「みんな私たちに冗談は通じないと思ってるのかも」キム・カーダシアン・ウェスト interview

米国を代表するアイコンが、劇作家のジェレミー・O・ハリスとともにSkims、弁護士になるための訓練、子どもたちと観ているお気に入りのアニメについて語る。

by Douglas Greenwood; translated by Nozomi Otaki
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14 December 2021, 1:00am

この記事はi-D Out Of The Blue issue, no. 366, Winter 2021に掲載されたものです。注文はこちら

シルエットが、すべてを物語っていた。9月の第二月曜日、ニューヨークの2021年メットガラの会場。メトロポリタン美術館服飾研究所(コスチューム・インスティテュート)のクリーム色のカーペットが敷かれた階段に、セレブたちが集結した。今年のテーマは〈米国の独立〉。毎度のことながら解釈の幅の広いテーマで、今年のイベントも、今シーズン最も多くのスターが集う浮ついたお祭り騒ぎと化していた。しかし、ある女性が少し遅れてパーティーに到着した。タイトなブラックのBalenciagaのボディスーツが、彼女の頭から爪先まで全身を覆っている。見えているのは独特なシルエットとポニーテールだけだ。それでも、オーディエンスはひと目で彼女の正体に気づいた。

ビジネスウーマン、弁護士、デザイナー、インターネットのトレンド発信者であるキム・カーダシアン・ウェストは、今世紀の米国史にその名を刻まれるであろう、数少ない現代人のひとりだ。その夜、彼女が星条旗柄のデニムでも定番アイテムでもなく、質素で飾り気のない、もはや身元不明な装いでメットガラへと踏み出したのは、彼女のこの国と名声に対する論評であり、21世紀においてこのふたつがいかに融合しているかを示す、大胆かつ唯一の手段だった。

彼女はあらゆる意味で、ラシュモア山に彫られている顔やコカコーラ、星条旗に並ぶ、米国の代名詞的存在となっている。40歳以下の人びとに米国出身の有名人を尋ねれば、おそらく最初にキムの名前が挙がるだろう。

Kim Kardashian West wearing a black vest top, black maxi skirt, a chain necklace and diamond earrings and her hair in a braid hanging off her shoulder.
Kim wears top Skims. Skirt BALENCIAGA. Schlumberger® Apollo ear clips in 18k gold in platinum, and HardWear graduated link necklace in 18k rose gold with pavé diamonds TIFFANY & CO.

では、かつてホテルの女相続人のアシスタントとして名を馳せた女性は、いかにして絶えず目を光らせる大衆の期待を独占してトップへと上り詰め、単なる文化的商品ではなく、絶大な経済力と影響力を誇る人物となり得たのだろう。

キムをセレブの世界で偶然成功を掴んだ果報者とみなすのは簡単だ。2000年代半ば、彼女よりも前にただ名声だけを追い求める道を退き、正真正銘の文化的功績を残した人物は、ほとんどいなかった。しかし、キムは成長するにつれ、彼女を単なる有名なアイコン以上の存在としてみなすべき理由をどんどん明らかにしていった。リアリティ番組『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』で14年間自分自身や家族の日常を公開し続けた結果、確固たる地位を築いたキム。彼女の兄妹たちもすぐに悪名を轟かせ、一家はタブロイドカルチャーの常連となり、ゴシップ記事で報道される内容以上のネームバリューを築き上げることに成功した。

KKW Fragranceと補正下着ブランドSkimsのCEOを務める彼女は今、法律の世界へと足を踏み入れている。麻薬密売組織に関与したとして、非暴力犯罪ながら終身刑を宣告されたアリス・マリー・ジョンソンのような人びとのためにロビー活動に勤しんできた。2018年には、彼女がホワイトハウスでドナルド・トランプにこの件について訴えたことで、ジョンソンはついに釈放された。

2021年は、キムに新たな気づきと始まりをもたらした。カニエ・ウェストと袂を分かち(ふたりのクリエイティブな相乗効果は失われていないが)、Skimsと名だたるラグジュアリーブランドFendiのコラボレーションをローンチし、初めて資産10億ドル(約1050億円)以上のビリオネアの仲間入りを果たしたこの1年は、彼女にとって記念すべき年となるだろう。それだけでなく、私たちがキムのセレブたる所以を知るきっかけとなった華やかなリアリティ番組が感動的な幕引きを迎え、彼女の人生のひとつの章が締めくくられた。

