A-COLD-WALL*デザイナーが助成金を、20歳の新人デザイナーに全額寄付

「最初は苦労したけれど、今の僕はもう違います。もっとポジティブで利他的な未来を目指したい」

by Steve Salter; translated by Nozomi Otaki
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02 July 2019, 5:18am

「取り扱い店が4件から165件に増えるなど、ここ5年でA-COLD-WALL*は急成長してきました」とサミュエル・ロスは語る。「でも、このブランドをさらに開かれたものにして、自分たちの成功を足がかりに、次の世代に勇気を与えたい」。どんよりとした月曜の朝、外は土砂降りの雨で、ショー自体の演出にも水が使われていたが、会場となったロンドン南東部にある広大な工業用倉庫には、楽観的でポジティブな雰囲気が満ち溢れていた。

アートプロジェクトとして始まったこのブランドは、今や英国ファッション協会による支援プログラム〈NEWGEN〉に選ばれ、数百万ポンドの売り上げを誇る気鋭のファッションハウスへと成長した。クリエイティブディレクターのサミュエル・ロスが描く、分野を超越した、ストーリー性に富んだヴィジョンは、批評家と増え続けるファンを魅了してやまない。

6月11日には、サミュエルが英国ファッション協会と『GQ』誌によるメンズウェア・デザイナー基金〈BFC/GQ Designer Menswear Fund〉を獲得したことが発表された。まさに同じ日、発表の直前に、彼は2020年春夏コレクションを通してA-COLD-WALL*の進化を次の段階へと押し進め、「ソーシャルデザインを通して利他的な社会を」というメッセージを掲げた。

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ノーサンプトンで育ち、現在ロンドンを拠点に活動する彼は、ファッション界で注目され始めた2010年代初めから、ファッションの可能性に挑む新世代のデザイナーのひとりとして、排他的なラグジュアリーファッションの構造の解体を試みてきた。そして今、彼は若干28歳にして、かつてのファッション業界における堅固な壁を打ち壊すだけでなく、彼に続く次の世代を鼓舞することを目標に定めた。

「僕は裕福とはいえない家庭で育ち、異なる視点をもってこの業界に入りました(サミュエルはグラフィックデザインを学び、最初のレーベル〈2wnt4〉を立ち上げる前はプロダクトデザインの道に進んだ)。手が届きやすいこと、そして利他的であることは、このブランドがずっと大切にしてきたテーマです」と彼はショーの前に述べた。

〈Material Study for Social Architecture(社会を構成する物質の研究)〉と題された2020年春夏コレクションで、ブランドを象徴するスカルプチュアルなスポーツウェアは、さらに洗練されたアイテムへと進化した。サミュエルはショーに学生たちを招待し、ファンたちにも参加する機会を与えた。

さらに彼は、6月初旬にデビューコレクションを発表したばかりの20歳のデザイナーで、今回彼のコラボレーターとなったイーストウッド・ダンソ(Eastwood Danso)に、NEWGENの助成金を全額寄付した。

「今、僕がこの場で話していることが、当たり前になってほしい」とサミュエルは訴える。「自分たちのプラットフォームや影響力を活かして、この業界に還元していく。そういうサイクルが必要です」

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ファッションの未来を形づくる支援制度を立ち上げるとともに、サミュエルは、粘土、鉛、水、ガラスという4つの基礎的な無機物に焦点を当て、人間と物質、感情の関係性を探った。

「この4つの物質は、僕たちの社会の基礎を成すもの。ショーを通して、この社会の構造をひも解きたかった」と彼は説明する。「これは未来に希望を与えるとともに、過去を称えるショーでもあるんです」

今シーズンのコレクションは、ロンドンファッションウィーク・メンズで発表されたなかでは、もっとも洗練され、高尚で、落ち着いていただけでなく、もっとも理解しやすく、個人的なものでもあった。

過去のコレクションに登場した日常の防護服のようなデザインは、より人間工学的な、身体の延長線上にあるものへと変化した。モデルが顔につけていた鉛のパーツについて訊かれると、サミュエルは、英国では数少ない黒人ステンドグラス職人である父へのオマージュだ、と答えた。

「僕は子どもの頃から、父が作業場で型をとり、鉛を扱うのをみてきました。僕たちと物質の関係性、そして物質が人間の社会的な営みにいかに浸透し、どのような影響を与えているかを探りたかったんです」

これからも彼のコレクションは、私たちと物質との関係性を問い続け、サミュエル自身は、ファッション業界に人びととの関係を見つめ直すよう訴え続ける。A-COLD-WALL*は今、先陣を切って、より包括的な未来へと歩み出したのだ。

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Credits


Photography @mitchell_sams

This article originally appeared on i-D UK.

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