ミラノ・ファッションウィーク Day3:Versace、2018年春夏コレクション

ミラノ・ファッション・ウィーク3日目、ドナテッラ・ヴェルサーチは亡き兄ジャンニ・ヴェルサーチを讃えたショーを披露。Roberto Cavalliがデザイナーの世代交代を果たし、Giorgio Armaniは絵画的なコレクションを発表した。

by Steve Salter; photos by Mitchell Sams; translated by Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.
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29 September 2017, 3:45am

Versus Versace2018年春夏コレクションのショー前日、ドナテッラ・ヴェルサーチは未来のデザイナーを支援する取り組みとしてジャンニ・ヴェルサーチ奨学金制度をセントラル・セント・マーティンズに導入すると発表した。Versace2018年春夏コレクションでは、過去を振り返った——兄ジャンニが突然この世を去って20年の節目となった今年、彼の功績を讃えた。ラ・トリエンナーレ・ディ・ミラノで行われた会場は、暗い雰囲気で行われないように、ドナテッラはショーをVersaceの過去と現在、そして未来を描いた盛大なパーティに仕上げた。「このコレクションはジャンニの人生と作品を讃えたトリビュートです。デザイナーとしてだけではなく人間としてのジャンニ、そして兄としてのジャンニにオマージュを捧げたいのです」とドナテッラはショーノートに綴っていた。

Versace

これまで過去に囚われてきたと認識しているのか、ドナテッラは今回Versaceのクリエイティブ面を手がけるようになってはじめてブランドのアーカイブに真に目を向けた。そしてこれまではけっして手をつけなかった、兄が生み出したアイコニックなVersaceアイテムやプリントの数々を現代的に解釈し直した。そこにはジャンニが1991年から1995年までに生み出したVogueやWarhol、My Friend Elton、Icons、Baroque、Butterfliesなどが現代的シルエットを与えられ蘇っていた。「ジャンニは歓びをなによりのテーマに、イキイキとして生きた——それをVersaceプリントは表現しているのです」。これらのプリントは、インターネットが登場する遥か前に生まれたものだ。GoogleやFacebook、Instagramがある世の中に生まれてきた若者たちは、今回のコレクションで初めてVersaceの真髄を体験することになるだろう。「ひとつのコレクションでジャンニの世界すべてを讃えることは不可能です。だから今回のコレクションではジャンニが愛したプリントやメタルメッシュを用いて、彼の功績を讃えようと思ったのです」とドナテッラは説明した。「ジャンニ、このコレクションをあなたに捧げます」。今回のコレクションはジャンニの人生と功績を讃えるものだった。しかしこれはドナテッラが、兄ジャンニのためだけに作ったものではなく、ファッションを愛するすべての者のために作り上げたコレクションだった。

Versace

「これはひとりの天才を祝福するコレクション。アイコンを、わたしの兄を讃えるコレクションです。ジャンニ、わたしたちはあなたを愛してやまない……」というドナテッラの言葉が、会場に響くBGMの向こうに繰り返し流された。ファッションを愛する新たな世代がこの世にはいなくとも、けっして忘れられることのないデザイナーの傑作を体験する——そんな空間がそこにはあった。ジャンニが生み出した傑作中の傑作が次から次へとランウェイに躍り出た。過去へと遡って、Versaceの栄光を、"今"体験している——そこには過去と現在がぶつかり合う確かな感覚があった。それはオンラインでライブ配信されたショーの模様を観ていたひとびとも同様に感じたはずだ。ネットはパンク状態となったが、ショーをリアルタイムで見られたことはなにごとにも代え難い光栄だった。

