Photos by Mitchell Sams.

なぜ今、大胆なド派手メイクが流行しているのか?

その答えは、米人気ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』。「Z世代がメイクの可能性、メイクの意味を再定義したんです。彼らは何にも侵害されない表現の自由を重要視し、美しさやメイクの規範というものに抗っている」

by Marie Lodi; translated by Ai Nakayama
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20 January 2020, 4:06am

Photos by Mitchell Sams.

2020年春夏コレクションのランウェイで目立ったのは、過去シーズンよりもさらに目立つ、大胆でド派手なメイクだった。Gypsy Sportはモデルの全身にグリッターを塗りたくり、Gucciはつけまつげの不思議な使いかたをして、Libertineはゴテゴテのアイメイクのオンパレードだった。

ここ数年は、Glossierをはじめとするナチュラルメイク推しのコスメブランドや、キム・カーダシアン・ウェストのノーメイク風メイク、韓国のグラススキン(ガラスのような肌)などが人気を博してきたが、Z世代にとってメイクは、〈素材をより良くする〉というこれまでの意義を超え、クリエイティブな表現ツールとなっている。

もちろん、舞台的なド派手メイクは今に始まったものではない。パット・マグラスは、90年代からAnna Suiのショーでドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』を想起させるメイクを発表し続けてきた。

それ以前にも、レディ・バニーやル・ポールといったドラァグクイーンたちは、独自に盛り盛りのメイクを生み出し、それが『ル・ポールのドラァグ・レース』の人気出場者にも影響を与えている。メイクの進化はとどまることを知らない。

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あらゆる界隈で過去のトレンドが復活を遂げているが、コスメ業界も同じだ。今はひとつのアイシャドウパレットで叶えられる、ドラマティックでド派手なメイクが復活し、主流になっている。

そもそもコスメ業界は今、売上的にも多様性的にも、過去最高を記録している。コスメブランドはこれまで以上に増え、リアーナレディ・ガガ(その実験的なビューティルックは言わずと知れている)をはじめとするセレブたちが次々と自身のコスメブランドを立ち上げている。

今やラインストーンで描く猫目ライン、下まぶたに涙のようにたっぷり乗せたグリッター、チェーンのアイライナーなどは一般的なルックとなっているが、そのきっかけはHBOのティーンドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』だった。

登場人物のメイクは、メイクアップアーティストのドニエラ・デイヴィー(Doniella Davy)を中心としたチームが担当しており、これまで雑誌のエディトリアルやクラブキッズたちでしか見なかったようなアヴァンギャルドなデザインで、実に抗いがたい魅力を放っている。

「Z世代がメイクの可能性、メイクの意味を再定義したんです。彼らは何にも侵害されない表現の自由を重要視し、美しさやメイクの規範というものに抗っている」とデイヴィーは『Hollywood Reporter』のインタビューで語った。

「若いアーティストや若者たちが、ビューティやメイクというものを根底からひっくり返すのをみていると、痛快だなと思いますね」

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Z世代のメイクラバーたちは、Instagramの検索ページを埋め尽くすほどの勢いでド派手メイクをオマージュした写真を投稿している。このままだと画材屋が廃業に追い込まれそうだ。

ド派手メイクのインスピレーション源となったのはZ世代だが、『ユーフォリア/EUPHORIA』がその人気の一助になったのは間違いない。おそらく、高校を舞台にしたドラマでこのメイクが登場したからこそ、現実でも真似できそう、かわいいかも、と思えたのだろう(実際、ドラマは十代の葛藤を容赦なく描いた恐ろしい作品だとしても)。

ド派手トレンドはネイルにも影響を及ぼしている。この10年、ネイルアートは成長を遂げてきた。シャーマディーン・リード(Sharmadean Reid)やソフィ・ロブソン(Sophy Robson)をはじめとする先駆者たちが芸術的なネイルを大衆化し、ロザリアやカーディ・Bの華美に装飾されたネイルを担当するセレブリティ・ネイルアーティストの登場への道筋を整えた。

ド派手ルックがすばらしいのは、お金をかけなくても望み通りのルックを実現できるところだ。ハイエンドのアイシャドウパレットは買えなくても、ドラッグストアコスメで『ユーフォリア/EUPHORIA』風のルックは叶えられる。必要なのは少しのクリエイティビティと、まぶたにきちんとラインストーンを付けられる手先の器用さのみ。

どんなに盛ったメイクも、どんなに派手なメイクも、誰もがまとえるのが今という時代なのだ。それは幸運であり、よろこばしいことだ。

This article originally appeared on i-D US.

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