Photography by Takao Iwasawa

「シンプルとは、落ち着いて急がないこと」:キコ・コスタディノフinterview

ASICSとのコラボシューズ「GEL-BURZ 1」ローンチに際して来日した、キコ・コスタディノフ。このコラボと自身のブランドKIKO KOSTADINOVについて淡々と語る彼の言葉の折々からは、未来を見据える落ち着いた情熱があらわれていた。

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Takao Iwasawa
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13 February 2018, 1:33pm

 Photography by Takao Iwasawa

2018年2月7日、ASICSとKIKO KOSTADINOVがコラボレートしたシューズ「GEL-BURZ 1」のグローバルローンチの翌晩だった。LFWMを牽引する存在として大きな期待がかかる27歳のデザイナー、キコ・コスタディノフとは、特設ディスプレイが2月14日まで展開されているDOVER STREET MARKET GINZAで待ち合わせた。彼は、どの質問にも瞬時に、飄々と語り返す。過剰な装飾性を排し、1着のクオリティに情熱をささげる彼のクリエーションと整合するように、その語りぶりにもデザインに対峙する誠実さが香ってくる。それほど自身のなすことを常に客観的にとらえ、“思考”を断続させない人なのだ。

Installation at DSM GINZA. Photo Courtesy of DOVER STREET MARKET GINZA

彼とASICSの出会いは、約2年前のCSM卒業後(在学中からSTUSSYと協業していたことも彼について知っておくべきことのひとつだ)。「小さい頃からASICSの大ファンだし、7年くらい前から愛用しています。僕が彼らに抱くリスペクトはファン目線と言ってもいいくらいですよ」。ASICSのオファーで端を発した今回のコラボレーションの鍵となったのは「彼らが試したことのなかった“パフォーマンス(表現)”の部分に挑戦すること」だ。キコのInstagramにはASICSの本社がある神戸に足しげく通う姿があった。デザイン部門に加え、2年先を見据えて開発を行うスポーツ工学研究所(ISS)があるのだという。「ASICSはアイコニックなプロダクトをゼロからインハウスで作れるビッグカンパニーです。ソールを素材から作り、新しいロボットを開発し、最終的なサンプリングまでのすべてをね」。ASICSが有する無二のテクノロジーや生産背景を活かして生み出されたのは、その象徴的なシルエットやモチーフを繊細に踏襲しながら、(00042018と“ナンバリング”される)2018年春夏のカラーリングやストーリーを大胆に取り入れたシューズだ。「彼らにとっても“新しい始まり”ですから、現時点ではその理念やDNAをしっかり理解し、僕なりの敬意を払うことが非常に重要だと思っています」。さらに、去る1月に発表された2018-19年秋冬コレクション(00052018)ではASICS Sportsとチームアップしたトップスとレギンスも発表——彼らとは「オン・ゴーイング」な関係を築いていきたいと力強く語る。「この2型は、言わばアパレルへの第一歩です。独立したカプセルコレクションを作ることが、次のステージだと思っています」

Installation at DSM GINZA. Photo Courtesy of DOVER STREET MARKET GINZA

ブルガリア出身のキコ・コスタディノフは、16歳のとき家族と一緒にロンドンに移住し、現在の活動拠点もまたロンドンにおいている。「今の仕事とブルガリアでの子ども時代との関連性は感じません。自分の出自を忘れ、ロンドンという場所で再スタートした感覚なのです」。CSM在学中から有望視されてきた彼の卒業制作を含めた初期のコレクションは、ユニフォームやワークウェアからのインスパイアを強く感じさせる。「確かに以前はそうですね。でも今は、直接的影響よりも、日常的に刺激を受けることのひとつという位置付けですね。自分が作るものは、自分が目にした様々なものの間接的なミックスであって、特定の何かの“リピート”ではないのです」。去る1月のコレクションは、ブルガリアの伝統的な陶器から着想したカラーリングだ。「ワークウェアのトータルルックのように最小限の色の数で構成されたコレクションもありましたが、00042018では6種類のマルーン(海老茶色)を使いました。それに僕たちは1つの色を様々なファブリックに使うので、必然的に異なるシェードやテクスチャーが生まれます。それを別の色としてカウントするなら、1つのコレクションに15色以上使ったことになるので、かなり多いですよね」

Installation at DSM GINZA. Photo Courtesy of DOVER STREET MARKET GINZA

何よりもKIKO KOSTADINOVのコレクションを特徴づける要素は、そのシンプルかつ複雑なカッティングだ。「僕たちのデザインプロセスにおいて、最も大切なことですね。シーズンごとにできる限りクリーンで他にはないパターンをひいて、僕にとっての“新しい”シルエットを作っています。過去のシーズンのものは使わず、毎回ゼロから始めるのです」。さらに「膨大なリサーチで得た複数のアイデアをまとめながら、新しい何かを生み出す」というプロセスを重視するのだと話す。「例えばパンツなら、サイクリングパンツかもしれないし、ミリタリーパンツかもしれない。それらをレプリカとして落とし込むのではなく“いかに自分たちのものにするか”という自問自答と帰着点が欠かせません」。変化を肯定し、既成を更新する方法論。その裏にはやはり、実直にデザインに向かう彼らのスタイルがすけて見えてくる。そして、多くのインタビューで彼が語ってきた「自分のレーベルをカテゴライズするのは時期尚早だ」という明朗な意志を思い起こさせる。「現時点では、今の自分たちの仕事の中で何がベストかを見極めるためにも“カテゴライズ”しないことが重要だと思っています。いずれ自分たちの基盤となるようなコレクションやシグネチャーとなるアイデアが生まれるときが来るかもしれません。それは2年後か5年後かもしれないし、1シーズン後かもしれない。ですが、今の僕にはKIKOパンツもKIKOシャツも必要ないのです」

Installation at DSM GINZA. Photo Courtesy of DOVER STREET MARKET GINZA

日本が世界に誇るヘアメイクアーティストの加茂克也は、00052018のために朗らかな美を賞賛するような有機的なヘッドピースを手がけ、今回のDSMGのインスタレーションにもスペシャルピースを作り上げた。「加茂さんとは1度きりで終わらない関係を築けていることがエキサイティングですね。できれば3年後も5年後も、関係を発展させた上でプロジェクトをご一緒できたら嬉しい。彼は僕たちにとってもレジェンドですから」。キコの話の折々には、不確定な「数年後」や「現時点」という言葉が頻出する。中長期的に物事を捉え、決して合理主義に陥らず“時間”の使い方に特別な価値を見出しているのだろうか。そこでふと、自身のデザインやそのプロセスにおける彼にとっての「シンプル」とは、どういう意味なのかと尋ねてみたくなった。「それは“急がない”ということです。例えば、『どうしよう、ASICSのコラボレーションだからクレイジーで特別なことをしなきゃ』と焦る代わりに、ゆっくり落ち着いて始めるのです。それはMACKINTOSHのカプセルコレクションでも同じです。最初からすべてに取り組むのではなく、緩やかにスタートして、よちよち歩きになって、歩き始める。そうした過程を通過して、ようやく走り出すのです。だから僕にとってのシンプルとは、落ち着いて急がないことにあるのです」

ASICS × Kiko Kostadinov「GEL-BURZ 1」BLACK
ASICS × Kiko Kostadinov「GEL-BURZ 1」GREY
ASICS × Kiko Kostadinov「GEL-BURZ 1」FLUO

KIKO KOSTADINOV 2018-19AW 2018SS

KIKO KOSTADINOV official instagram

ASICS + KIKO KOSTADINOV Asics+kiko

ASICS official web site