Versace

ベラ・ハディッド、ビンクス・ウォルトン、ケンダル・ジェンナー、ヤスミン・ワイナルドゥム(、そしてショー後半で母と共演した今季のスター・モデル、カイア・ガーバーなどがランウェイを闊歩した。このショーの目玉はなんといってもジャンニのために集結した往年のスーパーモデルたちだろう。ショーも終わりかと誰もが思ったとき、シンディ・クロフォード、ナオミ・キャンベル、クローディア・シファー、ヘレナ・クリステンセン、そしてカーラ・ブルーニが、Versaceのトレードマークである透け素材で作ったゴールドのドレスをまとい登場した。そしてジョージ・マイケルの「Freedom! '90」が会場に鳴り響くなか、彼女たちはドナテッラとともにランウェイへと躍り出て貫禄のウォーキングを見せた。そこにはファッションの歴史が浮かび上がっていた。ランウェイに近い観客席にはこの歴史的瞬間を捉えようと、スマホやカメラを向けるひとびとが押し寄せた。これは、ジョージ・マイケルが観客席最前列で見守るなか、クリスティ・ターリントン、リンダ・エヴァンジェリスタ、ナオミ・キャンベル、そしてシンディ・クロフォードが会場に流れる「Freedom! '90」を口ずさみながらランウェイを歩いたVersace1991年秋冬コレクションを彷彿とさた。ジョージもジャンニも、もうこの世にはいない。しかし彼らのの才能はわたしたちを刺激し続ける。「リスクを負うことを恐れず、革新をもたらした彼の才能——それがない世界を想像してみてほしい」と、サウンドトラックは唱えていた。そんな世界は想像できないし、したくもない。ファッションウィークは続くが、これを超えるショーを作り出すことは不可能だろう。

Versace

状況は大きく異なるものの、Roberto Cavalliの新クリエイティブ・ディレクター、ポール・サリッジもまた、過去を現代に解釈する方向性を打ち出していた。激動の時期をくぐりぬけたブランド、Roberto Cavalli——セントラル・セント・マーティンズを卒業した後、Burberry、Jil Sander、Acne Studiosでデザインを手掛けてきたサリッジが無駄を省き、Roberto Cavalliならではの世界観を作り出して、自身にとってもブランドにとっても安定した船出を見せた。今年5月にクリエイティブ・ディレクターに就任したばかりのサリッジ——今季のコレクションを作るのに与えられた期間はわずか数週間だったはずで、Roberto Cavalliの歴史を彼らしく解釈し、これだけのコレクションを作り上げたことは賞賛に値するだろう。ブランドのトレードマークともいえる官能的でエキゾチック、ボディコンシャスで動物的なデザインのイブニングドレスを、サリッジは陽光の下で生きる女性の世界に描き直した。「Roberto Cavalliの女性像は生活を持っている。それは現代的な働き方をしている女性たちなのです。これは、さまざまな女性たちの、さまざまな瞬間を想定したコレクションなのです」と、サリッジは話す。よく考え抜かれていて、落ち着きがあり、丁寧に作られた今季のコレクションは、そのメゾンが求めていたものでもあった。、フィナーレの後ランウェイに現れたサリッジがお辞儀をすると、創立デザイナーであるロベルト・カヴァリが立ち上がり賞賛を贈った。まさに世代交代の瞬間だった。

Roberto Cavalli

Emporio Armaniでロンドン・ファッション・ウィークを沸かせたイタリアの巨匠ジョルジオ・アルマーニは慣れ親しんだミラノで明るい雰囲気のGiorgio Armani2018年春夏コレクションを発表した。今シーズン、アルマーニがインスピレーションとしたのは印象派の絵画。ファッション界におけるミニマリズムの巨匠が自由に花柄などを使用し、ジョアン・ミロへのオマージュを服に描いた。それは苦難の時代に対するアルマーニなりの対抗だった。「悲しみに暮れ、女性を必要以上に悲しい立場に追いやる必要などない……こんな悲しい時代だからこそ、わたしは色で応える」と、ショーのバックステージでアルマーニは語った。自由で衝動的な本能がファッション界の巨匠が生み出す洗練とエレガンスと出会う——そんな二面性は絵画のようなプリントと大胆なカット、そして流れるようなアシメトリーに現れていた。現在83歳のジョルジオ・アルマーニはデザイナーとして40年以上を生きてきた今でもファッションを楽しんでいる。

Giorgio Armani

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Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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