ANNAがもたらす新しい夜明け

過去の時代に影響を受けながらも、新しい時代を切り開こうと常に思考するアーティストANNA(アンナ)こと大和那南。若干16歳の自身初となる記念すべきインタビューで、いま考えること、そして闘っているものについて訊いた。

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mar 16 2017, 2:35am

「昔はよかった」という声はいつの時代にも響いている。「80sのパンクが一番よかった」とか「90sのロックが(以下同)」とか。けれども、いつだって、新しい時代はそんな声を遮って始まる。

わずか3ヶ月前の音楽シーンですら「昔」と言い切る16歳の女子高生ミュージシャン、ANNA。2017年3月、原宿のレーベルBig Loveレコードの傘下であるSTBO recordingsからデビューを果たす彼女に、i-Dは彼女の初となるインタビューを敢行した。鋭い目つきでいまを見つめる彼女の闘う理由とは?

音楽を始めたきっかけについて教えてください。
古い海外のCDが家にたくさんあったので、もともとそういう音楽をよく聴いていました。特に好きだったのはデヴィッド・ボウイやドアーズ。最近の曲はあまり知りませんでした。中2くらいから、家にあったギターで自然に音楽を作り始めていたと思います。ただ、そのときは、自分の音楽にピンとくるものがなくて全然よくないなとわかっていました。

それから本格的に音楽をつくろうと思ったのはなぜですか?
IceageやVår を知ったのがきっかけです。YouTubeで偶然見つけたIceageを聴いて、初めは「なんだこれ」って感じだったんですけど、なにかに惹きつけられて、何度も聴くうちに好きになりました。それから、彼らがなにを考えているのかも知りたくなって、いろいろなインタビューを読んだんです。そうしたら、その考え方が初めて自分に共鳴して、こうやればいいんだとわかりました。

その考え方とはどういうものですか?
実際、わたしは音よりも人が好きなんです。その人の思想が正しければ、音も必ずいいはずだから。デンマークのミュージシャンたちは、変化する時代のなかでも常に完璧を求めていて、その考え方が自分に刺さりました。時代が変われば、「イイ」ものも変わるなかで、その変化を恐れずに完璧であろうとするのはすごいなと。

なるほど。Iceageに出会って初めて考え方に共感できたと言っていましたが、どういう子どもでしたか?
誰ともなじめなくて、感情を共有できない子どもだったと思います。それは自分を守る手段でいまも間違ってはいなかったと思いますが、当時は感情を伝えられるほどの相手がいないとふてくされていました。どうせ誰もわかってくれないって。でも中学でIceageなどの音楽に出会って変わりました。
それまで、どうして大人の言う通りにしなくちゃいけないのか、敷かれた安全なレールを歩くことがとても不思議でした。でも彼らを知って、自分が存在して公表さえすればその輪廻から外れて世界にアタックできるんだと気づいたんです。攻撃手段がはっきりわかって目指すところがわかりました。

Big Loveレコードに通い始めたのはその頃ですか?オーナーの仲さんに「友達いないなら毎日これば?」と言われて本当に毎日通ったそうですが。
はい。中3のときに、Iceageのレコードを売っていることをネットで知って買いに行きました。

そこから今回のリリースまでのいきさつを教えてください。
音楽を作っていることは話してなかったんです。ギターしかなくて自分の目指すものが作れていなかったから。でも去年の秋にiPhoneを手に入れてすぐに形にすることができました。そして仲さんに音楽をやると言ったらリリースの話をされました。まだ音源を聴かす前でしたが。

全部iPhoneで制作したんですか?
はい。DIYで片付けれるのは嫌なので言うつもりはなかったんですけど、ただiPhoneしかなかったからそうしただけなので、特別なことじゃないと思うんです。誰だって最初は環境の整わないなかで始めていて、わたしもいまある環境で作っただけで。あと、ボーカル録りをスタジオでやったり他の人の手が加わることで音はよくなるけど、それだと自分で考えた渦巻く表現が薄まって意味のないものになるので、全部一人で作りました。その結果、iPhoneだけで作ることになっただけです。

今回のEPに収録されている3曲について教えてください。
「Blue Thorn」は、青い棘って意味で「気づき」について歌っています。肌に棘が刺さってその痛みに気づくことと、物事の変化に気づくことをかけて、自分に投げかけた曲です。棘って刺さったときは痛くないのに見ると痛くなってくる。見ないふりはできるけど、その棘に気づいてしまったらずっとやり続けるしかない。
Electric Dreams」は、深夜に一晩でつくった曲で、何度も聴いているうちに寂しい曲だなって思って。主人公をつくって、その主人公に「みんな愛がほしいっていうけど、愛を得たらどうなるの」ってことを歌わせました。音には感情は入っていないけど、歌詞には入っちゃうんだと思います。そのときはほしかったのかもしれない。いまはいらないですけど(笑)。
「New dawning」は、本当に夜明けにできたからなんですけど、この曲が自分史上一番最初にいいものができたと感じることができた曲なのでそういう意味で「新しい夜明け」とつけました。去年の10月に作り始めて、12月まではいいものが全然できなかったんですけど、以前つくった曲をすべて捨てました。捨てたら、始まりました。

