国際的ラッパー、レジー・スノウの理想と現実

国際的な高い知名度がありながら、地元の若者からも多くの尊敬を集めるダブリン出身のラッパー、レジー・スノウ。待望の新アルバム『Dear. Annie』の発売により、彼は今後ますます注目を浴びることとなるだろう。その彼が創り出す音楽の裏側に迫る。

by Lynette Nylander
|
25 July 2016, 6:55am

Rejjie wears Blanket Braindead. Hat and chain model's own. 

LAにいるまだ眠たげなレジー・スノウ(本名: Alex Anyaegbunam)と、劣悪な電波状況のなか、電話で話を聞いた。現在22歳のスノウは、USツアーの真っ最中だ。今は待望のデビューアルバム『Dear. Annie』のレコーディングを終わらせるため、ロサンゼルスにいるのだという。起きたばかりのスノウ。前夜のパーティでは大麻入りブラウニーから始まり、ここには書けないような悪ふざけを散々しつくし、それはもう最高にトリッピーで愉快な夜を過ごしたという。i-Dのオフィスから電話で話していると隣のオフィスから彼のエレクトロファンクの曲「Blakkst Skn」が微かに聞こえてきた。それを電話の向こうで聞いたレジーは満足そうに「それだけでいいんだよ。自分の音楽がどこかの誰かに聴いてもらえてるってことが大事なんだ。それ以外はどうでもいいよ」と言う。

Blanket Braindead. Hat and chain model's own. 

「オヤジは旅ばかりしていて、留守が多かったんだ。だから、面倒を見てくれてたばあちゃんから多くのことを教わったよ。彼女に育ててもらったようなもんだね」と彼は話す。姉と弟とともにダブリンの北部で育ったスノウにとって、祖母の存在が何よりも大きかったようだ。子供の頃、彼は学校で唯一の黒人で、人気者だったという。「みんなと違ったからじゃない? 走るのとサッカーが得意だったけど、すごくシャイで物静かだったよ。でも、とにかく怒りっぽい子供で、怒りをいろんなかたちで表現していたね。問題ばかり起こしてた。学校にも興味がわかなくて、早く社会に出て自分のやりたいようにしたかったんだ」。彼がやりたかったこと、それは幼少期からすでに目覚めていた音楽だ。「子供の頃からいつも音楽を聴いていて、もっと知りたいと思っていた。他のどの友達よりも、音楽に執着してたね。曲だけじゃなく、その音楽にかかわっている人やカルチャーについても知りたかったんだ」とスノウは話す。13歳までステージスクールに通っていたというスノウは、タップダンスのレッスンを受けたりパントマイムを演じたりと、舞台に立つことには積極的だった。「イギリスの映画『ダウンタウン物語』で管理人役を演じたりしたよ」と彼は笑って言う。「それにYouTubeを見て独学でピアノを学んで、ベタなのばかり弾いていたときもあったね。15歳のクリスマスには、エンリケ・イグラシアスの曲を弾いたんだ。クラリネットを習っていた時期もあったし、本当にたくさんのことをやっていたよ。でもその頃、女に目覚めて、課外活動は全部辞めたんだ」。

All clothing model's own. 

17歳のときにスタジオを借り、ルイ・ゲイ(「当時マーヴィン・ゲイが好きだったんだ」とのこと)やレックス・ルーサーと名乗り、曲をインターネットに載せたことで、彼は注目を浴びることとなった。音楽が心底好きで、才能もあったにもかかわらず、アメリカのサヴァンナ芸術工科大学からサッカーの奨学金のオファーをもらったスノウは、その大学に進むことを決めた。「音楽は大好きだった。でも、その気持ちを吐き出す先がなかったんだ。行く場所も、曲を作れる場所もなかった。友達は誰もそんなことやってなかったし。道を塞がれた気分だったね」とスノウは話す。

そうして大学に通っているときに、エルトン・ジョンが設立したロケット・マネージメントの代理人たちがYouTubeの動画をたまたま見つけて、彼に会いに来ることになった。「エルトン・ジョンが直接電話をしてきて、俺の大学まで来たんだ。あのエルトン・ジョンが!? 嘘だろ!? って思ったね」と当時のことを、今でも信じられないことのように話す。2013年、彼が20歳のときに5曲入りのデビューEP『Rejovich』をレジー・スノウ名義でリリースした。そのトラックリストには、友達のジェシー・ジェームス(「Ussr」)とロイル・カーナー(「1992」)をフィーチャーした曲も入っている。どの曲もメロウとハードの中間的なリズムが特徴的だ。それに気だるそうなアイリッシュ訛りのラップが交ざり、耳に強く残る。

All clothing model's own. 

2015年には、キャム・オビがプロデュースを務めた「All Around The World」をリリース。キャム・オビはチャンス・ザ・ラッパーやヴィク、メンサ等とのコラボ経験も持っているプロデューサーだ。「All Around The World」は、スノウが不明確な愛と喪失感を歌った曲だ。リリー・ローズ・デップがPVに登場したことでも話題を呼び、リリースしてからわずか1週間で5万回以上の再生回数を記録した。

2016年は、母親に捧げた「Late Again」や、投獄されている仲間のために書いた「Keep Your Head Up」などをリリースした。スノウは、曲に込めた思いやストーリーについて、「俺の曲はいつでも現実から引用するんだ。全部が事実に基づいている。長い間、アルバムを出さなかったのも、そのあいだ何も起きなかったからだよ。リリックにするような出来事がなかった。架空の台に立って偉そうに語るのは変だろ。だったら黙ってるほうがいい」と話す。しかし、今のスノウには言いたいことがたっぷりあるようだ。もうすぐ発売となる『Dear Annie』では、彼曰く「今までの経験や見てきたものすべてを大きなミキサーに入れて、ごちゃまぜになっているんだ」。生と死がテーマで、"アニー"は特に誰というわけでもないが、女神の象徴だという。「アニーは抽象的なシンボルで、これはすべての女の子、つまりアニーに宛てた手紙なんだ。過去に犯したあやまちをこのアルバムを通して謝って、けじめをつけたい。曲は楽しくて気分がアガるものもあるけど、ダークな面もある。ややこしいけど、聴けばわかるよ。ひとつ言えるのは、これは俺が初めて手掛けた、ありのままの自分を映したアルバムだってこと」とスノウは続ける。どんなサウンドなのかは聞くまでわからないが、まるで彼自身のように、悪びれることなく、とことんリアルなアルバムに仕上がっているのは確かだ。「みんなが求める理想像と本当の自分を両立したいね。それでダメだったら、そのときはそのときだ」

Credits


Interview Lynette Nylander
Photography Jalan and Jibril Durimel
Translation Aya Tsuchii

Tagged:
Rejjie Snow
music interviews
dear annie
rejjie show