今は彼女の生活に密着する新たな番組が撮影中で、カーダシアン姉妹、特にキムの司法修習生としての新たな人生に焦点を当てた番組になるとうわさされている。ある意味、彼女にとっては新たなスタートとなるはずだ。彼女が舞台裏でどんな決断を下したかはわからないが、とにかく番組はすでに制作中だ。

今年のメットガラには、ハイファッションの世界で予期せぬ活躍をみせた人物がもうひとりいた。ここ最近の演劇の世界は、類まれな才能に加えてラグジュアリーファッション界お墨付きのファッションセンスを有する脚本家にはしばらく恵まれなかったが、そのふたつを併せ持っているのがジェレミー・O・ハリスだ。トニー賞の複数部門にノミネートされた、賛否両論を呼んだ傑作『Slave Play』をはじめ、ストリッパーを追うスリラー『Zola』の共同執筆者にも名を連ねる彼は、業界きってのカリスマ性とダンディズムを体現する存在となった。

Portrait of Kim Kardashian West wearing sunglasses and a leather jacket with a diamond necklace over the collar
Top and sunglasses BALENCIAGA. Schlumberger® necklace with Glove BALENCIAGA. Schlumberger® Stitches bracelet with diamonds marquise-cut diamonds in platinum and 18k gold TIFFANY & CO

メットガラで出くわす前にも、何度か顔を合わせていたというジェレミーとキム。今回i-Dは、ふたりのリモート対談を実施。キムはニューヨークの撮影現場から参加してくれた。彼女と一緒にいたチームも質問を投げかけ、撮影中の彼女に率直な意見を求めた。キムの発言は、これまでもずっと核心を突いていた。しかし、人びとがそれに敬意を払うようになったのは、つい最近のことだ。約20年以上が過ぎた今、彼女の発言はようやく然るべき注目を浴びるようになり、彼女自身もその状況に順応しようとしている。全世界から引く手数多のこの女性に、ひと息つく時間はほとんどない。

ジェレミー:ハイ、キム!

キム:ハイ! 調子はどう?

ジェレミー:元気だよ。あなたは?

キム:私も元気。今ちょうど撮影中なの。

ジェレミー:撮影中?

キム:そう。昨晩は『ウォール・ストリート・ジャーナル』の表彰式で、今日は撮影なの。目が回りそう。

ジェレミー:僕も最近はずっと予定がぎっしり詰まってる。ちょうどロサンゼルスのGucciのファッションショーに行ったばかりなんだ。毎日、毎週、順々にこなしていくのも大変なくらい。みんなコロナ後にいろんなことを再開するのをずっと待っていたから、こんなことになってるんだよね。日常が戻ってきた。今は手いっぱいな感じ?

キム:そうでもないかな。いろんなことが再開してワクワクしてる。もちろん、オフの時間も楽しかったけど。正直、いろいろ再調整して、生まれ変わるための時間がもてたのは、自分の心にとってすごくよかった。たとえ世界がバラバラになって、誰もが愛する人を心配しているようなときでも、何事もできるだけポジティブに捉えるようにしてる。でも、日常が戻ってきたことにワクワクしてる。

ジェレミー:パンデミック中は家族のことですごく不安になったけど、そのおかげで人生でいちばん大切なものは家族や妹、姪や甥たちなんだって改めて気づくことができた。いろんなものの捉え方が変わったよ。パートナーとの距離も縮まったし、友人との距離も縮まった。コロナのおかげで距離が縮まったと思うひとやものはある? それは子どもたち? それとも自分自身や他の誰か?

キム:もちろん、子どもたちとの距離は縮まったし、祖母との絆も深まった。みんなコロナの影響を受けたときは特に、家族全体の絆が深まったと思う。これ以上距離が縮まることはないと思っても、もっと近づくこともできる。

ジェレミー:メットガラの会場とか、トラヴィス・スコットが一緒のときとか、今まで何度か会ったことがあるけど、ぜひ訊いてみたかったのは、初対面のひとに会うとき、緊張感や感情が高まっている環境で、どうやってそれほど寛大に新しい出会いに向き合っているかということなんだ。それは自然にできるもの?

