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門脇麦が燃やす静かなる闘志

CMからドラマに映画と引っ張りだこの、門脇麦。青く粛々と燃える炎のように、キュートな女優魂を燃やす彼女が、私生活と仕事について語る。

by Takako Sunaga
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12 July 2016, 6:46am

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90年代前半生まれは、個性と実力を兼ね備えた女優が大豊作の世代。なかでも門脇麦は〈性欲の強い女子大生〉を体当たりで演じた『愛の渦』(2014)以降、本格派として映画やドラマに引く手あまたの状態が続いている。にもかかわらず彼女は「30代、40代になったときに、やりたい仕事をやりたい人とできる場所にいられるように、今やるべきことをしっかりやるしかないと」と修行モードまっただ中だ。

「『愛の渦』の頃はとにかく不安で自信がなくて。監督や作品のために頑張ることが目標でした。でも今思うと、逃げ道を作っていたなって。今は『私はこの仕事が好きだからやっている』と、胸を張って言えるところに行かなければならないなと思っています。全責任を自分で負わなくちゃいけないからしんどいですけど、仕事への姿勢も変わったと思います」

この春、私生活において大きな環境の変化があった。それは、念願のひとり暮らしをスタートさせたこと。朝、ベランダに出て飲む目覚めのコーヒーで「やるぞ!」とスイッチを入れる。「23年間実家暮らしだったのでたまに寂しくなりますが、仕事が休みの1人の時間は自分を見つめ直したり、自分のために使う時間は増えました。そういう日は1日中家で有意義に過ごすようにしています」。目の前の仕事はもちろん、日常の生活や感情の変化にもきちんと向き合う理由は、役者という仕事を「恥ずかしい仕事」と捉えているからだ。「どんな役でも、自分のなかにあるものが嫌でも晒されてしまうから恥ずかしい。芝居の技術的な部分は、経験を重ねれば身についてくる気もしていて。なので結局のところ、人間力でしかないんだろうなと思います。だから、色んな経験をして、知らない世界を見て、日常生活を大切にしたい。あとは、いい作品を作りたい、いい映画に参加したいというピュアな気持ちを常に根底に持ち続けていたいです」

彼女の魅力を例えるならば、"当時は特別仲が良かったわけではないのに、教室の席に座って文庫本を静かに読んでいる姿がなぜか鮮明に浮かぶ昔のクラスメイト"のような存在感。同じ教室にいながら、自分とは違うものに気づき、自分よりも深く物事を考えていたんだろうなと思わせる知性と深みがあるのは、彼女の人間力の表れなのだろう。だから、新作『オオカミ少女と黒王子』や朝ドラ「まれ」で演じた"ヒロインの親友ポジション"を、やけに記憶に残るキャラクターとして存在させることができるのだ。

一方で、2本の主演映画『太陽』と『二重生活』が、この春立て続けに公開される。どちらも門脇麦の主戦場といえる、作家性の高い単館系のシリアスな作品だ。「日本ではたくさんの映画が作られていますが、世の中に届ききらないし、見る人が限定されている。それがすごくもったいないと思っていて。普段単館系の映画館に足を運ばない方が、例えばCMなどで私のことを知ってくださって、出演作を観るために映画館に足を運んでくれる、架け橋のような存在になりたいなと思っています。具体的にどうすればいいのかはまだ分かりませんが、これからも向き合い続けなければいけない課題だと思います」。

この世界に入った理由は「映画が好きだから」。役者になってからも、映画へのピュアな愛情は変わらないどころか増すばかり。「昔はハリウッド映画のような王道の作品に興味がなかったのですが、最近よく観るようになりました。『マッド・マックス』も『スター・ウォーズ』もすごく面白い! ど真ん中なのにちゃんと質が高い、究極のエンターテインメント。そのバランス感覚ってすごいですよね。あと、グザヴィエ・ドランを最初に知ったときはびっくりしました。ほぼ同世代の人が、これまでにはなかった様な作品を作っている事に刺激を受けましたし、可能性みたいなものを見た気がしました」。この発言から読み取れるのは、彼女が現在の日本のエンターテインメントのあり方に、100%満足はしていないということ。

「ゆとり世代とくくられますが、自分の同世代の役者は面白いことをやりたいというエネルギーがふつふつと沸いている人が多いと思っています。テレビ離れと言われている現状も、分かりやすい予定調和なものが増えている今の状況も、私はもどかしく感じていて。この世代のエネルギーや可能性をもっと見てみたいし、私は、『この世代で変えていける』と思っています」。高い志を胸に秘め、門脇麦は静かに日常を戦っている。

Credits


Text Takako Sunaga
Photography Kenshu Shintsubo
Styling Ayaka Endo
Hair and make-up Naoki Ishikawa
Styling assistance Kanako Sugiura

Tagged:
actress
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