Kero Kero Bonito:バイリンガル・ポップスの誕生

ミックステープの発表とともに突如現れて2年もの間ファンを待たせ続けたケロケロボニート。バイリンガルで新たなポップスを切り開く彼女らにデビュー・アルバム『Bonito Generation』について話を聞いた。

by Salvatore Maicki
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14 December 2016, 5:19am

Sam Evans-Butler

ケロケロボニート(Kero Kero Bonito)の手にかかって面白くならないものなどない。メンバー、サラ・ミドリ・ペリー(Sarah Midori Perry)とガス・ロッバン(Gus Lobban)、ジェイミー・ブルド(Jamie Bulled)の3人が2013年に結成したケロケロボニートは、二ヶ国語を操る、絶妙で唯一無二のネオン・ポップを作り出すべく始動した。2014年にはSoundCloudでミックステープ『Intro Bonito』を発表してその年注目のグループとなり、その後もライアン・ヘムズワース公認シングル「Flamingo」で英語と日本語を華麗に散りばめたスイートなサウンドを打ち出し、さらなる話題を作った。人気が急速に拡大する3人だが、それに伴って彼らを取り巻く謎も深まっていった。この3人は誰なのか? 3人はこのままケロケロボニート独自の底抜けに楽しい極上サウンド世界を継続していくことができるのだろうか?

そんなケロケロボニートが、公式デビュー・アルバムをリリースすることになった。『Bonito Generation』で彼らはこれまでリスナーの想像の域を出なかったケロケロボニートの全容を自ら明らかにする。普通の卒業式に違和感を感じる自分に気づいたり、ニュートンの法則に逆らう哲学をトランポリンに見出したり--そんなこんなをすべて音楽に変えるサラ、ガス、ジェイミーの3人に、キラキラした世界観の裏にある哀愁や、現代ポップスにおけるバイリンガル文化の意味について聞いた。

ケロケロボニート結成の経緯についてきかせてください。
ガス:僕とジェイミーは子どもの頃から友達で、シンガーを迎えて音楽プロジェクトをやりたいとずっと話していたんです。そこで募集広告みたいなものを出してみたんだけど、すぐには「これだ」というひとに出会えなかった。そこに、日本人ハーフの友達がMixBというウェブサイトを勧めてくれて--MixBは、ロンドンに暮らしている日本人の掲示板のようなサイト。その友達が「ほとんどが家探しや英語レッスン関連の書き込みだけど、でもきっとMixBでいい人材が見つかるよ」と言うので、募集の書き込みをしてみたんです。
サラ:音楽の経験はまったくなかったんですけど、なにか面白い書き込みがないかと毎日MixBを見ていたところにふたりの書き込みを見て、「やってみようかな」と。そこで申し込んでみたんです。会って、リハーサルをやってみたらいい感じで、そこからは瞬く間に物事が進んでいった感じです。

SoundCloudで人気に火がついた頃から今回のデビュー・レコード『Bonito Generation』までの進化について教えてください。
ガス:あのミックステープ『Intro Bonito』は、僕たち3人が出会ったときの感覚、3人だからこそ作り出せると感じた世界観を、そのまま体現した作品でした。ミックステープって、クリエイティブで自由な感じがする--「とにかく形にしなきゃ」という気負いもなく、音を追求することができるんです。出来上がったものより、もっとブートレッグ的な音を作り出したいと考えてたんですけどね。でも同時に、あの頃はもう今回の『Bonito Generation』のサウンドを模索していましたね。
サラ:『Bonito Generation』は、ミックステープを公開した直後にすでに取り掛かっていたんです。当時、私は学校の卒業時期で、卒業式には行かなかったですけどね。ただただ行きたくなかったから。卒業式の夜にはBunkerでショーをやりました。学校の制服を着て--ショーの様子をビデオに収めて、YouTubeにアップしたんですが、それが私なりの卒業式のように感じました。だから、あの曲は私にとって特別な意味を持っています。
ガス:僕たち3人は、誰も卒業式に出ていないんですよ。理由はそれぞれですけど。僕が式に出なかったのは、卒業式の日の夜が『Bonito Graduation』のジャケット用アートワークの締め切りだったからです。
サラ:私たちはツアー中だったんだよね、ジェイミー?
ジェイミー:僕は飛行機の中だったね。

