Photography Alexandria Crahan-Conway

「毎日バンドを辞めることを考えてる」Slipknot ジム・ルート interview

リアーナもお気に入りのバンド、Slipknot(スリップノット)のギタリスト、ジム・ルートが語る、UFO、悲しみ、ビリー・アイリッシュ。

by Frankie Dunn; translated by Nozomi Otaki
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04 March 2020, 10:29am

Photography Alexandria Crahan-Conway

1995年、米アイオワ州で結成されたSlipknot(スリップノット)。このアイコニックな9人組メタルバンドは、瞬く間に、周囲に理解されない学校のはみ出し者たちのお気に入りとなった。グラミー受賞歴もある彼らは、単なる感情のはけ口を提供するだけでなく、ひとつの新しいカルチャーを生み出し、世界中から彼らに共感する人びとを集めてコミュニティを築き上げた。

受容、インクルーシビティ、自らのために立ち上がることにフォーカスするSlipknotの魅力は今も色あせず、彼らのファンダムは、最近i-Dの表紙を飾ったリアーナを含め、新たな世代の〈maggot(うじ虫。Slipknotファンの総称)〉を歓迎している。

馴染みのないひとのために説明すると、Slipknotはまさに悪夢の申し子。焼けただれた顔、手術痕のあるピエロ、ペニスのような鼻の男、道化師、歌舞伎風、釘がびっしりと打たれたヘルメット、頭がい骨型のガスマスクなど、さまざまなマスクをかぶったパフォーマンスで知られており、そのマスクは常に進化し続けている。

通算6枚目となる最新スタジオアルバム『We Are Not Your Kind』は、2019年の米国ヒットチャートで首位を獲得。彼らは今、同アルバムをひっさげたワールドツアーの真っ最中で、カオティックなライブを観客に届けている。

四半世紀にもおよぶキャリアを有するバンドなら想像がつくだろうが、メンバーはこれまでに何度も入れ替わってきた。なかには悲しい事情でバンドを去ったメンバーもいるが、核となる数名は変わっていない。見上げるほど背の高いギタリスト、ジム・ルート(かつてバンドメンバーが名前ではなく番号で呼ばれていたときは4番を背負っていた)も、常にバンドと歩みを共にしてきたひとりだ。

ロンドンのO2アリーナでのソールドアウト公演1時間前に、私たちは狭く無機質な楽屋にいるジムを直撃した。インタビューは実にパーソナルな話題にまでおよび、一瞬で終わった。

──こんにちは。今日の気分はどうですか?

ジム・ルート:俺はどちらかというと、気まぐれな人間なんだ。医者にかかったりしたことはないけど、高揚してハイになってるか、落ち込んでるかのどちらか。その中間がない。

──つまり、かなり両極端なタイプということですか?

ジム:そうだと思う。でも、こんなことを20年もやっていれば仕方ない。そうならざるを得ないんだ。ステージに上がって〈お山の大将〉になれば、周りではみんなが叫んで、ギターリフに合わせて歌ってくれる。でもいざステージを降りて楽屋に戻ると、またひとりに戻る。俺たちがやってることは極端だよ。ちゃんと境界線を引くべきなんだろうけど、俺は得意じゃない。

──SLIPKNOTは悩みを抱える多くの十代の若者にとって、大切な存在になりました。あなたにもそういう存在はいましたか?

ジム:「考えが古い、最悪だ」って親に反抗してた時期は、メタルに夢中で、ANTHRAX、MEGADETH、RACER Xとかギター中心のバンドから影響を受けた。まだ若くて不満でいっぱいなときは、とにかくアップテンポで攻撃的で複雑なギタープレイが聴きたくなる。それからデヴィッド・ギルモアやジョン・フルシアンテは、たったひとつの音で、他のギタリストが16個の音で表現する以上のサウンドを奏でていることに気づいた。俺はてんびん座で極度のめんどくさがりだから、ちょっと座ってギターを練習してれば彼らみたいに弾けるようにならないかな、なんて思ってた。でも俺にとっては、メロディとか感情に訴えかけることのほうが大切なんだ。

──そのとおりですね。今48歳ですが、気持ち的には何歳ですか?

ジム:精神的には15か16歳だけど、身体的には70歳かな。依存症回復の理論によれば、依存症患者は、助けの手を差し伸べられてから、依存症になった年齢より、精神的にも情緒的にも成長するようになるらしい。だから17歳でセルフメディケーション(自主服薬)を始めて、32歳までそれに気づかなければ、精神年齢は17歳のままってことだ。俺にとってのツアーもそれと同じ。27歳でツアーを始めたから、今の精神年齢はそれくらいだと思う。でも、そろそろ自分の周りのことと向き合うべきかもな。ずっと家を空けがちだから、家族のことは全部後回しにしてる。恋愛や友達付き合いも犠牲になってるし、なかなか家に帰れないのはキツいよ。2つの異なる人生を生きてるような感じ。

──バンドを辞めて逃げ出して森で暮らしたいと思うこともありますか?

ジム:毎日思ってるよ。

──あなたにとって理想の生活はどんなもの?

ジム:実は最近、ずっと土地を探してるんだ。唯一の問題は、自分が大切にしているものから、これ以上に離れたくないってこと。不安になるよ。今の家の近くに仲の良い友人が何人か住んでるから、彼らを置いていきたくない。家族のことも後回しにしてるから、家に帰ったらひとりで自由気ままに過ごしてる。朝起きて、創作に励んで作品や曲を作ることもあれば、バイクに乗って旅に出たりもする。それかひたすらダラダラして、丸一日XboxかPS4をやってたり。普段はだいたいそんな感じ。ひどい自己嫌悪に陥るけど。しっかりしろよ、昼の2時に起きて朝4時までぶっ続けで『コール・オブ・デューティ』をプレイしてるなんて、俺はいったいどうしたんだ?って。いかにも米国中西部的な罪悪感かな。

──そうかもしれませんね。今、この世界でもっとも偉大なロックスターは誰だと思いますか?