キム:わあ、そんな風に言ってくれてうれしい。優しさをもつことは、私にとってすごく大切なことなの。子どもたちにもそう教えてきた。親切なひとに育ってほしくて。他のことはどうでもいいから、とにかくすべてのひとに尊敬の念と優しさをもって接しなさい、って。結局、それがゴールなの。だからそんなふうに言ってもらえたのは、私にとって最高の褒め言葉。

Close up of Kim's black leather glove with a diamond bracelet on it.
Glove BALENCIAGA. Schlumberger® Stitches bracelet with diamonds marquise-cut diamonds in platinum and 18k gold TIFFANY & CO. in platinum and 18k gold TIFFANY & CO.

ジェレミー:子育てとか、子どもたちに優しさを教えることといえば、『サタデー・ナイト・ライブ』を見ていて驚いたのは、あなたの自分自身に関するユーモアのセンスなんだ。

キム:私が意地悪だったって?

ジェレミー:いや、そうじゃなくて……。

キム:私が家族みんなに対して思いやりがないってこと?

ジェレミー:いや、違うよ。家族のことに対するユーモアのセンスだよ。米国にとっては最高のサービスだったと思う。そのあなた自身やあなたが住んでいる世界にまつわるユーモアのセンスは、家族共通のものなの? それとも、あなただけのもの?

キム:これは完全に家族ゆずり。みんな私たちに冗談は通じないと思ってるかもしれないけど、私たちはいつも冗談ばかり言ってる。そういう一家なの。誰に何て言われようと、どう思われようと、私は特に気にならない。だから「聞いて、今回私がこれをやるなら、私たちに冗談が通じるってことをみんなに知ってほしい。私たちは家でこんなことを話してるの」って言ったの。私たちにだってユーモアのセンスはある。1日中お互いをいじり合ってる。過敏に反応するひとなんて誰もいない。友達や親しいひとなら全員知っている私の一面を、みんなに見せたかった。でもほら、『サタデー・ナイト・ライブ』のオーディエンスは今までとはまったく違うでしょ。いいチャンスだった。私にも面白いところがあって、それが私の性格の大部分を占めているんだってことを見せたかったの。楽しかった。

ジェレミー:修正したり、控えなければいけないようなジョークもあった? ほら、家族やきょうだいにとって都合の悪いものもあるんじゃない?

キム:家族はみんな「したいようにすればいい」って言ってくれた。みんな私にとってはいじりやすい、ネタにできるターゲットなの。トリスタンやクロエのめちゃくちゃ面白いジョークがあったんだけど、ちょっと言い過ぎかも、って思って。でもみんな、「私を使って。好きにしなさい。あなたの時間でしょ」って言ってくれた。みんな協力的なの。すごくクールでしょ。

ジェレミー:今回みたいなことは、どれくらい前からやりたいと思ってた? 個人的には、キム・カーダシアンは、そういうことでスポットライトを浴びる必要はないと思っていたんだけど。

キム:確かに、自分からはやらなかった。前にも依頼されたことはあったけど、「うそでしょ、私には絶対無理。そんな才能ない」って思った。でも、今回はちょうどいいタイミングのような気がして。それに、私はやると決めたらやるの。実際、全然緊張しなかったし、思い切り楽しめた。あの番組はたくさんの努力の上に成り立っているってことに、本当にびっくりした。23時間ぶっ続けで撮影した日もあったの。信じられない。

ジェレミー:本当に? それはすごいな。

キム:ランチ休憩すらなかった。片手間に何か食べる感じ。私のチームもヘアメイクのチームも、みんな寝ずに事前収録をしたの。懸命に働いている人びとのことは心から尊敬してる。クレイジーだったけど、最高の体験だった。すごく楽しかった。

ジェレミー:あの現場は3人友達がいたんだけど、みんなそれぞれ、あなたはこれまで番組ゲストのなかでいちばん親切なひとだと言っていたよ。全員に手紙を書いたんだって?

