで、カラーを考えて、そこからは女性的な方向にもっていくか男性的な方向へもっていくかという違いしかない」 今回のアニバーサリーショーで、マイヤー自身は社会的にも政治的にもメッセージを発信しようなどとは思ってもいなかったかもしれない。しかし、彼のBottega Venetaに対する理解の深さと、Bottega Venetaがファッション界で果たす役割をもって、彼の意に反してこのショーは大きなメッセージを世界に発信したかたちとなった。

Credits


Text Anders Christian Madsen
Photography Mitchell Sams
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.