その10月から12月まではスランプだったんですか?
そのとき、輪のなかに入って自分以外の人と同じ好きな音楽を語ったりする楽しさを味わったんですけど、ふと輪の外に出たらただ楽しいということに疑問を感じました。お互いの曲を褒めあうだけで意志がなかったり、なぐさめあったりすることでは、世界にアタックできないって。それから自分がここに属していたら意味がないなと思いました。上からになってしまうけど、いまの東京って自分の好きな仲間と好きな音楽をやって、「楽しい」が先行しすぎている気がします。若者が楽しくしていたらその雰囲気に青春を感じて、周りの大人も受け入れちゃう。青春は楽しくて美しいことかもしれないけど、わたしはそれよりも作品を残したい。ひとりになった時は最初は寂しいと思ったけど、どうってことなくて、元に戻っただけです。小娘がなに言ってるんだといまは思われるのもわかっています。

ひとりで音楽をつくるときは楽しいとは感じないんですか?
自分以外の人と音楽制作を試したこともありましたがその時でさえ楽しいと感じたことは一度もありませんでした。音楽はわたしの唯一の生き延びる手段であり表現なので、つくっているときは真剣です。感情よりも、いまの時代や新しい時代についてなにが必要でなにが求められているのかを考えています。

いまの時代や新しい時代とはどういうものでしょう?
いまはいろんなものが終わってすべてが始まる時代だと思います。過去のシーン(彼女のなかではIceageですらもすでに過去)は好きだし最高だったけど、極まるところまでいってそこで満足してその先の挑戦を放棄してしまった。
これからは、いまの「とにかくかっこよく」ではなく、恥を恐れずチャレンジしていく時代だと思います。ロンドンにHMLTDとWild Daughterというバンドがいるんですけど、すごい化粧をしていたり、SMのような格好をしていたり、恥ずかしいことを堂々とやってるんです。
自分が犠牲になることを恐れずに、馬鹿にされるとわかっていてもやるしかなくて、デヴィッド・ボウイがそうだったように、もし本物だったら受け入れられて一番かっこいいと思われるようになるものなんだと思います。
だから、わたしはIceageとかデンマークの音楽は好きだけど、好きなものをやるだけじゃ新しい時代でいいものはできないと確信していて。好きなものをつくるなら家のベッドでやってればいいけど、レコードを出すなら世界へ向けて発信できるものをつくりたいですし、それが自分にとって完璧じゃないとだしたくないです。だからいつも時代の流れを考えて、あまり音に感情やエゴは乗せないようにしています。

では、いまはひたすら曲づくりをしているのですか?
曲づくりよりも、考えている時間の方が多いです。考えがないと曲もくだらないパーソナルなものになってしまうので。前よりもどんどんその時間が増えていますね。例えば、Iceageみたいに音楽を聴いて「なんだこれ」って思うのは、自分のなかのなにかが触発されているからで、それを逃さないようにしています。その人がなにを考えているのか突き止めると、くだらないことなときもあるんですけど、大体そこには意志や決意があるんです。そこをこれからもっと吸収していきたいです。

日本と世界との差は感じますか?
さっきもお話ししたように、日本は「楽しい」ことが強い反面、海外は思想が透けて見える音楽がシーンを牽引していると思います。強い意志のある音楽がいろいろなジャンルの音楽や仲間を引っ張り上げているけど、日本にはそれがないので。

日本よりも海外を意識してつくっているのでしょうか?
まず日本人だから日本だけというのがわからなくて。日本のくくりに縛られなくていいと思うし、ヨーロッパ人にできたことが日本人にできないことはないはずだと思っています。日本人だからとか黄色人種だからって恐れずに、わたしは世界にアタックしたいから英語で歌っています。 

これから目指すところを教えてください。
何十年後でも常に時代に対して自分がいいと思う音楽を作っている自分でありたい。わたしは音楽に触れて変われたので、音楽から離れることはないです。映画や映像、舞台演出にも興味はあるけど、やっぱり軸は変わらないと思います。

@nana_yamato_

Credits


Photography Takayuki Okada
Text Noriko Wada