Photography Michal Chelbin

2021年にチェックすべき10の写真集

コロナ禍の今、私たちに必要なのは、美しいものと向き合う時間。写真の美しさをじっくり堪能できる10冊の写真集を紹介する。76歳のクィアのドキュメンタリー写真家ジョアン・E・バイレンをはじめとするレジェンドから知る人ぞ知る新星まで、今年チェックすべき写真集を紹介する。

by Douglas Greenwood; translated by Nozomi Otaki
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20 January 2021, 4:15am

Photography Michal Chelbin

私たちが平穏や触れ合いを追い求めるようになってから1年が過ぎた。いつ何が襲いかかってくるかわからない時代だからこそ、ひと息ついて何か美しいものと向き合う時間をとるべきだ。

 それはSNSの狂騒から距離を置くことかもしれないし、本を読んだり、メッセージをチェックしないで映画を観ることかもしれない。もしくは、目を楽しませてくれる雑誌や写真集を手に取ってもいい。

2021年は、特別な写真集が数多く出版される。数々の傑作が私たちのコレクションに加わり、今ではすっかり貴重になったアートとの触れ合いを体験させてくれるだろう。

76歳のクィアのドキュメンタリー写真家ジョアン・E・バイレンをはじめとするレジェンドも、知る人ぞ知る新星も、自らが切り取った世界を意匠を凝らした装丁で世に送り出す準備を進めている。そんな写真家たちによる10冊の写真集を以下で紹介する。

1. 『Richard Misrach on Landscape and Meaning』(発売中)

完成した写真と同じくらい、撮影の過程に興味をそそられるひとにおすすめなのが、米国人写真家リチャード・ミズラックによる〈Photography Workshop〉シリーズの新作だ。Apertureから出版される本書で、卓越した風景写真で知られるアーティストが、哀愁と情緒あふれる美しい光景を捉える秘訣を明かす。

 2. ケイシー・ジェファーズ『Uniform』(発売中)

カリブ海に浮かぶ人口わずか1万1000人のネイビス島。デビュー作となる本書で、ケイシーは現地を訪れ、島にある14の学校の生徒たちを捉えた。遠く離れた異国の日常の記録であると同時に、ティーンエイジャーによる一風変わったファッションストーリーでもある、カラフルで示唆に富んだ作品だ。

 3. カルロッタ・ゲレロ『Tengo Un Dragon Dentro del Corazon』(4月6日発売)

 カルロッタの作品の核となっているのは、動き、女性性、肌、コントロールされた身体の総合的な美しさだ。独学で写真を学んだバルセロナ生まれの写真家が捉える、くすんだ肌色の作品は、2016年、ソランジュの目に留まり、のちに伝説的なアルバムとなる『A Seat at the Table』のアートワークに起用される。 

そんな彼女の初の写真集(タイトルの直訳は「私の心にはドラゴンがいる」)が、今春Prestelから発売される。

4. ジェイミー・ホークスワース『The British Isles』(5月発売予定)

i-Dの常連で、現代の英国写真界を代表するジェイミー・ホークスワースは、故郷とそこに暮らす人びとの荘厳でパーソナルなポートレートを撮り続けてきた。MACKから初夏に刊行予定の『The British Isles』も、そのテーマを受け継いでいる。

3年間かけて撮影された本書は、学生や神父、団地や工事現場を通して、絶えず自ら招いた混乱に渦中にあるこの国を、従来とは異なる角度から捉えている。これらの人びとや風景に関する政治的な言説は、しばしば被写体を覆い隠してしまうが、本書でジェイミーは新たな視点を提示した。

5. ジョアン・E・バイレン『Eye to Eye: Portraits of Lesbians』(3月23日発売)

今から約40年前の1979年、JEBとして知られる写真家のジョアン・E・バイレンは、レズビアンコミュニティに捧げる自費出版の写真集を制作、彼女たちの家族のような絆、パワー、愛を捉えた。当時としては革新的な作品だったが、本書の重要性は長らく見過ごされてきた。

