ソフィア・コッポラのニュークラシック

3年ぶりの来日で語った、彼女の新しいチャレンジ

by i-D Staff
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13 May 2016, 10:30am

3年ぶりの来日となった、映画監督ソフィア・コッポラ。彼女のもつ優雅な雰囲気と細やかな気遣いは、いつでも誰の前でも決して変わることはない。しかしその柔らかな物腰のなかに垣間見える芯の通った強さは、猛者ぞろいの映画制作という現場でどっしり構える大黒柱の存在感たるものであろう。20代の頃、彼女の経験した東京を題材にした映画『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)は、映画界に大きな衝撃を与えた作品だ。低予算で撮られたこの作品はメガヒットを放ち、ソフィア・コッポラの名を世に知らしめることになったのだ。そしてその東京と彼女のあいだには、特別な関係が続いている。
Louis Vuitton のスタンダードアイテムになりつつあるSCバッグ。今回はその東京限定色が新たにお披露目となった。ソフィアならでは配色具合とアイテムの選び方は、大人の女性の粋というものをバックというアイテムを通じて提案してくれる。ファッションは、人生を楽しむもの。映画やデザインなど様々なフォーマットによって、ソフィア・コッポラの美の本質はいつでも世の女性たちを喜ばせてくれる。

SCバッグは、今やLVのスタンダードになりつつあります。どのような経緯でこの名作は誕生したのでしょうか?
『マリー・アントワネット』(2006)の撮影が終わったあと、パリに住んでいたときにマーク・ジェイコブスに紹介されてLouis Vuitton のスタッフに会ったんです。パリ郊外のアニエールにある工場を見せていただいて、すごく感動しました。その工場では、トランクやバッグが製品化される過程を見せていただきました。カスタム製品の製作を見た際に、自分でもバッグを作りたいと思ったんです。当時は大きなバッグが多く、シンプルでクラシックなものがなかなか見つかりませんでした。どのブランドもすごくステータス化されているバッグばかり出していたんです。だから品があってさりげなく、上質で実用的なバッグが欲しいというところから始まりました。Louis Vuitton の素晴らしいチームとひとつのコレクションが作れたのは、すごくラッキーだったと思います。それに、色々な人からのポジティブな評価ももらえて嬉しいです。映画の合間にこうしたプロジェクトでクリエイティブなことができて、とても良い経験になりました。

そのSCバッグですが、東京限定のカラーが発表となりました。クラシカルな要素とシックな色合いがとても素敵ですね。限定バッグの色のインスピレーションはどこから得たのでしょうか?
Louis Vuitton の伝統あるアーカイブの型を使いたいなと思っていたんです。斜めがけの小さなシャンティーやノエは、個人的に好きで自分用にカスタムしたいと思っていたので、その延長で限定品という形でコレクションをつくる提案をしました。お客さんも、またあの伝統的なバックが発売されたら嬉しいだろうとも思いました。「Volez, Voguez, Voyagez - Louis Vuitton(空へ、海へ、彼方へ-旅するルイ・ヴィトン)」展が東京で開催されるタイミングで、何か特別なものを作ってみたかったというのも大きいです。自分で使いたいバッグを作りたかったので、色もタイムレスでどんなものにも合わせられる配色を選び、私の好きな色にしました。ブロン、カプチーノ、ジャスパーの3色展開で、縁どりに差し色を入れることでモダンかつフレッシュにしました。

この限定SCバッグがもたらす女性像、つまりあなたのもつ"現代の東京を生きる女性"とはいったいどのようなイメージなのでしょうか。
ずっと東京とは特別な絆を感じてきました。東京の女性はデザインやファッションや美に対して意欲的です。この街はクラシックな伝統とポップなモダニズムが綺麗に融合しているから、それをこの東京限定のコレクションに反映させました。

あなたについて考える時、やはり映画監督としての肩書を思い浮かべる人が多いかと思います。実際には色々なことをしているあなたですが、映画制作と今回のデザインなど、他のモノづくりとでは全く違った心持ちなのでしょうか。違う点と共通点をお聞かせください。
私にとってクリエイティビティの源は全てにおいて同じで、自分の視点や価値観です。だから映画にしても、デザインにしても、作品を見てみると共通するものはあると思います。全てにおいて全力で取り組むようにしていますし、家族や友達も楽しんでくれるような作品づくりを心がけています。でも今回のプロジェクトは映画ほどプレッシャーもなく、とても新鮮でした。ファッションとアクセサリーは楽しむためのものだし、女性らしさを引き出してくれるものですしね。