キム:ええ、そうなの。

ジェレミー:みんなそのことを話してた。それを聞いて、マジか、めちゃくちゃクールだな、って思ったんだ。

キム:全員に手紙を書いたの。温かく迎えてもらえてうれしかったということを知ってほしくて、みんなのデスクにメモを置いてきた。

ジェレミー:撮影現場で一緒に仕事をして、いちばん楽しかった相手は?

キム:うーん、ボウエン・ヤンかな。すごく楽しいひとだった。でも、みんな最高だった。ああいう現場があるってことを知れてよかった。ヘアメイクチームや衣装チームのことも尊敬してる。本当に楽しかった。

「でも一番の望みは、さっき話したように、優しくて機転の利いた子どもたちを育てること。今後10年は人生を楽しんで、人びとを助けたい。それが私の目標」

ジェレミー:うわ、ボウエンはめちゃくちゃ喜ぶと思うよ。ヘアメイクチームも。なかなか感謝の言葉をもらう機会がないからね。ところで、ボウエンはネット上で僕のニセの彼氏なんだ。

キム:彼、ほんとに面白くない?

ジェレミー:これまで会ったなかで一番面白いひとだよ。僕の彼氏のお母さんは、僕たちがオープンニングで演技をしたり、レッドカーペットでいちゃついたりするたびに、ボウエンのことをすごく心配してるんだ。

キム:ほんとに? めちゃくちゃ面白い!

ジェレミー:僕の名前を検索すると、「ジェレミー・O・ハリスはボウエン・ヤンの彼氏?」って出てくるよ。

キム:もうやめて。ほんとに面白すぎる。

ジェレミー:今飛び交っているいろんなうわさについてはどう思う?

キム:私はただ、自分の人生を生きてるだけ。今何が起きているとか、何を言われているとかは気にしないようにしてる。自分の人生を生きたいから。

ジェレミー:今、そこにいるのは誰?

キム:マリオ・デディバノビッチとクリス・アップルトン。(ふたりに向かって)ちょっと、今インタビュー中なんだけど。あなたたちがしゃべってて聞こえないって! 静かに!

ジェレミー:ありがとう。i-Dにもちゃんと聞こえてるといいけど。クリス・アップルトンによろしく伝えて。でも、そうだね、それはいいことだと思う。自分の人生を生きるというのは、この2年間で学んだ最高の教訓なんだ。ここ3年は毎日猛烈な勢いで働いて、ずっと自分を追い上げたり、駆り立ててきたけど、一度立ち止まってみて、こんなふうに働き詰めなのは自分も望んでいないって気づいた。もっと読書したり、アニメを観たりしたい、って。

キム:え! 私もそうだった。今我が家はアニメブームなの。

Side profile of Kim Kardashian West wearing a black leather jacket.
Coat and pantashoes BALENCIAGA. Top Skims. Elsa Peretti® Amapola brooch with silk and diamonds in platinum and Diamonds by the Yard® earrings in platinum TIFFANY & CO.

ジェレミー:マジか! 何を観てた?

キム:ちょっと思い出せない。待って。なんてタイトルだっけ? (KKWのチーフマーケティングオフィサー、トレイシー・ロムルスに向かって)トレイス、子どもたちが観てたアニメの名前わかる? 最近ずっと観てたアニメ。『NARUTO -ナルト-』じゃなくて、別のやつ……。

ジェレミー:『僕のヒーローアカデミア』?

キム:それじゃなくて……何か他にない? (後ろでいろんなアニメのタイトルを叫ぶ声)違う、『ナルト』じゃない。もうちょっと残酷なやつ。男の子が出てきて、死んじゃうの。

ジェレミー:どんな話? 内容を教えてくれたらわかるかも。

キム:Netflixにあって、小さい男の子が死んで、その子の姉妹か兄弟が出てきて、雪の中で……。それからお互いに殺し合うの。よくわからないけど、サムライか何かみたいな。

ジェレミー:ああ、なるほど。ヴァンパイアも出てくる?

キム:うん、たしか出てきたはず。

ジェレミー:『鬼滅の刃』だ!