そして2021年、Anthology Editionsが本書を当時のまま再出版する。オードリー・ロードをはじめとする既存のエッセイに加え、写真家のローラ・フラッシュやサッカー選手ロリ・リンジーの言葉も新たに収録された。

 

6. ラヒム・フォーチュン『I Can’t Stand to See You Cry』(2021年春夏発売)

昨夏の発売以来、デビュー作『Oklahoma』の完売状態が続くなか、ラヒム・フォーチュンは新たな写真集の準備を進めている。『I Can’t Stand to See You Cry』と題されたこの写真集は、インディペンデントアート出版社のLoose Jointsから今夏までに刊行される予定だ。

『T Mag』をはじめ、最近ではi-D40周年記念号のエルセッサー一家の表紙の手がけるなど、ドキュメンタリーやファッション写真の世界で注目を集めているラヒム。『I Can’t Stand to See You Cry』は、彼を形づくってきた風景や家族のルーツを追う4年間の記録だ。いったいどんな仕上がりになるのか、近いうちに見ることができるだろう。 

 7. クリスティン・ベッドフォード『Cruise Night』(2月18日発売)

クリスティンの初の写真集のテーマは、メキシコ系米国人のサブカルチャー、ローライダーカルチャー。すべてロサンゼルスで撮影された5年間の記録『Cruise Night』は、社会研究と芸術としての美しさのあいだの絶妙なバランスを保ちながら、この文化を取り巻いてきたステレオタイプを壊そうとしている。

ページをめくれば、異国に住む私たちはしばらく体験できないであろう、クールなLAの夜のエネルギーを感じられるはずだ。

8. ミカル・シェルビン『How to Dance the Waltz』(3月18日発売)

イスラエルに生まれ、その後米国、ヨーロッパ、ウクライナを渡り歩いてきたミカル・シェルビンは、社会の周縁における生活、そして私たちの大半が知らない世界を当然のごとく受け入れて生きる子どもたちの生活にずっと魅了されてきた。

今春Damianiから刊行される、彼女の4作目となる『How to Dance the Waltz』は、世界各地の闘牛士、プロムの夜、若い陸軍新兵など、物憂げにカメラを見つめる被写体を捉えている。

 

9. ディアナ・テンプルトン『What She Said』(2月発売予定)


「朝起きたときは99歳みたいな気分。疲れ果てていて、だるくて、憂うつ。まだたったの15歳なのに、私はどうしちゃったの? なんでこんなに憂うつなの? この世界ってほんと最悪!」

この溌剌とした文は、写真家ディアナ・テンプルトンの日記からの引用だ。臆することなく自身が抱える問題に立ち向かいながら、思春期、そしてひとりの女性としての人生に突入した少女のエネルギッシュで色鮮やかなポートレートに添えられている。

米国の郊外からロシアの都市まで、世界各地で撮影されたアーカイブのスキャン、ヴィンテージのライブポスター、ディアナ自身の写真が収められた本書は、十代の少女の生活とはどんなものかをありありと描いている。2月にMACKから刊行予定。

 

10. ボニー・ブライアント『Lump Sum Lottery』(4月13日発売)

ボニー・ブライアントに関しては、あまり多くは知られていない。ロードアイランドに生まれ、ニューヨーク大学芸術学部に進学、2008年卒業。主にデザイナーとして働く傍ら、写真家としても活動する。

そんな彼女の最新プロジェクト〈Lump Sum Lottery〉は、2008年に自費出版した卒業制作を除けば、彼女の初の写真集となる。10年にわたって撮り溜めた日記形式の写真を通して、写真という媒体だからこそ捉えることのできた彼女の人生の物語を提示している。

一流出版社Damianiから刊行され、前書きは『The Village Voice』紙や『New York Magazine』でNYの歴史を記録してきたハンガリー生まれの写真家、シルヴィア・プラヒーが担当している。


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