ヴァーチャルパーティ「AVYSS GAZE」を通して見るデジタルプラットフォームの未来

ポップスからアンダーグラウンドまで、世界のミュータントな音楽を混ぜるインディペンデントマガジン「AVYSS」。インターネットという次元で開催される彼らのパーティが更新するクラブシーンやパーティカルチャーの今後。

by Saki yamada
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12 April 2021, 5:25am

現実での接触が絶たれ、疲弊する音楽シーン。多くの関係者やアーティストがこれまでとは違った形での収益化を模索し、唯一のコミュニケーション手段となったインターネットへと目を向けた。その中でも素早い実現力とエキセントリックな表現で一際存在感を放っていたのが、音楽マガジン「AVYSS(アビス)」だ。2018年のローンチ以降、時代をアップデートするエクスペリメンタルなポップス、ヒップホップ、クラブミュージックにフォーカスを当て、独自の世界観を構築してきた。そんな彼らのヴァーチャルパーティ「AVYSS GAZE(アビス・ゲイズ)」が、現行のパーティカルチャーを更新している。

「AVYSSを始める前からコア、マイナーと言われる音楽をどうやってそれ以上のものにするかを考えていました。もっとポップなシーンと混ざり合って、その間にあるグレーゾーンを拡張させたい」とCVNとして音楽家活動もする編集長のNobuyuki Sakumaが話すように、AVYSS GAZEもまた拡張の一種となっている。普段、東京・渋谷のWWWや幡ヶ谷のFORESTLIMITといったクラブで行われていたパーティがインターネット上に出現することは、これまでとは違うグレーゾーンに到達するキッカケとなった。

AVYSS GAZEのヴァーチャル空間を手掛けるDJ・ヴィジュアルアーティストのJACKSON kakiはコアな音楽ファン以外にも3DCGデザイナー、特に若い層からのリアクションが多かったと話す。ヨーロッパや中国のゲームエンジンを取り入れたアーティストから影響を受けているJACKSON kakiは、世界最大のシェアを誇るソフトウェア「Unity」を使ってグラフィックデザインをしている。「Unityユーザーの中には、ハリウッド級のリッチでリアルな3DCG以外にも、現代アートのようなアプローチやゲーム調の作品を作るアーティストがいます。その表現の多様性に面白さを感じました」。AVYSS GAZEのスタートアップに参加した彼は、当初大学を卒業したばかりで、映像作品のポートフォリオもない状態だった。それでもこうしてメンバーとしてSakumaや、発起人の一人であるプロデューサーのsteiと共にプロジェクトを遂行してきている。そこには、何かを表現したいという熱意とAVYSSをサポートしたいというJACKSON kakiの想いだけがあった。

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コロナ渦による経済的な打撃を受けたのはAVYSSも同じだった。存続の危機にさらされながらも、どうにか持ちこたえようとクリエイターと協力して作ったオリジナルグッズの販売。そして収益を目指したドネーション企画こそが、AVYSS GAZEの始まりだった。2000年代のインターネットカルチャーから強く影響を受けたSakumaにとって、自分のオリジナリティを活かしきれない映像配信には限界を感じざる追えなかった。そこでバーチャル的なアプローチに向かって舵を切ろうと決意。出演には馴染み深いアーティストが集まり、ギャラは全て運用費用に還元されたという。不安定な状況下ではあったが、自然にAVYSS GAZEのストーリーは紡がれていった。プロジェクトを続けていく中、ドネーションが目的だということも忘れるほど、AVYSS GAZEはその後成長した。開催する意味が生まれ、どう世界観を更新させていくかにチームは夢中になっている。もはやリアルイベントを代替するコンテンツではなく、独立したパーティの形として、何ができるかを模索している。

2020年の区切りとして、AVYSS GAZEの集大成となったのが12月にSUPER DOMMUNEで開催されたコラボレーション配信。この会では単なる映像配信の域を超え、オーディエンスもアバターを作ってヴァーチャル空間上のダンスフロアに参加が可能となった。「Hubs Cloud」というウェブブラウザを利用することで、VRゴーグルを持っていなくてもネット環境さえあれば、世界中どこにいてもパーティに遊びに行くことができる。このデジタルならではの特徴を活かし、ロンドンからもアジアの音楽にフォーカスする2つのコレクティブ/レーベル「Eastern Margins」と「CHINABOT」がジョイン。所属アーティストがライブパフォーマンスを披露している。こうしてコロナによって閉ざされた世界の扉は、再び開かれることになった。さらにSUPER DOMMUNEが位置する渋谷PARCOをモデリングした空間を制作し、アパレルブランドやグラフィックアーティストの展示会をオーガナイズ。見事に音楽、ファッション、アート、デジタルが融合し、AVYSSらしいオルタナティブなスペースが誕生した。

今後、デジタル表現はフォーマットを変え、さらに進化していくだろう。インターネットカルチャーにもっと大きな変革をもたらすと言われる5Gが実装されることで、制作のプロセスはさらに単純化される。これにより若いアーティストやコミュニティが増え、また新たな価値観のクリエイティブが生まれるはずだ。例えば、超人気ゲーム「マインクラフト」に存在する音楽イベント「クラブマトリョーシカ」のように、別次元上の新たな空間は、ある意味で物質世界から離れ、より精神的な繋がりを強めることだってある。こうした流れが地続きとなって、次の時代をアップデートしていくのだ。

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