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バンド新時代の到来を告げる青い炎

昨年リリースしたデビュー『EP』の噂が噂を呼んでいた東京出身の若き3人組バンド、D.A.N.。ジャパニーズ・ミニル・メロウを標榜するファーストアルバム『D.A.N.』から静かに高まっていく熱の源を探った。

by Yu Onoda
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21 July 2016, 2:05am

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何度目かの「クールの誕生」。クールな音楽は時代を超えて何度でも甦る。90年代のマッシヴ・アタックやポーティスヘッドに代表されるトリップホップは、レイヴの熱狂を冷やし、凍り付かせたし、2009年にイギリスから登場した10代の3人組バンド、ザ・エックス・エックスはUKガラージやダブステップのダークな通奏低音をバンドで鳴らすことで、醒めた時代のサウンドトラックを生んだ。そして、2016年の日本で、東京出身の22歳が集った3人組バンド、D.A.N.がデビューアルバム『D.A.N.』で鳴らすクールとは果たして何を意味するのか?

「今はみんな、自分が好きだなと思う音楽を一人で聴いたり、趣味が合う、ちょっとした仲間内で聴くとか、そういう音楽の楽しみ方だと思うんですよね。みんな、音楽嗜好が違うし、その違いが対立項になっていた、かつての時代と違って、各自が自分たちの音楽を追求してる。何故かというと、個性の違いは今の時代における当たり前の感覚だから」(川上輝/Dr)

「例えば、90年代にHi-Standardとその周りの毛色が近いバンドが面白いというムードがあったように、その時代ごとのムードがあると思うんですけど、今はそれぞれのバンドが独自の個性を開花させている時代なんじゃないかと思いますね。その裏返しとして、一つ言えるのは、例えば、かつてのデヴィッド・ボウイやオアシスがそうであったように、ものすごい影響を持つロックスター然としたアーティストやバンドは今の時代なかなかいないし、そういうスタンスでやろうとしている人でも影響力は弱い気がする。まぁ、でも、そういう時期があってもいいじゃないかと思うんですよね」(桜木大悟/Gt, Vo, Syn)

古今東西の音楽に瞬時に、フラットにアクセス出来るようになった今、ムーヴメントは局地的に、リバイヴァルのサイクルやパターンもよりパーソナルなものとなった。そんな熱狂的な共同幻想を抱けない醒めた時代のクールな音楽。そんなことを連想させるサウンドを、彼らは自ら、ジャパニーズ・ミニマル・メロウと称している。インディR&Bやアーバンファンクの洗練されたメロウなタッチとトリップホップやディープハウス、ミニマルテクノの影響下にある冷ややかなビート。音の間はアンビエントやノイズで満たされ、それらをまとめ上げるバンド・アンサンブルの張り詰めたテンションはジャズやポストロックのそれを思い起こさせる。そこに無駄は一切なく、極限まで削ぎ落とされた楽曲は、裏声を用いて歌われる叙情的な日本語詞、そして、バンドの推進力となるうねるベースラインが、聴き手の想像力をどこまでも喚起していく。

「このバンドでは、歌うようにベースをプレイしていて、リズムを刻むベースの役割から一歩踏み込んでいるところが、他にはない個性というか。D.A.N.はベースミュージックだと言ってもいいんじゃないかというくらいに考えてますね」(桜木大悟/Gt, Vo, Syn)

「僕らはサンプラーとかコンピューターを使ったり、シーケンスを鳴らしたりせず、全部生で演奏しているんですけど、3人のなかではリズム楽器であり、メロディ楽器でもあるベースが一番色んな役割を担えるのかなと思っていて。歌やギター、シンセとドラムの間でアメーバ状に変化することで、楽器の相互作用や曲の可能性を引き出したいと思っているんです」(市川仁也/Bass)

バンドの発想を踏襲しつつ、ロックの常套句を巧妙に避け、ダンスミュージックの発想をインストールしている点は、D.A.N.の特筆すべき個性といえるだろう。

「リスナーがダンスミュージックや踊る楽しみに理解があるヨーロッパに対して、日本はまだまだだなって思うんですよ。クラブでライヴをやる時は、僕たちの音楽を知らなくても踊ってくれているんですけど、ライブハウスでは突っ立っている人が多くて、音楽のノリ方もロックな縦ノリなんですよね。まぁ、D.A.N.はD.A.N.なので、現状に対して、何かアクトするということはないと思うんですけど、僕たちの作品やライブが新たな音楽の楽しみ方を知るきっかけになったらいいなと思いますね」(桜木大悟/Gt, Vo, Syn)

そして、もちろん、彼らはただ醒めているだけではない。その奥底には、暗闇で青い炎が燃えているような、音楽に対する静かで力強い情熱、普遍的な音楽に対する憧憬が感じられる。

「今は音楽的な知識やテクニックがなくても、誰でもすぐに音楽が作れる時代。その結果、インスタントに作られた大量の音楽、賞味期限が短い音楽が世に溢れているし、消費のスピードが早くなっていると思うんです。だからこそ、僕たちは長く聴き続けられるグッドミュージックを丁寧に作りたかったんです」(桜木大悟/Gt, Vo, Syn)

「自分にとってのグッドミュージックですか? シンプルだけど、どこか耳に引っかかる音楽という感じですかね。そのためにライブを含めた生演奏ならではの説得力やエネルギー、機械では出せないグルーヴにこだわりました。そのこだわりこそが僕たちの個性だと思いますし、そうやって生まれた音楽が20年、30年と聴き続けられ、残っていくんじゃないかなって」(川上輝/Dr)

Credits


Photography Takao Iwasawa
Styling Koji Oyamada
Text Yu Onoda
Styling assistance Ai Suganuma and Hiromi Kanamoto

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