キム:そう、それ! 『鬼滅の刃』。ずっと観てるの。すごく面白い。

ジェレミー:めちゃくちゃ面白いよね。

キム:最近みんなでハマってる。

ジェレミー:次のシーズンが待ち遠しいよ。

キム:実は子どもたちが教えてくれたの。あまり子ども向きじゃないかもだけど。

ジェレミー:僕は子ども時代を南部で過ごして、とにかく自分で探せる範囲で何らかのカルチャーを見つけようと必死だった。そうして見つけたのがアニメで、そこから今の僕の好みが形成されていった。だから、子どもたちがアニメを観てるのは良い傾向だと思うよ。

キム:日本にも何度か連れていったことがあるんだけど、日本文化にすごく刺激を受けた。私たちのゲストハウスはもともと侍の家で、アートディーラーのアクセル・フォーヴォルトが所有していた物件なの。この古い家の柱を、今の私たちの家に使ってる。この家には戦士のエネルギーというか、独特のエネルギーがあった。すごくクール。

Straight Up of Kim Kardashian West wearing a black bodysuit with a long black oversized leather jacket.
Coat and pantashoes BALENCIAGA. Top Skims. Elsa Peretti® Amapola brooch with silk and diamonds in platinum and Diamonds by the Yard® earrings in platinum TIFFANY & CO.

ジェレミー:他にもここ数年で生活に影響を受けた日本文化はある?

キム:デザインが好き。陶芸も皿もパッケージデザインも、みんなインスピレーションを与えてくれる。見ていて楽しいし、ロマンを感じる。

ジェレミー:僕のスマホの壁紙はキヨミ・ミズシマなんだ。好きな作家のひとりで、日本文学について集中的に学んでる。

キム:私は日本の建築が好きで、パーム・スプリングスに安藤忠雄が設計した家を持ってる。

ジェレミー:すごいな!

キム:それから誰にも知られたくないから場所は教えられないけど、もう1軒、隈研吾が設計した家もある。彼らの作品が大好きなの。今進行中のプロジェクトもすごく楽しみ。

ジェレミー:ほんとに彼らに興味津々なんだね。最初Kimonoという名前でSkimsを発表したとき、日本文化を盗用したと批判されたときはどう思った? あなたの中で、どうやって向き合った?

キム:決断はすぐにした。Kimonoという名前は私の名前をもじったもので、私自身が日本文化に大きな影響を受けているからそう名づけた。私としては敬意を表したつもりだったけど、そういうふうには受け取られないってことにすぐに気づいた。でも、文化を利用する意図はなかった。そんなつもりはまったくなかった。だから「オーケー、すぐに中断して。どれだけ製品が完成してるとかは関係ない。解決策を考えないと。じっくり時間をかけて新しい名前を考えよう」って。

ジェレミー:Skimsの愛用者としては、この新しい名前の大ファンだよ。すごくいいと思う。

キム:私も。いい感じでしょ? ちょっと発音しやすくなった。Kimonoっていう名前は、後になって考えてみると紛らわしかった。キモノしか売ってないみたいで、混乱を招いたかも。

ジェレミー:Skimsという名前には性差がないのがいいね。革新的だと思う。みんなのワードローブに取り入れられる感じがする。

キム:そう、そうなの。

「みんな私たちに冗談は通じないと思ってるかもしれないけど、私たちはいつも冗談ばかり言ってる」

ジェレミー:訊くか迷っていた質問を思い出した。これまであなたにこういう質問をしたひとはいないと思うんだけど、『サタデー・ナイト・ライブ』を見て、あなたは4人の黒人の子どもの母親として、自分について書かれることやイメージにすごく気を遣っていると思ったんだ。それから@norisblackbookの投稿もね。

キム:あれ、面白いでしょ。

ジェレミー:ブラックフィッシング(※非黒人が外見を黒人に近づけること)などに関する批判には、どのように向き合ってきた?

キム:私はどんな文化も盗用しようと思ったことはない。でも、前にブレイズヘアにして反発を受けた理由は、自分でもよくわかってる。実をいうと、ほとんどは娘におそろいの髪型にしたいといわれてやったことなの。「この髪型は私よりもあなたのほうが似合うかもね」と言ったりもした。同時に、娘がやりたいなら、あれこれ言わずに同じ髪型にしてあげたい気持ちもあった。でもその後の数年で私自身も成長して、こういうことについて子どもたちとコミュニケーションをとる良い方法を模索していった。この期間で確実に学ぶことができたし、学ぶ姿勢を子どもたちにも伝えようとしてきた。でも、ブレイズはアルメニアの歴史の一部でもある。みんな私がアルメニア系だってことを忘れてるけど。

ジェレミー:米国で移民として暮らしたり、この国に自分がどんなふうに溶け込むのか、ということにはいろんな複雑さがつきまとう。だからこそ、ぜひあなたに訊いてみたかったことがあるんだ。キム・カーダシアンの次の10年は、どんな期間になると思う? 10年後の自分はどこにいる? ビジネスウーマンで業界の重鎮、その次に目指すものは?

