Image courtesy Bunny Jr.

世界中から感謝のメッセージが届く、カセット専門レーベル〈バニー・ジュニア〉

「私は、自分や友だちのためにつくっているんだと思う」

by Emily Kirkpatrick; translated by Aya Takatsu
|
jun 4 2018, 12:07pm

Image courtesy Bunny Jr.

新世紀に突入して、もうすぐ20年が経とうとしている。90年代や00年代初頭にあったものに対する私たちの情熱は日々、増すばかり。マトリックス風の小さなサングラスは、目に留まるものすべてに載っているし、スパイス・ガールズとBuffaloスニーカーも復活を遂げ、『クルーレス』は小学生女子のサマーファッションの参考書(バイブル)であり続けているようだ。しかしもうひとつ、90年代生まれの人の青春ノスタルジアに火をつけるアイテムが残っている。そう、今までは。

デジタルダウンロードが隆盛しているなか、音楽テクノロジーを20年前に戻してしまったのが、ミックステープレーベル〈バニー・ジュニア〉の立役者であるジェゼニア・ロメロ(Jezenia Romero)だ。ラジオ局〈アート・ラボエ・コネクション〉にインスパイアされたジェゼニアは、人々が時代遅れのメディアであるカセットテープに向ける興味を再燃させる方法を見つけ出した。

アーティストや友人たち(その中にはマルーン・ワールドや、彼女が今月そのジョイントレーベルCOMESESSOのランウェイを歩いたLAのファッションブランドCOMETEESやNO SESSOのクリエイターたちもいる)とコラボすることで、ジェゼニアはアルゴリズムを捨て、Spotifyからキュレーションされたプレイリストを消し去ったのだ。その代わりにフィジカルなプロダクトを取り上げ、愛情や意志、個性を注ぎながら手作りし、そこかしこにいる音楽ファンの手にそれを戻したのである。

テープの一つひとつが、その選曲者の人となりを映しだし、この異分野間の交流からしか生まれ得ないユニークなアイデアをリスナーに届けている。フレッシュな音楽を聴くのに、もちろんこの方法がいちばん楽だとは言えないけど、と彼女は認める。これはおもしろ半分でもあるのだから。

Image courtesy Bunny Jr.

——〈バニー・ジュニア〉はどうやって始まったのですか?

〈バニー・ジュニア〉が始まったのは、伝説の〈アート・ラボエ・コネクション〉(ロサンゼルスのオールディーズとリクエストのラジオ局)が終わってしまったから。私はオールディーズで育ったから、この局は私の人生の大きな部分を占めてる。LAカルチャー、特にドライブのカルチャーね。それが終わってしまったとき、私の人生におけるこの部分をアーカイブして、ドキュメントしたいと思ったの。それで最初のテープをつくったというわけ。そのテープは『Hot 92.3 Old School』といって、私の友だちや局のファンからのリクエストをもとに、〈アート・ラボエ〉が自分の局でかけそうな音楽をミックスしたもの。それからもう何本かテープをつくっていたら、たまたまレーベルができちゃって。

Image courtesy Bunny Jr.

——ミックステープをつくることの何が好きなのですか?

ただ、ものをカスタムしたりするのが好きなの。聴覚的、視覚的なものをつくるのも好き。たくさん方法があるうち、テープはほとんど底辺にあるもの。それでも私はそれが好き。ほかの音楽の配信サービスはもっと成功しているし、聴きやすいし、便利だと思うけど。何かすごく有利な点があるとは思っていないの。PCの使い方がよくわからないから、テープにこだわってるだけ。正直、PCの使い方がわかったら、映画を撮っていたかもしれない。

Image courtesy Bunny Jr.

——どうやってミックステープをつくっているのか教えてください。

普通は、すごく流行っている曲から始めるの。それからその局に合うものを考えたり、単純に自分が聴きたいものを入れていくこともある。すべてをプレイリストに入れたら、携帯電話からテープのプレーヤーにダビングしてマスターをつくる。次に自分で何かを描いたり、近くのコピー機があるところに行って、気に入ったものができるまでいろいろやってみるの。最後は、マスターからほしい本数分コピーする。橋の下のマクドナルドの前にいたホームレスから買った、信頼の置けるカセット・プレーヤーを使ってね!

——アートワークはどうやって考えるのですか?

自分で描くときもあるし、プリント中にひらめくこともある。アートワークの多くは、ミックステープに入っている音楽のスタイルを基にしてる。『Hot 92.3 Old School』のアートワークは、すごくそのまま。私のブロマイドなの。ブロマイドを撮るってすごくクラシックで、車カルチャーやオールディーズ、それからLAカルチャーとも合っているし。絵を描くときはぜんぶ同じ筆を使う。

Image courtesy Bunny Jr.
Image courtesy Bunny Jr.

——テープの評判はどうですか?

みんなびっくりしてるみたい! メディアは大騒ぎだし! 世界中からレスポンスがきて……怖いくらい! つまりね、すっごく話題になってるってわけではないけど、お客さんからは心のこもった感謝のメッセージが届いている。

Image courtesy Bunny Jr.

——一緒に仕事をするアーティストはどうやって決めるのですか?

ほとんどが私の友だちか、音楽のセンスやアートワークが私と合う人たち。例えば、マルーン・ワールドという名前で写真を撮っているカップルとか。彼らのことを個人的に知っているわけじゃないけど、写真が大好きだったから、うちのレーベルからテープを出さないかって誘ったの。二人がどんな音楽を聴くかは全然しらなかったけど、写真をひとつもらいたくて。彼らはミックスとアートワークを送ってくれたんだけど、もうすっかり夢中。曲を聴いてみたら、人としてもその仕事についても、彼らへの感情が深まった。おもしろい実験だった。

Image courtesy Bunny Jr.

——良いミックステープをつくるための鍵はなんだと思いますか?

はっきりとしたことは言えない。良いミックステープは人によって違うから。選曲が個人的すぎると、それらの曲に同じような思い入れがないかぎり、頭を素通りしちゃうしね。私は、自分や友だちのためにつくっているんだと思う。すべての要素を、魅力を感じられるまでいじくりまわすの。そこには秘訣なんてないんじゃないかな。ただ、自分が置いたものを誰かが拾い上げるかにかかってる。

Image courtesy Bunny Jr.

——将来〈バニー・ジュニア〉はどうなると思いますか?

新しい音楽を始めたいと思ってる。次のプロジェクトは、妹のジャジー・ロメロのテープをこのレーベルからリリースすること。彼女はシンガーなの。それが将来ね。

This article originally appeared on i-D US.