ケロケロボニートにとってヴィジュアルは重要な要素で、あなたたちはそこに共通した美的感覚を持っているように感じられます。あの世界観は意図的に打ち出したものだったのでしょうか?
サラ:ケロケロボニートはそれそのものがひとつの世界を作り出している--私たちはそう考えています。音楽があってヴィジュアルがあって、そこに世界が生まれる。その世界に生まれるすべてが、ひとつのパッケージとして存在するんです。
ガス:いいバンドには独特の世界観があるでしょう?クラフトワークにも、クラフトワーク独自の世界観がある。僕たちが書く曲には、どれも繋がりがあるんです。例えば、「Fish Bowl」を書いたのは「Lipslap」のビデオで魚が出てきたところから着想を得ていたり。

ではケロケロボニートの世界を構成するものとは?その法則とは?
ガス:ヴィジュアルですかね。でも僕たちは、ただヴィジュアル的なものを曲にしてそのまま放出していくようなことはしません。自分自身であること--サムい表現ですが(笑)
サラ:3人が溶け合ってできるのがケロケロボニート・ワールドですね。

とても楽観的でポップな視点が特徴的ですが、その視点を保つのは大変ではありませんか?
サラ:私はケロケロボニートの音楽を「単にハッピーな音楽」だとは思いませんよ。例えば「Trampoline」は「落ちるからこそ、また飛び上がることができるんだ」というアイデアから書いた曲ですしね。虹色で可愛いだけの世界観では決してありません。表面的に見れば私たちはハッピーなバンドのように思われがちですが、よく見てみたら、悲しみあってこそのハッピーだということが分かると思います。

Bonito Generation』の制作過程で、「方向性が定まった」と感じた瞬間は?
ガス:このあいだのツアーでは、移動中にアメリカのポップス専門ラジオをよく聴いていたんです。あんなに長い時間、いわゆるヒット曲ばかりを聴くという機会もそうそうないですよね。それがとても良い影響になりました。ラジオは今、方向性が定まっていなくて、時代に媚びを売る感じが強いというか--きっと転換期を迎えているんだと思います。ツアーを終えてロンドンに戻ったとき、「ラジオで聴いた曲のことが忘れられなくて、そのメロディを歌って聞かせる」という曲を書こうと思いついたんです。「ねえ、このメロディ聞き覚えない?」と歌ってみせるメロディが、僕たちの新しい曲のメロディだっていうアイデアを思いついたとき、声を出して笑ましたね。「Heard A Song」はそうやって生まれました。

これから時間が経過したとき、私たちは今のポップ・ミュージックを振り返ってどう考えるのでしょうね。
ガス:振り返るというのは贅沢なことですね。いま世に出ているものを見ていると楽しいですよ。いま僕たちはツアー中なんですが、よく2007年から2008年にかけての音楽を聴いているんです。すると、例えばクラクソンズとデータロック、CSSといったアーティストたちがいかに時代的にリンクしていたかがよく分かるんです。今だからこそ、そのアーティストたちのあいだに強い繋がりを感じるわけで、当時はそんなこと考えもしなかったわけです。きっとこれから僕たちが、今という時代を振り返って、「フューチャーとかドレイクって2015年っぽいよね、2016年っぽいよね」なんて言うときが来る--でもそれはときを経たからこそわかることなわけですよね。2016年のコンピーレションに僕たちの曲が含まれればなんて思うとワクワクします。

ポップというジャンルにおいて、今後どんなことを成し遂げていきたいですか?
サラ:バイリンガルの音楽ですね!ポップスの世界では、一ヶ国語でしか曲が書かれない傾向にありますからね。今という時代はとてもインターナショナルな時代で、あらゆる境界線が薄れている--特に私のように、親や生い立ちがインターナショナルな人間にとっては。音楽はひとつのカルチャーにのみ根付いていちゃいけないと思うし、どこの国のカルチャーに生まれたかなんて関係ないはずです。イギリスで活動しているからって英語で歌わなきゃいけない、日本にいるときは日本語で歌わなきゃいけないなんてことはないわけです。
ガス:さっき知ったんですが、僕たちのアルバムはビルボード誌のジャンル「ワールド・ミュージック」のトップ10に入ったそうです。誰かが僕たちを「ワールド・ミュージック」だと判断したんだと思うと、嬉しいですね。境界線を、僕たちが超えたということですから。グライムスやカーリー・レイ・ジェプセンといった、ポップスよりもポップな世界観を意図的に打ち出したアーティストたちのおかげです。ああいったアーティストがトップ5に入る世の中に、早くなればいいですね。

Credits


Text Salvatore Maicki
Photography Sam Evans-Butler
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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