15年間妹を撮り続けたリヴ・リベルグ interview
暇つぶしから始まった姉妹の成長の記録について、カメラマンを務めた姉が撮影の裏話を明かす。
15年にわたって妹ブリットを撮影してきたオランダ人フォトグラファー、リヴ・リベルグ。十代の少女たちの暇つぶしとして始まったこの撮影は、ふたりの子どもから大人への成長を記録するアーカイブへと発展していった。しかし、ハーグ王立芸術アカデミーを卒業したリヴが、これらの写真が彼女の活動にとっていかに重要で、彼女の活動を形づくってきたのかに気づいたのは、つい最近のことだという。
新進アーティストのためのモンドリアン基金の支援を受け、彼女は過去のアーカイブを振り返り、新たに撮影した写真と合わせて、初の写真集『Sister Sister』を制作した。彼女いわく、このプロジェクトは「自分の人生、ブリット、私たちのコラボレーションについて語れる真実」だという。
本作は6歳から現在までのブリットの写真のみで構成されている。撮影を始めたのは、リヴがわずか10歳のときだった。写真は1ヶ月ごとにまとめられてるため、15年にわたる成長を4週間単位で見ることがでいる。これによって、読者は12回も、ふたりの旅の始まりに立ち返ることができるのだ。
「しっかりとした構成のあるコンセプトだけど、それでいて詩的でもある」とリヴは語る。「月や季節にはそれぞれのイメージや感覚があって、時の経過について教えてくれる」
最近の作品と十代の頃に撮影した作品をひとつにまとめるため、リヴは昔の作品をうまく活用して今の自分のアーティスト性を反映させた。「思い切り拡大してクロップしたり、すごく不自然な色に編集したりした。プリントした写真をまたカメラで撮ったり。ほぼ全部撮り直したような感じ」

写真のほとんどは、リヴとブリットが両親と暮らすオランダ郊外の実家で、父親の下着やYOHJI YAMAMOTOの個性的なドレスといった両親の服を使って撮影された。母親が大切にしていたドレスを拝借し、森や牛のいる農場など屋外の撮影でトラブルに見舞われたことも何度かあったので、母親はクローゼットに錠を取り付けたが、ふたりはいつも鍵を探し出した。
姉妹はこれらのエレガントな衣装とドラマチックな背景を使って、ファッション誌の華やかな撮影を真似た。ブリットが純白のロングドレスで森に立つ写真もあれば、パジャマ姿でボイラー室にいるものもある。なかにはワセリンを塗りたくってブラをスカーフのように頭に巻きつけたり、リボンをハーネスのように結んでいるような、さらにシュールな写真もある。
ふたりで家じゅうを物色してレンガや扇風機などの日用品を見つけ、ブリットがそれを写真で活用する方法を探したという。

姉妹の一風変わったスタイリングと撮り溜められた写真の裏には、ひとり若い女性と、彼女の日、月、年ごとの感情の変化がある。それぞれの章で、私たちはさまざまなアングルから撮られたブリットの顔のアップを目にする。まるでリヴが、妹の顔に何かを見出そうとしながら、それを捉えられずにいるかのように。もしくは、そこに見過ごせない何かを見つけたかのように。
これらのポートレートが提示するのは、退屈、落ち着き、苛立ち、疲労、怒り、そしてあまりにも繊細かつ捉えどころがなくて特定できない気分や感情だ。「笑いすぎて写真が撮れないこともあったし、普通の姉妹みたいにケンカしたこともあった」とブリットは本作の後書きで述べている。彼女にとってのベストショットはケンカ中のものだ。張り詰めた表情によって、力強い写真が完成したという。
リヴにとって、ブリットとの撮影は特別な体験だ。「彼女にはなんでも頼めるし、私の意図を理解してくれる。無意識のつながりがあるみたい。きょうだいならではのことかも。この本を見たひとには、そういう絆が感じられて感動した、と言ってもらえた。こういう作品は、誰とでもできるものじゃない」
姉妹は今、多くのブランドや雑誌から撮影を打診されている。確かに、リヴが本作の重要性に気づいたのはつい最近のことかもしれないが、彼女にとって本作は始まりに過ぎないのだ。
『Sister Sister』の購入はこちら。






Credits
Photography Liv Liberg