Alle Fotos: Ward Roberts.

アーバン空間の魔法とロマンス

コンクリートとガラスから感情とコトバを引き出す写真家、ワード・ロバーツ。

by Wendy Syfret
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28 September 2016, 9:08am

Alle Fotos: Ward Roberts.

ワード・ロバーツ(Ward Roberts)と電話をしていても、彼の訛りがどこ由来の訛りなのかを聞き分けるのは難しい。香港とオーストラリアを行き来しながら育ち、現在はニューヨークを拠点に、作品同様、世界を飛び回っている。そう考えると、コンクリートに囲まれた風景を旅して半生を過ごした人間がそのような風景にロマンスを見出すのは当然のことなのかもしれない。誰もいない公共スペースを写したロバーツの写真には、そこにあるビルや金属、ガラスに隠れているメッセージを深く理解した彼の視線そのものが反映されている。一見、単なる都会的風景の不規則性にしか見えない光景に、パターンやカラー、可愛らしさまでもを見出す——ワード・ロバーツは、そんな稀有な写真家だ。

あなたの写真を見ていて驚かされるのは、マジカルな都会的空間を見つけることができるその才能です。
傲慢にも、奇をてらっているようにも受け取られたくないんだけれど、僕はそれを衝動的に感じるんです。共鳴するスペースに近づくと、体が反応するんですね。ただ「撮らなきゃ」と感じるような、そういう繋がり方ができるんです。そのエネルギーを掴んで、そのまま作品に写し取ります。

そういった空間を感知する嗅覚が備わっているのかもしれませんね。誰もいない、ひらけた空間というのは、平和とも寂しいとも解釈できると思いますが、あなたはそういった空間に何を読み取りますか?
ある種の寂しさがある気がしますね。でもそれがなぜなのかは分かりません。反対に、大勢のひとがいるにもかかわらず不気味に感じる場所もあります。ゴーストタウンのように、その街でサッカーの試合が行われていても不気味さが漂うような場所もありますよね。

なぜ街に惹かれ続けるのでしょうか?
街を解釈して作品に落とし込くのが楽しいんです。最近2ヶ月間、香港に滞在していたんですが、香港という街への見方がガラッと変わりました。そこに暮らす人々がどうその空間と関係し合っているか——例えば、なぜ外壁がとてもカラフルなビルがあるのか、なぜ僕の解釈が他の人たちとは違うのか、といったことが理解できたんです。成長するにつれ、僕の見方が変わっていくのはとても面白いです。

建築というものは、世代を超えて人々の対話を形成するものですよね。
そうなんです。香港やニューヨーク、ヨーロッパの一部では、都市に脈々と流れるテーマのようなものを感じます。反対に、テーマが欠けているメルボルンでは戸惑ってしまう。メルボルンでは、すべてのものにアイデンティティがあるんです。それぞれが自立しているんですね。メルボルンの建築にはどうにもコネクトできませんでした。ビルなど、街の何か小さな一部分だけを切り取って、「街のこの部分だけにコネクトしよう」と考えるほかなかったんです。

都市空間について話してきましたが、あなたの写真を見ていると、街にある自然への視線を感じます。街の中の自然と人工物の間にある押し引きを、あなたご自身も感じますか?
もちろんです。街によって自然と人工物の解釈の仕方が違うというのはとても興味深いことです。ニューヨークには真ん中にセントラルパークがあって、道には並木が植えられています。でも、30-40年前のブルックリンやブロンクス、クイーンズを写した写真を見てみると、ほとんど木はない。どこか物騒な雰囲気が漂っているんです。
木があることで、人はよりくつろげるものなんでしょうね。自然の一部である感覚が得られるというかね。香港は、とにかく"街"という強い印象が残る空間ですが、実は豊かな自然に囲まれた都市なんですよ。意外ですよね。ひとは自然の近くにいると落ち着くものなんだと思います。

香港やオーストラリアでは自然が偶発的なものとして存在するのに対し、ニューヨークの自然は計画的に秩序立って配されているという違いもありますね。
几帳面なまでの秩序は、それが自然であろうと都市であろうと、どこか心地の悪さを人の心に残すものです。「完璧は偉大さの敵」だと僕は常々考えています。完璧になった瞬間、秩序立てられてしまった途端、人間はその対象と関係できなくなるんだと思います。私たち人間は間違いをおかす生き物ですから。人間関係であろうが仕事環境であろうが、間違いをおかすということは、生きているということの大きな一部なのです。人間臭さが感じられないほど手入れが行き届いたものに、人はコネクトできないんです。

先ほど話していた不気味さもまさにそれですね。完全な空間は、私たちの心に落ち着かない感覚を芽生えさせる、と。
その通りです。

Credits


Text Wendy Syfret
Photography Ward Roberts
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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