『FRUiTS』休刊が意味するものとは?

「オシャレな子が撮れなくなった」との理由で、次号の発売で月刊発行を終了すると発表した伝説のスナップ雑誌『FRUiTS』。日本のストリート・ファッションに何が起こっているのか?

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feb 8 2017, 7:50am

日本のティーンのストリート・スタイルを記録し続け、約20年間で233号を発行した『FRUiTS』が、月刊での発行を終了すると発表した。ここ数年議論されている"紙媒体の終焉"がこの動きの背景にあることは想像に難くないが、『FRUiTS』の創刊者でメイン・カメラマンでもあった青木正一が休刊の理由として語った内容がなんといっても驚きだった。Fashionsnapとのインタビューで同氏はその理由を「オシャレな子が撮れなくなった」と語っている。

1996年に創刊された『FRUiTS』は、カラフルに着飾った原宿のユースを支持し、新たなストリート・トレンドや真に興味深い服装の人々をドキュメントした信頼度の高いオーセンティックな記録として機能した。それは、ファッションウィークに群がる人々のスタイルとは一線を画する世界だった。「甘さ」「勇敢さ」「狂乱」の様相をあわせもつ日本のファッションに惹かれる国内外の読者たちに評価された『FRUiTS』。カルト的雑誌として世界中の読者たちがソーシャル・メディアで休刊を惜しむ声が聞かれた一方で、同じ人物を繰り返し掲載したことが休刊へと同誌を追い込んだ要因だったとする声も聞かれた。日本のカルチャー系サイトSpoon & Tamagoに掲載された『FRUiTS』休刊関連記事では、コメント欄にアラン・ヤマモトが「『FRUiTS』はただの人気コンテストになってしまった」と書き、また「東京のストリートには今でも素晴らしいファッションに溢れている」とも訴えている。東京ファッションダイアリーのミーシャ・ジャネットは、今回の件について「すでに衰退しつつある日本のストリート・シーンに致死的打撃」と書き、東京で受け継がれてきたスタイルを保護し、育てていくために一層の策が必要だと訴えている。

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『FRUiTS』のような媒体の休刊は、日本のストリート・スタイルを長きにわたり追ってきたファンにとっては受けとめがたい現実だが、多くの意味で不可避だったと言うべきだろう。原宿が作り出したユニークな"クール(かっこよさ)"を讃えたい気持ちはある。しかし、その黄金期がすでに過去のものであることは否定できない。"海外の雑誌がこぞって記録したがるアンダーグラウンド・ストリート・スタイル発祥の地"として長きにわたり存在感を放ってきた原宿だが、過度のメディア露出とエリアの都市開発によって、人々を惹きつける力を失っていった。原宿ファッションを生み、そのるつぼとなった歩行者天国が90年代後期に廃止された(その後も原宿キッズは近隣エリアで生き続けたとはいえ)ことで、状況は変わった。否が応でも目を惹く服装やカワイイ系デコラのファッションなど、『FRUiTS』が追い続けたティーンの姿を見ようと今の東京へやって来ても、そこに彼らの姿はない。

原宿が土産屋ばかりの観光スポットへと変貌していったさまは、カムデンの変化と共通するものがある。グウェン・ステファニーが2000年代初頭に繰り返し歌い讃えた原宿トレンドセッターの姿は、もうそこにない。代わりに、ロリータ・ファッションに身を包んだ白人たちがストリートに点在している——それが2017年の現実だ。竹下通り近辺には、今でもDogや6%DokiDokiといったショップが『FRUiTS』系キッズのニーズに応えるべく存続してはいるが、その数は少なく、原宿は全般的に"あの"日本らしさを自ら放棄してしまったように見える。観光によって今でも賑わっている原宿だが、観光客が後を絶えないのも、原宿ファッションが大いにメディア露出された結果だ。

さらに、服に関して「量より質」を大切にするとして知られてきた日本の消費者も、ファスト・ファッションに冒され始めている。ユニクロは、先四半期だけでも前期比で45%の利益増を計上しているのだ。東京で見られるストリート・ファッションが以前よりもローファイに傾倒しており、またノームコアが依然として人気であるのも確かだ。この10年だけを見ても、Forever 21やH&Mといったヨーロッパ発のファスト・ファッション企業の安価商品がどこでも手に入るようになり、東京人たちも以前のように高価なドメスティック・ブランドにお金を使わなくなって、個性的なスタイルは衰退していった。

それでも日本は他のファッション都市のようにスタイルが絶滅の危機となるような状況には直面していない。東京には独特のスタイルを貫く人々がいるからだ。過去には、ストリート・スナップに取り上げてもらおうとキッズが表参道を歩き、そこでもし『FRUiTS』のような雑誌に取り上げてもらえれば、それが何よりの栄誉だと考えられた時代があった。そんなキッズは今どこにいるのだろうか?昨今は、そのようなセルフ・プロモーションはオンライン上で行なわれるのが通例で、次世代のユースたちはInstagramでイキイキとした姿を見せている。

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『FRUiTS』が追い、スナップに捉えてきたファッション・キッズたちと、彼らのオーセンティックなスタイルは、もはやひとつのエリアに集まって生息しているわけではないのだ。よって、特定のエリアに行けば見つけられるという存在ではなくなってしまった。今でも原宿で働くスタイリッシュ・キッズの多くは、今では国際的なファン・ベースを持っており、ジェンダレス系を筆頭とする最近のトレンドを率いながら、SNS上でその人気と存在感を誇っている。オンラインでのセルフ・プロモーションが主流となったことで、ストリート・スタイルを追う写真家たちは窮地に立たされている。しかし、日本のキッズにとってはそれがグローバル・レベルで各々のスタイルをプロモートする手段になっている。多くの面で『FRUiTS』の衰退は不可避だったのだ。

ソーシャル・メディア以外を見てみると、紙媒体での展開こそないものの、droptokyoTokyoFashion.comといったサイトが今でも日本のストリート・スタイルを追い、日本のユース独特のスタイルをオーセンティックにドキュメントし続けている。『FRUiTS』が去ることで生まれる穴は、実のところ悲しみに暮れるファンたちが言うほどには大きくないのかもしれない。もちろん、『FRUiTS』の休刊は悼むべきことではあるが、それは"ひとつのエリアの衰退"という避けられない事象として解釈されるべきで、日本からスタイルが失われてしまう前兆では決してない。

現在の原宿は、かつてそうだったようなストリート・スタイルのメッカではない。そして、そうある必要もないのではないだろうか。『FRUiTS』休刊を嘆くファンたちにとっては冷たい現実となるかもしれないが、それでもインスピレーショナルなスタイルをもつ日本人は今もなお大勢いるし、彼らを見たければオンラインで簡単に見つけられる。そして、キッズたちもSNSを利用することで、どんな紙媒体よりも広いオーディエンスにアピールできるようになったのだ。『FRUiTS』に関しては、原宿を"ファッション・マップ上で重要なエリア"にまで押し上げた絶対的な存在として、そしてファッションの歴史においてもっとも興味深いストリート・スタイルのブームを見せてくれた雑誌として、今後も語り継がれていくだろう。

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Credits


Text Ashley Clarke
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.