Virgil Abloh & Nigo. Photography Nick Haymes

ヴァージル・アブローとNIGO®️が明かすLV²の舞台裏「ストリートウェアの精神をいかに進化させられるか」

Louis Vuittonのメンズアーティスティックディレクター就任以来、初となるコラボレーションで、ヴァージル・アブローは日本のストリートウェアのパイオニアNIGO®️とともに、私たちの予想をはるかに超えたコレクションを生み出した。

by Mahoro Seward; translated by Nozomi Otaki
|
02 July 2020, 10:32am

Virgil Abloh & Nigo. Photography Nick Haymes

ヴァージル・アブローLouis Vuittonでは初となる公式コラボレーションの相手をNIGOに依頼したと発表されたのは、2019年12月のこと。この組み合わせには誰もが納得した。彼らはあらゆる点において現代のメンズウェアを牽引する存在であり、このジャンルの歴史や規範に敬意を払うと同時に、常識にとらわれないヴィジョンを提示してきた。

普段はストリートウェアデザイナーと称されるふたりだが、そんなカテゴライズでは、彼らが長年にわたって重んじてきた精密さやクラフツマンシップが見過ごされてしまう。このふたつは、NIGOの1990代後半から2000年代を象徴するA BATHING APE®のアイテムや、彼の現在のブランドHUMAN MADE®️の核にあるもので、ヴァージルのLouis Vuittonの過去4シーズンに一貫する要素でもある。

コラボレーションのタイトル〈LV²〉はNIGOが提案したもので、「2人の思考によって解釈されたLouis Vuitton」というコンセプトに基づいているという。このLV²で、彼らは誰もが期待していたストリートウェアの予想を裏切ることになる。第一弾アイテムとして発表されたのは、ヴァージルのLouis Vuittonメンズウェアのメインラインと同様、揺るぎないモダンなテーラリングのレディトゥウェアと、細部までこだわり抜かれたデニムウェアだ。

そのいっぽうで、Louis Vuittonを象徴するグラフィックもふんだんに使用されていた。絶妙な遊び心をもって再解釈されたアイコニックなモノグラムやダミエ・パターンは、プリントや刺繍、カットアウトといったさまざまな形で、クラシックなダービーシューズ、ローファー、定番のバッグ、デニムアイテム、タイトなウールスーツにあしらわれている。

メンズウェア業界で最も先見の明に長けたヴァージルとNIGOが、コラボレーションの構想やプロセスにまつわる裏話を、i-Dだけに語ってくれた。

LV² Lookbook

──コラボレーションの話に入る前に、ヴァージル、あなたがNIGOから受けた影響について教えてください。彼の作品に出会ったのはどれくらい前のことですか?

ヴァージル:だいたい15年くらい前かな。A BATHING APE®と出会ったときは度肝を抜かれたよ。NIGOのブランドは、まさに文化的関連性とラグジュアリーの出会いを表す縮図みたいなもの。店舗をデザインしたのはWonderwallで、彼は英国でジェームス・ラヴェルとレコードも出した。アートディレクションは、僕の知り合いのグラフィティアーティストといっしょに手がけた。そういうものがすべて、今のラグジュアリーブランドにも受け継がれている。コラボレーション、上品で洗練された空間、細部へのこだわりなどにね。彼がつくっていたアイテムはすべて日本製で、フランスやイタリア製のものと同じくらい手が込んでいた。衝撃的だったし、僕のデザインに対する姿勢を形づくったともいえる。その影響は、僕の今のデザインスタイルにもよく表れてると思うよ。

──これまでもさまざまなコラボレーションを行なってきましたが、Louis Vuittonでは今回が初めてです。このメゾンのコラボレーションの歴史にどんな風を吹き込みたかったんでしょう?

ヴァージル:僕にとって、今回のコラボのきっかけはタイミングだった。僕はふたつの重要な世代のあいだにいる。NIGOの店を体験したことのない若い世代と、A BATHING APE®の全盛期を知っている世代だ。Louis Vuittonにいる僕がその時代に立ち返り、パリのファッションの最高峰でNIGOのプロジェクトを実現させて、さらにそこに僕の解釈を加えることが重要だと思ったんだ。

LV² Lookbook

──LV²でヴァージルとコラボしたいと思ったきっかけは?