キム:ますます法曹界にのめり込んでいくと思う。学校で習ったことを続けたい。でも一番の望みは、さっき話したように、優しくて機転の利いた子どもたちを育てること。人生を楽しんで、人びとを助けたい。それが最大の目標。

ジェレミー:10年後もテレビには出てる? 今も何か制作中だったりする?

キム:ひとつある。もう撮影が始まってる新作なの。楽しみにしてる。Huluで公開される予定。テレビはずっと私の人生の一部だった。確かに楽しいけど、でも人生はそれだけじゃない。人びとを助けられる立場にあるなら、それを自分の人生にするべき。これからも人びとを助けられる立場にいたい。そうすれば私も幸せになれるから。

ジェレミー:人びとの支援についても話を聞かせてくれる? あなたがロースクール(法科大学院)に通い始めたときは大々的に報道されたけど、その後のことを追っているひとは少ない気がする。今はどのあたりまで進んだ?

キム:今はロースクールの2年目で、あと2年残ってる。(後ろの誰かに向かって)ちょっといい? このマニキュア落としてもいい? オレンジすぎる。

Portrait of Kim Kardashian West wearing a necklace in the style of a snake biting itself.
Bodysuit Skims. Skirt BALENCIAGA. Elsa Peretti® Snake necklace in 18k gold and Diamonds by the Yard® earrings in 18k yellow gold TIFFANY & CO.

ジェレミー:いいね。「ロースクールの話もするけど、マニキュアがオレンジすぎる」って。すごくゴージャスだ。

キム:ロースクールは通う期間も長いし、やることも山ほどある。今2年目で、卒業後はもっと人びとの支援に集中できると思う。自分の仕事が変わるわけじゃないけど、もっと支援活動に時間を割けるようになるはず。自分ではどうにもならない立場にある人びとや、どこを頼ったらいいのかわからないひと、助けを得られなくて絶望した人びとのために、私の発言や声を活用したい。自分の手の届く限り人びとの助けになって、状況を改善していきたい。

ジェレミー:こういう活動はずっとやりたかったこと? それとも後から関心を持つようになった? みんなも知っているように、あなたのお父さんはとても有名な弁護士だったから、ずっと心の片隅にあった?

キム:だんだん関心を持つようになった。父さんの仕事は大好きだし、ずっと尊敬してた。でも、もっと積極的に携わるようになったのは何年か後、あの件があってからのことだった。ハリウッドにいると、いつも広報担当が「キャリアのメリットになるから」と何らかの団体に関わるように勧めてくるけど、私はまず自分で確かめたいし、その前に人生経験が必要だった。人生は自分のために自ずと変わっていく。然るべきタイミングでそう気づけた。

ジェレミー:法律の存在や力に気づくきっかけになった〈あの件〉って?

キム:アリス・ジョンソンのこと。彼女は初犯で非暴力的な薬物犯罪だったにもかかわらず、チャールズ・マンソンと同じ判決を受けた。それに衝撃を受けたの。どうしてそんなことになってしまったの、って困惑した。納得できなかったから、この件を解明して、彼女を助けたかった。とにかく、なぜこんなことが起こり得るのかを知りたくて。

ジェレミー:最後に、もうひとりのキムについて訊いてもいいかな……。キム・ジョーンズとFendiとのコラボレーションについて。

キム:私は本当に本当にキム・ジョーンズが大好きなの。彼は最高。地球上でいちばんスイートなひと。このコラボが決まってキムと話し合ったとき、彼はオフィスの女性たちが大事なミーティング中に一斉に静かになって、集中力が散漫になったときのことを話してくれた。彼が「何があったんだ?」って訊くと、「ああ、Skimsの発表があったんです。すみません、何かオーダーしないと」って。でも、彼は何のことかわからなかったらしくて。だからオフィスの女性たちに大量のプロダクトを送って、彼にも実物のファブリックや素材を見てもらった。彼も気に入ってくれて、ぜひコラボしようという話になった。そうやって実現したの。彼に家まで来てもらって、私の昔のFendiのバッグや服を見せたこともあった。すごく楽しかった。

