Still from Roma.

ヤリッツァ・アパリシオ interview:『ROMA/ローマ』で演技に初挑戦した主演女優

『ROMA/ローマ』で描かれるのはクレオという女性の物語だ。メキシコの先住民ミシュテカの血を引く彼女は、メキシコシティ・ローマ地区の中産階級家庭で働く若い家政婦。アカデミー賞最優秀作品賞も見込まれるアルフォンソ・キュアロン監督最新作で主演を務めたヤリッツァに話をきいた。

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09 januari 2019, 4:29am

Still from Roma.

ヤリッツァ・アパリシオはそれまでまったく演技経験がなかった。それどころか、演技をしてみたいと考えたこともなかったのだ。24歳のとき、メキシコのトラスコという小さな町に住み幼稚園の先生になるための勉強をしていた彼女に、姉がオーディションを受けてみるよう勧めた。「キャスティングというのがどんなものか、姉は興味があったようです」とヤリッツァは語る。「それで、私にオーディションを受けるようにと言い張りました。彼女は妊娠中でした。だから私が代わりに参加して、どんなふうだったかを彼女に報告してほしいって」

もちろん今となっては、Netflixで配信中のアルフォンソ・キュアロン監督による映画『ROMA/ローマ』の主役の座をヤリッツァが射止めたことを、みんなが知っている。それでもこの顛末は、繰り返すに値する話だ。なぜなら彼女は、この映画全体のなかで最も重要な役割を果たしているだけではなく、今年ほかのどんな作品にも類を見ないほど強烈な印象を残す演技でデビューしたのだから。

1970年代初頭を舞台とする『ROMA/ローマ』で描かれるのは、クレオという女性の物語だ。ミシュテカ族の血を引く彼女は、メキシコシティ・ローマ地区の中産階級の家庭で住み込みの家政婦をしている。クレオは部分的には、キュアロン自身の子守だったリボリア(“リボ”)・ロドリゲスという女性がモデルとなっている。彼女はヤリッツァと同じく、オアハカ地域の出身でもあった。『ゼロ・グラビティ』などの監督キュアロンにとって『ROMA/ローマ』がいかにパーソナルな作品であるかは、あらゆる部分に見て取れる。幼少期のメキシコ・シティを忠実に再現したセットや、政府に後押しされた民兵と学生デモ隊の衝突、家庭生活の細部の描写に至るまで。そのすべてが、ネオリアリズム的な銀色がかったモノクロの色彩で伝えられる(キュアロンは本作の監督だけでなく、脚本、製作、そして撮影を担当している)。

「アルフォンソが私に教えてくれたのは、この映画は彼にとって、かなりパーソナルなものだということだけでした」とヤリッツァは説明する。「映画のなかで何が起こるかは、ほんの少しずつだけ知ってもらいたいと言われました。撮影が冒険のようなものになってほしいと願っていたのです」。そのためヤリッツァは、その日撮影する分だけのプロットを日ごと知らされるのみだった。そのおかげで好奇心を掻き立てられ、まるで「(役の上でのできごとを)自分の実人生と同じくらいパーソナルな経験に感じた」と言う。「実際に、私は映画のなかの人生を自分のもののように生きていたと思います。しかもこの期間はずっと撮影現場で過ごしていたので、自分の時間や生活なんてなかったんです! 映画自体が私の人生になり、そう思ってそこで過ごしていました」

それは映画を観ればわかる。あらゆる技術的な達成がなされてはいるが、やはり作品の支柱となっているのはヤリッツァの演技だ。おかげで、賞レースシーズンに売り出すのは難しいとされる要素ばかり——知的で、白黒映画で、外国語——にもかかわらず、Netflixによる最強のリリース作品となった。アカデミー賞最優秀作品賞も見込まれるこの映画は、まさに強い感情の波であなたをさらうだろう。

「深く考えすぎずに、この状況を楽しめばいい、とたくさんの人に言われました。またこんなことがあれば素晴らしいけれど、そうならなかったとしても、楽しい経験ができました」将来的な演技の機会について、控えめに彼女は言う。「たしかに最高の気持ちだし、幸せを感じています。でももしこれで終わりなら、それでもいい。ここにいられるだけで、すごく嬉しいんです」

This article originally appeared on i-D UK.