NIGO:Louis Vuittonはずっと大好きなブランドだったし、これからも憧れのブランド。そうあってほしいと思う。以前もLVの仕事をしたことがあるけれど、そのときデザインしたのはサングラスだけだった。今回ヴァージルに何でも好きなことをやってほしい、といわれて、ずっと大好きなブランドだから、二つ返事で引き受けた。ヴァージルは古くからの友人だし、僕のことをよく知ってる。それからCEOのマイケル・バークも昔からの友人だ。僕のことをよく理解してくれているふたりなら、ぜひ一緒にやりたいと思った。

──それぞれの創作プロセスをどのようにまとめていったんですか?

ヴァージル:NIGOと僕に共通するのは、プロセスに対する静かな自信と強い想いだと思う。コレクションの出発点は、NIGOが魅力を感じる英国のダンディなスタイル、すなわちモッズやSavile Rowだった。彼は今もSavile Rowにカスタムオーダーしたスーツを着てるんだ。

僕たちは、これ以上の表現が見つからないんだけど、とにかく単なる〈ストリートウェア〉では終わらないコレクションをつくりたかった。確かに僕たちが2000〜2010年代はじめに業界に入るきっかけになったのはストリートウェアだったけれど、それから僕たち自身も進化してきたから、ストリートウェアのメンタリティの可能性も進化させるべきだと思った。そうやって日本のアイデンティティ、フランスの歴史、米国のヒップホップスタイル、英国の仕立てを融合させ、いかに洗練された実用的なテーラリングをつくるべきか、明確なアイデアを打ち出していった。Louis Vuittonはグローバルな世界的なブランドだから、そうなるのは自然な流れだった。

NIGO:ヴァージルと仕事ができたのはすばらしい体験だったし、学ぶことも多かった。去年の6月から毎月パリでミーティングを行ない、Skypeやメッセージを通して話し合いを重ねていった。

LV² Lookbook

──先ほどモッズの話が出ましたが、ロンドンのスタイルやファッション史におけるモッズの興味深い点は何だと思いますか? モッズカルチャーが現代にも通じる理由は?

NIGO:モッズは、パンツの正確な裁断など、服の細部へのこだわりを見せた最初のユースカルチャーだった。僕にとってのファッションの原点はそこにある。

ヴァージル:NIGOや僕のようなデザイナーにとって、モッズの文化として意義は、そのファッションと同じくらい重要だと思う。どのスタイルも文化的なコミュニティから生まれるもので、文化的コミュニティはそこから派生する服より重要だとも言える。それはヒップホップ、グラフィティ、レイヴカルチャー、スケートボード、パンクにも当てはまると思う。

デザイナーたちは、自らのスタイルを形づくったさまざまな時代を参照する。でも、そこにモッズの時代は含まれなかった。ある意味、今回のプロジェクトは僕の今後のショーのためのリサーチの一貫でもあった。メンズウェアはどうすれば文化的意義をもつテーラリングや洗練されたシルエットに回帰できるのか、って。そのためには、ただ闇雲にテーラリングをやったり、スーツをつくるだけじゃダメだ。ある時代の音楽、ライフスタイル、文化意識に立ち返って初めてデザインできるものだから。

──そんなテーラリングや複雑なパターンメイキングへの強い関心が、このコレクションから伝わってきますが、ヴァージル・アブローとNIGOのコラボと聞いて、テーラリングを期待するひとは少ないと思います。今回のディレクションのインスピレーション源は何だったんでしょうか?

NIGO:大きなインスピレーション源になったのはモッズスタイル。1980年代後半も重要なテーマになった。

ヴァージル:それから、Louis Vuittonが表現豊かなスーツをつくれる数少ない場所だったこと。ここは生粋のイタリアのテーラーじゃなくて、僕のスタジオだから。アクセサリーにも、このメゾンの専門知識を活用したかった。注目してほしいのはシューズだ。テーラリングにも使われる、足にぴったり合うように仕立てられたファブリックを使っている。そういう意味で、僕たちは最高のスタートを切りたかったんだ。フーディやTシャツに関しては、メゾンの技術を最大限活用する必要はなかったんだけどね。

LV² Lookbook

──Louis Vuittonは、LVのモノグラムとダミエ・パターンを幅広く用いていますが、今回メゾンのシンボルともいえるこのふたつには、どのようにアプローチしたんでしょう?