ジム:今? まったく見当もつかないな。インターネットの奥深くに埋もれてるから見つけられないだけで、名前を知らない素晴らしいアーティストもいるんだろうけど。でも、ビリー・アイリッシュはいろんなところで見かける。彼女の曲は聴いたことがないけど、みんなに「きっと気に入るよ」と勧められる。俺はたとえポップスでも、ダークでマイナーで耳障りな音楽が好きなんだ。

──『We Are Not Your Kind』をサウンドトラックにするとしたら、どの映画がいいですか?

ジム:SFが好きだから、『イベント・ホライゾン』か『2001年宇宙の旅』だったら最高だな。

──SLIPKNOTはずっとショッキングなバンドだとされてきました。音楽でもそれ以外でも、今もショッキングな要素はあると思いますか?

ジム:俺が中学生のとき、JANE'S ADDICTIONのアルバム『Nothing's Shocking』がリリースされた。(ヴォーカルのペリーは)テレビがいろんなイメージを作り上げ、今やショッキングなものは何もなくなった、と歌っていた。それからインターネットが生まれ、テレビとともに発展していった結果、今の世界は西部開拓時代みたいになった。たとえば人の首が切り落とされるのだって見ることができる。ネット空間のワームホールに潜っていけば、そういうリアルな映像が出てくる。だが俺にとっては、目に見えないもののほうがショッキングだ。斧やナイフなんかより、超自然的で現実離れしたもののほうがずっと恐ろしい。人の皮を被った身長270センチの男が、チェーンソーを持って追いかけてきたらどうなるかは想像がつくだろう。でも、真夜中に目覚めると自分の上によくわからない巨大な透明の物体が浮かんでたら…そっちのほうがよっぽど怖い。

──確かにそうですね。超自然的な体験をしたことはありますか?

ジム:ないけど、砂漠をドライブしてるときいつもUFOを探すんだ。宇宙には地球以上ではないにしても、同じくらい進歩している星はきっとあるはずだ。その星の生物にとって、俺たちはクソを投げつけ合ってるサルに過ぎないのかもしれない。

──人の皮のマスクといえば、マスクを被っているときと被っていないとき、どちらの方が自信を持てますか?

ジム:100%被ってるときだね。マスクを被って、完全にリミッターの外れた8人の男たちといっしょにいれば、それなりに自信を持てる。マスクを被ってなければできないことがあるんだ。マスクは盾やバリアみたいなもの。これはキャラクターで、俺自身じゃない、って思える。俺たちにとっては毎日がハロウィンだよ。普通のひとなら行くのをためらってしまうようなファンタジーの世界で生きてる。マスクが俺を鎖から解き放ってくれるんだ。

──ここで重要な質問です。スリップノット(引き結び)はできますか?

ジム:うーん、ゆるくてすぐ解けるような結び方しかできないな。

──どんな夢を見ますか?

ジム:俺は今……最悪の別れってわけじゃないけど、有害な恋愛関係から抜け出そうとしてるところなんだ。相手とは連絡を絶ってる。今の関係はとにかく不健全なんだ。相手に何か悪いことが起きてほしいなんて思ったりはしない。ただ、立ち直って自分自身に満足してほしいだけ。そのせいか、最近は亡くなったひとたちが出てくる奇妙な夢をよく見る。(2010年に逝去したSLIPKNOTの元ベーシスト/オリジナルメンバーの)ポールもよく出てくるんだ。

──それはつらいですね。

ジム:ちょっと変な夢なんだ。俺はポールの死を充分に悲しめていなかったのかも。それを心の奥底に封じ込めてしまったのかもしれない。でも夢の中では、彼は生き返っていた。死んでしまったはずの彼が生きていて、未亡人になった奥さんといっしょに青いスポーツカーに乗っていた。見慣れた晩年のポールだったけど、ゾンビみたいに蘇った姿なんだ。この夢を見たらいろんな想いが湧き上がってきて、これは今の俺の状況を表してるんじゃないかと思った。(前述の連絡を絶っている)相手には、ちょっとナルシスト的な、ソシオパスに近い傾向がある。夢はそれを暗示してるのかもしれない……。確かに夢に出てきたのはポールだけど、実はポールの夢じゃなかったんだ。

──亡くなってしまった大切なひとの夢を見るのは複雑ですよね。慰めにもなれば、心をかき乱されることもある。夢って不思議ですね。

ジム:夢は、俺たちが潜在意識のなかで生きている別の人生なのかもしれない。つまり、もうひとつの現実だ。俺たちは本当に眠っているだけなのか、夢は俺たちが忘れてしまったことを表してるんじゃないか、と思ったりもする。たとえば前世とか。『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』のセリフにもあったけど、時間というのはひとつの円であり、俺たちはずっと同じことを繰り返してきて、これからも繰り返し続ける。あと何回繰り返せばいい? このインタビューだって前にやったし、この先も永遠に繰り返し続けるんだ。

3月20、21日、幕張メッセにてSLIPKNOT主催のフェス〈Knotfest〉が開催予定。さらに、4日間の海上フェス〈Knotfest At Sea〉の開催も発表。

This article originally appeared on i-D UK.

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