音が生まれるとき、写真が生まれる:山谷佑介 interview 後編

山谷佑介の実験的な最新作「The Doors」について山谷が語る。ドラムを叩くとカメラのシャッターが切れる構造や今作のタイトル、ドラムパフォーマンスについて聞いた。

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maj 2 2018, 2:50am

前編はこちら

今回のパフォーマンスを見た限りではカメラ何台分もセンサーが必要なわけですよね?
そうですね。ドラムの周りに3台のカメラを置いているから、センサーとしては計3セット作ってもらいました。

具体的にはどういう構造になっているんですか?
パフォーマンスの会場でドラムを見てもらえればわかると思うんですけど、ドラムからの振動を感知してカメラのシャッターにつながるという回路が仕込まれた黒い箱がとりつけられています。その振動も、何秒おきに感知するかを設定したりして。例えばシンバルは叩くと振動がしばらく続くでしょう? だから1秒おきの設定だと1回の叩きを何度も感知してしまう。そこでシンバルは3秒毎にしようとか。もちろんセンサーのついていないタムもあります。そういう環境でどんどん叩いていく。で、実際に俺が叩いているドラムは、いわゆる“上手”なリズムを叩くタイプじゃないじゃないですか。身体で叩くというか。

真っ暗な会場で山谷がドラムを叩くと......。
カメラのストロボ光が瞬間的に閃光し、山谷が発光する。撮影された写真は山谷の背後に設置されたプリンターによって次から次へと印刷される。

規則的なリズムじゃなくて、ジャズというか即興的な叩き方ですよね。
昔からそういうドラムの叩き方をしてきたんですよね。考えながらとか、楽譜があってとかじゃなくて、とにかく全身を使って無心で叩き続ける。その演奏がピッタリだったというのもあるんでしょうね、叩いているうちは自分が撮られることを意識しない。演奏する緊張感と、人から見られる緊張感があるから、(4月14日に初めて公開パフォーマンスをしたときは)カメラに撮られている自覚を1秒たりとも感じることのないまま終わりました。

『The Doors』(2018年)。シャッターを切るきっかけを作る(=ドラムを叩く)のは山谷だが、本人は演奏に没頭しているために撮影をコントロールはしていない。どことなくシュルレアリスムの技法「オートマティスム」を彷彿させる。

写真を撮ることって、実は被写体となる側が自分を晒すだけじゃなくて、撮る側が相手に晒すことの方が重要だったりしますよね。
今回セルフポートレートを撮ろうと考えたとき、まず自分がさらけ出す必要があるんだろうなと思ったんです。今の時代、SNS経由で他人の生活を簡単に覗きやすいじゃないですか。そういう意味では今回のパフォーマンスは公開制作のようなもので、作り手の自分が嘘をつけない環境。カメラの前に自分の肉体を晒すことによって、それが写真そのものになっていく。ここでドラムはあくまでも道具に過ぎなくて、カメラと同じなんですよ。

今回のタイトルにはどういう意味があるんですか?
ロックバンドのThe Doorsからですね。イギリスの作家、オルダス・ハクスリーが18世紀の詩人ウィリアム・ブレイクの詩の一節「知覚の扉が清められたなら、あらゆるものが人間にとってありのままに現れ、無限に見える」を読んで実際に体験しようと思って、メキシコに生えてるサボテンに手を出した。それを食べると、2〜3日のゲリと嘔吐の後に気持ちいい幻覚の世界が広がるってやつで。その体験記でもある『知覚の扉(the doors of perception)』を読んだジム・モリソンがバンド名をThe Doorsにしたんです。自分はヒッピーカルチャーの時代がルーツとしてあるから、それを今回の題名にしました。今回の撮影で撮られる俺の顔って意識が飛んでいますよね。

パフォーマンスが終わると、床一面にはプリントアウトされた写真が撒き散らかされていた。

展示自体はどういう風に考えているんですか?
パフォーマンスのない日は、初日のパフォーマンスを動画として撮影したものを4台のブラウン管テレビで流しています。それとパフォーマンスでプリントアウトされた写真をどんどん壁に貼っていく感じですね。つまりパフォーマンスをするたび、プリントの数が増殖していく。それから、音もしっかり感じてもらえるようにしています。ただテレビの音量を上げてるだけだけど。廃墟のような建物の一室で、ドラムの不安定なリズムを浴びながら全身で写真を感じてもらいたい。

それで、初回に演奏できた時間はトータルで……?
6分半。もっといけるかなーと思ってたんですけどね。実際に人前でやるのはあれが初めてだったんで、意識も飛んだし、想像以上に全力でずっと叩き続けていたもんで。いま絶賛トレーニング中ですよ(笑)。5月4日、5日のGWパフォーマンスでは、目指せ15分!

(笑)。今回はパフォーマンスを基軸としつつもプリントが出力される形式ですし、最終的にそれを展示の形として発表する予定はあるんですか?
一連のパフォーマンスで撮れた写真をベースにして、6月9日から東京のYUKA TSURUNO GALLERYで個展をします。いま暗室で悪戦苦闘しているのが、実際に叩いたドラムの表面に残された痕をどうにか写真にできないかってこと。これがなかなか、自分としては面白いものができ上がりそうなんですよ。GWのパフォーマンスと合わせて個展も見てもらいたいですね!

山谷佑介「The doors」
会期:4/14(土) - 5/13(日)
会場:ギャラリー山谷
住所:〒600-8846 京都市下京区朱雀宝蔵町75 伊藤土木ビル 2F
時間:13:00 - 18:00 ※初日・4/14(土)は16:30からのパフォーマンスのみの開廊です
休場日:月・火・水・木 (金・土・日、開廊)
Performance (Charge¥1,000)
4/14(土) 16:30
4/15(日) 14:30, 16:00
5/4(金) 14:00
5/5(土) 14:00
5/13(日) 17:30
※常設の展示は無料で観覧いただけますが、パフォーマンスのみ入場料1,000円を頂戴いたします。
問い合わせ先:photophobia.y@gmail.com