NIGO:Louis Vuittonのパターンはとても完成度が高いので、手を加える部分はほとんどなかったけれど、フォントのデザインやサイズを変えたり、モノグラムと組み合わせることで、アレンジを加えた。

ヴァージル:彼のいうとおりだよ。僕は古典を再解釈して語ることが好きなんだ。自分のデザインセンスを通して既存のものを解釈し、そこにひねりを加える…。それこそがストリートウェア・ムーブメントが伝統的なファッションに提示できるものだと思う。

それから、ほとんどのひとは、Louis Vuittonのダミエ・パターンがモノグラムより先に生まれたということを知らない。このパターンはずっと昔からヴィトンのトランクのシンボルだったんだ。僕たちはそのことを新たな方法で提示し、お客さんなら誰もが知っている常識にしたかった。

──おふたりが再解釈したデザインには遊び心が感じられますね。モノグラムがダミエ・パターンの上で溶けているようなデザインのバッグもあります。そういうエネルギーとより堅実なメゾンのクラフツマンシップへの言及、そのふたつのバランスはどのように取ったんでしょうか?

ヴァージル:僕たち双方が重視したのは、テーラリングを今回のコレクションの〈北極星〉に定めること。それから、NIGOの過去のコレクションや彼の代表作から、象徴的なテーマやディテールを拝借することだった。あのモノグラムの滴り落ちるようなデザインは、彼とファレルがA BATHING APE®時代に立ち上げたブランド、ICE CREAMを表している。ディテールでそれとなくほのめかすことで、今回のコレクションを通してNIGO自身の歴史を新たな文脈で語りたかった。

NIGO:そのふたつを融合させ、混ぜ合わせることが、今回のコレクションの狙いをよく表していると思う。僕とヴァージルが手がけたからこそ、絶妙なバランスを生み出すことができた。

LV² Lookbook

──それはデニムアイテムについても同じですか? 日本のストリートウェアを代表するアイコンとのコラボというだけあって、デニムが大きな存在感を放っていますね。

ヴァージル:まさにそのとおりだよ。NIGOはすばらしいヴィンテージのコレクションを持っていて、それが彼のデザインにも影響を与えてきた。日本人は米国の伝統的なデニムを守ってきたと思う。それを今回のコレクションにも取り入れたかった。

NIGO:デニムジャケットは、いつの時代もワードローブに欠かせないアイテム。シンプルなものが多いけれど、今回はLouis Vuittonのモノグラムとダミエ・パターンをジャケット全体に散りばめたから、コレクションのなかでもかなり目立つアイテムになった。

──Louis Vuittonのメインラインと比較すると、今回のLV²はどのような位置付けになるでしょう?

ヴァージル:メインラインと違って、LV²では2000年代はじめ、つまりストリートウェアの黄金時代のルールを参照したということをはっきりと提示している。Louis Vuittonでの全体的な仕事に関しては、歴史的背景のなかでブラックカルチャーの地位を確固たるものにすることが狙いだから、もっと範囲が広いかな。僕はストリートウェアという言葉が〈黒人によるデザイン〉という意味で使われるのは好きじゃない。これまでも何度も言ってきたけれど、すごく限定的な捉え方だから。だからこそデビューコレクションではそういうメッセージを打ち出したし、これからも続けていきたい。つまり、どうすればギャップを縮め、黒人デザイナーをファッション史におけるデザイナーたちと同様にみなすことができるのか、っていうことだ。

でも、LV²はストリートウェアの裏にある知性を理解するのにうってつけのセーフスペースだし、僕にとってすべての始まりである創始者ともいっしょに仕事をすることができた。NIGOは僕たちにとって、ヨーロッパのデザインの基礎を築いたイヴ・サンローランやカール・ラガーフェルドと同じくらい偉大なファッションデザイナーなんだ。

Louis Vuittonのクリエイションに携わることができてすごく光栄だし、ここでの自分の記録をありったけの敬意を込め、わかりやすい形で空っぽの本棚に並べていきたい。今回のLV²を通して、ファッションの歴史やLouis Vuittonのクラフツマンシップに敬意を払うことができたと思う。僕たちが今もクリエイションを続けているからこそ実現できた、最高のプロジェクトになった。

LV² Lookbook
LV² Lookbook
1593153304664-N40380_PM1_Worn-view
LV² Lookbook
LV² Lookbook
LV² Lookbook
LV² Lookbook
LV² Lookbook
LV² Lookbook
LV² Lookbook

LV² is available to shop here.

Credits


All imagery courtesy of Louis Vuitton

This article originally appeared on i-D UK.

Tagged:
Louis Vuitton
Virgil Abloh
lv
BAPE
nigo