全編12時40分の超大作『アウト・ワン』上映プロジェクト

今年亡くなったフランスの巨匠ジャック・リヴェット。彼の作品の中でも「シネフィルの幻の秘宝」と呼ばれた伝説の大長編作を自主上映するプロジェクトが始まった。

by i-D Staff
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17 May 2016, 12:10pm

IndieTokyoは映画評論家の大寺眞輔氏が発起人となって立ち上げた映画上映団体だ。メンバーの多くが学生で、上映会を行う他、海外の映画情報を伝えるサイトの設立や交流会などのイベントも開催している。2013年に、ポルトガル人監督ジョアン・ペドロ・ロドリゲスの上映会をいち早く、単独で実現させたのを皮切りに、フランス、アメリカ、ポルトガルと国籍を問わないセレクションで、若き才能による質の高い作品を日本全国で配給・公開してきた。今年上映を行った、フランスの新鋭監督ダミアン・マニヴェルの初長編作品『若き詩人』(2014)は、低予算で、撮影期間もわずか10日間で作られた小品だが、その年のロカルノ映画祭特別大賞を受賞し、フランス国内の20館の映画館でロードショウされている。映画館のシネコン化が進み、上映される映画にハリウッドの超大作やファミリー向け作品など、上映ラインナップも画一化しているなか、監督の知名度や予算の大小を問わず、自分たちが良いと思った作品を自らの手で上映するIndieTokyoの試みは、これからの日本の映画上映環境を考える上でも見逃すことのできない重要な動きといえるだろう。

DIY精神(なんでも自分たちでやってみよう!)に溢れた団体であるIndieTokyoが現在、日本の映画興行史にも名を残すであろうプロジェクトを行っている。長らく映画好きのあいだで幻の傑作と噂されていたジャック・リヴェットの『アウト・ワン』を日本語字幕付きで上映するというものだ。

ジャック・リヴェットはゴダールやトリュフォーの盟友として、フランスのヌーヴェル・ヴァーグを支えた映画監督である。『美しき諍い女』(91)はカンヌ映画祭でグランプリを獲得し、ミニシアター・ブームだった90年代の日本でも一大センセーションを巻き起こした。彼は映画批評家としても活躍し、フランスの権威ある映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』の3代目編集長も務めているが、一部の作品を除き、上映の機会に恵まれなかったためか、日本での知名度はそれほど高くない。しかし、『狂気の愛』(69)で自身2度目となる英国映画協会サザビーランド杯を、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズが「(ジャック・)タチと並ぶフランス・コミック映画の最高傑作」と評した『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(74)でロカルノ国際映画祭審査員特別賞を受賞するなど、数々の傑作を残している。近年では2015年に、イギリスのArrow Filmsからリヴェットの限定版DVDが発売、ニューヨークのリンカーン・センターでは、デイヴィッド・リンチとのダブル特集が組まれており、英米での再評価も始まっている。

さて、本題の『アウト・ワン』である。ジェン=ピエール・レオーをはじめ有名な俳優が多く出演し、内容的にも高く評価されているこの映画は、しかし上映時間が12時間43分もあるのだ。その長尺ゆえに、上映される機会も少なく、日本では無字幕での上映が1度あったきり。「シネフィルのホーリーグレイル(幻の秘宝)」と呼ばれているのも頷ける。エリック・ロメールは同作を「現代映画の要石」とも評している。バルザックとルイス・キャロルから着想を得たアヴァンギャルドな物語に、即興的な演出が重なり、ポスト68年の空気を現在へと濃厚に伝えるリヴェットの代表作の一本だ。

現在、IndieTokyoはクラウドファンディングで『アウト・ワン』日本語上映プロジェクトの支援を募っている。特典には、4パートになる『アウト・ワン』全編を鑑賞できる「整理番号付き通し鑑賞券」や「公開記念トークイベント優先入場券」などがあり、1,000円から応援することが可能だ。2016年8月12日まで。是非一度、プロジェクトページを覗いてみてほしい。

大寺氏はプロジェクトページで次のように書いている。「映画は私たちに愛を届けてくれます。そして、ジャック・リヴェットは彼の作品を通じて沢山の愛を私たちに注いでくれました。彼が亡くなった今、その作品を追悼上映することを通じて、彼から受け取った愛に報いたいと思うのです。そしてまた、リヴェットの素晴らしい作品を目にした観客が、次の時代を担う新しい作品を作っていく。それは映画ばかりではないかもしれません。小説やコミックやまた別のメディアになるかもしれません。いずれにしても、文化というのはこうして支えられ、受け継がれていくものだと思うのです。映画には、文化には、愛が必要です。リヴェットへの愛にあふれた映画祭を、今の日本で是非実現しましょう!」

https://motion-gallery.net/projects/rivette

Credits


TEXT  SOGO HIRAIWA

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