キム:(コラボレーションは)とにかく大変だった。パンデミックのまっただ中で、チームは全員イタリアにいて参加できないなか、フィッティングとかあれこれ進めなきゃいけなくて。結局メキシコで落ち合った。みんながひとつの場所に集まれる国がメキシコしかなかったから。だからメキシコで1日かけて最初のフィッティングをやって、その後ローマで1日かけて最終フィッティングをやった。チームのすばらしい働きのおかげで実現したの。魔法みたいだった。心から大好きで尊敬してる憧れの相手と仕事ができるのは本当に楽しい。夢みたいな時間だった。すごく楽しい経験だったし、いろんなことを学べた。

Kim Kardashian West holds her hips wearing a necklace in the style of a snake biting itself, a black bodysuit and a black pleated skirt.
Bodysuit Skims. Skirt BALENCIAGA. Elsa Peretti® Snake necklace in 18k gold and Diamonds by the Yard® earrings in 18k yellow gold TIFFANY & CO.

ジェレミー:キムは本当に偉大なひとで、一緒にいるとたくさんエネルギーをもらえる。このコラボを知ったときは戦慄したよ。僕は『エミリー、パリへ行く』のシーズン2にゲスト出演して、あるクチュールブランドのデザイナーを演じたんだけど──これはネタバレだけど──最新話には彼の服と一緒にSkimsのハイファッション版みたいなアイテムが登場するんだ。大反響だったよ。あなたとキムのコラボを見たとき、キムは(※『エミリー、パリへ行く』クリエイターの)ダーレン・スターにこのことを話したのかな、って思った。

キム:ああ、ほんとに最高だった。超クールだった。夢が叶った。100万年かかっても実現しないと思ってたバケットリスト(※死ぬまでにしたいこと)がひとつ実現したの。

ジェレミー:最高だね。そろそろ撮影に戻らなきゃいけないと思うけど、これで本当の本当に最後の質問にするよ。マドンナから、ヒドゥンヒルズに引っ越した理由のひとつはあなたとあなたのお母さんだと聞いたんだけど、みんなで一緒に散歩に行ってるそうだね。マドンナとの散歩ってどんな感じ? 彼女は最高だよね。

キム:すごく楽しいひとだし、お互い子どももたくさんいる。彼女は究極のインスピレーション源なの。

ジェレミー:最高の母親でもあるしね。

キム:ほんとに。最高のお母さん。心から子どもたちを愛してる。彼女と会ったり、近くで暮らすのはすごく楽しい。

ジェレミー:いいね。次にヒドゥンヒルズに行くときは、一緒に散歩したり遊びにいけるといいな。

キム:ぜひ行きましょう。

ジェレミー:カレンダーに書いておくよ。バケットリストにも。

キム:私も書いた。

ジェレミー:今回は快く引き受けてくれて、どうもありがとう。

キム:こちらこそありがとう。

Kim Kardashian West on the cover of i-D 366 The Out Of The Blue Issue

Credits


With thanks to Tiffany & Co.

Photography Mario Sorrenti
Fashion Alastair McKimm
Hair Chris Appleton at The Wall Group for Color Wow Hair
Make-up Mario Dedivanovic at Forward Artists 
Photography assistance Kotaro Kawashima and Javier Villegas
Digital technician Chad Meyer
Fashion assistance Madison Matusich, Milton Dixon III, Jermaine Daley and Casey Conrad
Tailor Joel Gomez
Hair assistance Jacqualin Martinez
Make-up assistance Kuma
Production Katie Fash and Layla Néméjanski
Production assistance Steve Sutton and William Cipos
Casting director Samuel Ellis Scheinman for DMCASTING
All jewellery (worn throughout) TIFFANY & CO

Introduction Douglas Greenwood
Interview Jeremy O. Harris

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