ロンドンからベルリンへ:The KVB インタビュー

ベルリンを拠点に活躍し、ヨーロッパをはじめじわじわと世界へ名を広げながらも、いまだベールに包まれた孤高の男女デュオThe KVB。最新ビデオ「White Walls (Berlin Version)」について、日本初となるインタビューを敢行。 

|
jul 4 2017, 8:50am

シューゲイザーとダークウェイブをまとい、ギターとシンセサウンドをかき鳴らすロンドン発の男女デュオ The KVB(ザ・ケーヴィービー)。2010年、ニコラス・ウッド(Nicholas Wood)のベッドルーム・ソロ・プロジェクトとしてスタート、2011年よりキャット・デイ(Kat Day)が加わり、現在に至る。そのサウンドは、80年代のイギリス・ポストパンク、シューゲイザー、サイケデリック、はたまた70年代のドイツ・クラウトロックを彷彿とさせ、聴覚を逆撫でされるような妙に心地よい感覚におちいるだろう。

ベルリンの自宅兼スタジオの扉を開くと、日当たりが良く眩しいほど真っ白な部屋からモノトーンスタイルの2人が出迎えてくれた。The KVBの目であるキャット、耳であるニコラス。心地よいサウンドバランスを保ち、シンクロし続ける、そんな彼らにThe KVBのストーリー、そしてベルリンでの生活について訊いた。

出身地と子どもの頃のことについて教えてください。
キャット: ヨークシャーの小さな田舎町出身。当時は地元が退屈で好きじゃなかったわ(笑)。もちろんライブハウスもないから、週末はよくリーズに逃げてたの。後に大学進学と共にロンドンへ移るんだけど、地元を離れることが嬉しくてしかたがなかった。今は好きだけどね、美しいところよ。小さい頃はピアノ、ヴァイオリンを習っていた。アートには昔から興味があって、18歳からカメラ片手に映像を撮り始めたわ。
ニコラス: 僕はサウサンプトンの港町出身。小さい頃はスケートボードとサッカーをしていたよ。兄の影響で、ニルヴァーナやオアシスなど90年代ロックから音楽を聴き始めた。13歳からギターを始めたけど、実は途中でやめちゃって。16歳くらいからまたギターに戻り、そこから本格的に音楽一本だね。

2人の出会いから、バンド結成までの経緯は?
キャット: 7年前にプロモーターの友達に誘われて、リーズへライブを見に行ったの。そこで偶然とあるバンドのギターをしていたのがニコラス。ライブ後に話したのが2人の出会いね。
ニコラス: 今はもうないけど、そのライブではポストパンクバンドSuicide Partyのギターをしていたんだ。当時は3~4バンドくらい掛け持ちしてて。2010年からソロ・プロジェクトとしてThe KVBをスタートしたよ。
キャット: 彼の作る音楽が好きだったし、大学でビデオアートを専攻していたので、ヴィジュアルとしてニックとコラボレーションすることは自然な流れだった。それからニックに勧められてThe KVBでもキーボードを担当することになるの。最初はステージに立つなんて想像もつかなかったけど、今では好き。

ニコラスが音楽、ヴィジュアルはキャットが担当していますよね? 音楽とヴィジュアルがとてもシンクロしていると思います。
キャット: そう。特に触覚的なものに興味があるから、物質としてのデータ、ゲームデザインプログラムなどを使って、視覚的に刺激を与えるものや目を奪われるものを生み出してる。いつもミュージックビデオは音楽の後に作っているんだけど、次は音楽とビデオを同時進行で作ってみたい。このお互いのバランスをキープしているの。
ニコラス: それぞれ担当はあるけど、お互いに意見を言って、異なるスタイルをミックスしているんだ。特にラストアルバム、そして今制作中の次のアルバムもね。

今年 519日に発売された新作EPFixation / White Walls』について教えてください。
ニコラス: 自宅スタジオでレコーディングした新曲2曲目に加えて、「White Walls」リミックス3曲で構成されているんだ。過去作と比べて、最もベルリン色の強い作品になっているよ。
キャット: ジャケットの写真は、ツアー時にシンガポールで撮影した建物。日本では原宿の<BIG LOVE>でも販売されているわ。数日前にネットで見つけたの。