映画はスクリーンを離れ、様々なメディアで人の目に触れています。そういった業界の変化はどのように感じますか? あなたもNETFLIXで制作を手掛けていますが、銀幕作品を制作するときとの違いなどについてもお聞きしたいです。
映画館で映画を観るのは素晴らしいことだと思います。クオリティー的には銀幕に勝るものはないです。家のテレビで観るのとでは比べものになりません。だから時代が変わってきていることに対して、少し寂しい気持ちはあります。でも、自分のライフスタイルもテレビとパソコンで映画を見ているのが現実です。たまに映画館で映画を観ると、いまだにそのパワーに圧倒されますね。映画館がなくなることはないですし、みんなも映画館で観ることを続けて欲しいです。
ですが、今の世の中で映画を制作するにあたり、小さな画面で見られることのほうが多いということを理解しないといけないと思っています。だからといって、制作に対するアプローチは変えませんが。オンラインストリーミングやNETFLIXの登場以前に、インディペンデント映画や小規模な映画がなくなってしまうのではないかという危機がありました。でも手軽に使えるプラットフォームのおかげでそのような映画も生き残れるし、すごくホッとしました。
同時に、インターネットやストリーミングの世界のほうがクリエイティブな面で自由なときもあります。NETFLIXで『ビル・マーレイ・クリスマス』をつくった際にも、伝統的な制作会社よりも干渉が少なかったぶん、羽を伸ばして作品を作ることができました。テレビ局ほど縛りがなく、制作側も自由度があるので、新しいものを発信したいという心持ちが感じられます。才能ある監督に規制を与えてしまったらいい作品が生まれにくい、という点にも寛大な理解があります。ですから自由なプラットフォームになるように心がけているようですし、キャスティングにも気を使っているなと感じました。

『ブリングリング』(2013)の際にはヴァニティフェア誌で記事を見つけたところから始まったとお聞きしましたが、今そのように心に引っかかっていることはありますか? また、次回作の構想があれば、お話しいただける範囲でお聞きできればと思います。
実は今、新しい映画の準備をしているところです。撮影前なのであまり話すことはできないのですが、今回もキルスティン・ダンストと一緒に仕事をすることになりました。アメリカの南北戦争が舞台で、今年の秋に撮影予定なので、公開は2017年の予定です。

世界中のいろんな場所に足を運んでいるかと思いますが、東京になじみの深いソフィアさんです。あなたから見て東京のオリジナリティとは一体どんなものでしょうか?
東京は唯一無二の街で、特別な思い入れがある街です。なによりも歴史と近代のコントラストが本当に好きです。初めて来たのは8歳のときでした。父が日本の映画監督と交友関係があり、「ここには映画とアートの素晴らしい伝統がある」という理由で家族旅行で来たのが最初です。その頃の私に大きな衝撃を与えてくれた街です。
20代の頃に来たときは、写真を撮り始めたばかりだったのでまた違う視点から大きな影響を受けました。東京にはしっかりとしたガールズカルチャーがあり、世界的に見て、特に写真の世界観は独特な作品を創り出してきたと思います。今もですが、90年代は特にそうですね。東京の文化は私のテイストを生むインスピレーションのひとつです。このガールズカルチャーを目にし、映画に落とし込めるかもと思わせてくれた街です。

あなたにとってユースとは?
エネルギー。ユースとは新しい視点でものを見ることだと思います。

あなたにとって大人とは?
女の子ではなく、女の人であることだと思います。数ある人生のステージのひとつです。肩書きのようなものですね。

あなたが1番自由を感じるのはどんなときですか?
父親がカルフォルニア州のナパにぶどう畑をもっていてよく遊びに行くんですが、そこにいるときに1番自由を感じます。都会の生活から離れて自然を味わうのは大切なことです。私にとっては家族がいて、いつでもいける居心地のいい自然が豊かな場所なので、とても感謝しています。

最後に、日本でローンチを迎えるi-D Japanの読者に向けて、一言いただけますでしょうか?
日本にi-Dがやってくるのはとても納得できることです。ユースを称賛する雑誌だし、ファッションもフォトグラフィも常に斬新な作品を発信していると思います。日本でローンチされることをとても楽しみにしています。

ソフィア・コッポラの "SC"バッグのニューモデルが製作される、パリ郊外アニエールの歴史的なアトリエ。ルイ・ヴィトンの真髄(こころ)ともいえる、そのアトリエと職人たち、そしてパリの風景をソフィアが捉える。

Credits


text kazumi asamura hayashi
photography piczo

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