The KVB - White Walls (Berlin Version)

3年前に南ロンドンのキャンバーウェル・グリーンからベルリンのアルト・トレップトアーへ移住していますが、なぜベルリンに拠点を移したのですか?
キャット: ロンドンのキャンバーウェル時代は狭いベッドルームに2人で住んでて、生活も音楽制作も同じ部屋。家賃は上がるし、どこかへ移ることを考えていたの。
ニック: 変化がほしかったし、ベルリンにはたくさんクリエイターの友達がいたので、迷うことはなかったよ。それに2013年にはThe Brian Jonestown MassacreのフロントマンAntonのスタジオで2週間レコーディング、彼のレーベルからリリースした。そのとき、2人でベルリン移住を決めたんだ。
キャット: ベルリンには時間もスペースもある。まさにベストな制作環境で、求めていた自由を手に入れたの。一生同じ場所に住むつもりはないけど、今はここにいたいわ。

3年間ベルリンに住んでみて思う、ベルリンの良い点悪い点を教えてください。
キャット: よく言えば「自由」、悪く言えば「自由すぎる」。みんな最初の年は毎日パーティへ行ったりして遊ぶと思うけど、気をつけないとダメになってしまう。
ニコラス: 本当にバー、クラブ、パーティと誘惑が多いのが危険だよ。あと、ほとんどの人が毎日パーティをしたり、みんな同じことをしているように見えるね。
キャット: 良い点で言えば、やっぱりスペース。ロンドン時代には自分たちのスペースを持つことなんて考えられなかった。ロンドンでこれくらいのスペースを持てたら最高ね。誘惑の中、自分たちを管理するのも正直大変よ(笑)
ニコラス: でも僕たちはたくさんやらなければならない作業や仕事がある。忙しいし、それが好きだからキープできてるかな。

実際に住んでみた感じた、ベルリンとロンドンの違いを教えてください。
キャット: ベルリンにはシーンがないみたい。ロンドンだとシーンがあって、バンドも友達もよくつるんでいるけど、ベルリンにはあまりない。シーンから影響を受けずに、きっと自分たちの制作、世界に集中してるのだと思う。ライブの数もロンドンは毎晩いろんなところでたくさんライブがあるけど、ベルリンは少ない。でも私たちにとってはロンドン時代とはあまり変わらないの。特にこれといったジャンルに所属していないから、様々なジャンルのシーンや友達とつながってるから。イベントもそう。モスクワのテクノフェスに出たり、パリのサイケフェスに出たり、もちろん観客もミックスになる。異なるジャンルのあいだにいるのが心地いいの。あとは建物。ロンドンだと、古いヴィクトリアン調の家に5人で住むのは当たり前。シェアをして住むということは、お互いのタイムスケジュールを気にしなければいけない。その点、ベルリンにはフラットがたくさんあって、一人ひとりスペースを確保できる。総括すると、音楽シーンはロンドンで、生活・制作環境はベルリンが理想ね。

2人にとってベルリンはユートピア(楽園)ですか?
キャット: ユートピアはディストピアよね(笑)。
ニコラス: 以前はユートピアだったと思う。ただ人が増えることで、家賃も物価も上がって、街は変わっていくから。いまはまだクールな街だけどね。

ベルリンでオススメのライブハウス、バーを教えてください。
キャット: ライブハウスは<Urban Spree>、<Festsaal Kreuzberg>かな。
ニコラス: <Lido>はいい音響設備と巨大スクリーンがあるナイスな箱だね。
キャット: オススメのバーは<Das Gift>。オーナーは<Mogwai>のBarry、典型的なグラスウィージャン(スコットランドのグラスゴーの人たち)で面白い人よ。

2人のインスピレーション源は?
キャット: たくさん旅行へ行くんだけど、それぞれの土地で出会うさまざまな音楽、アート、食べ物、建物すべてがインスピレーションの源ね。南アメリカ、南アフリカ、アジア、いろんなところへ行ったわ。これから休暇でスペインへ行くの。
ニコラス: いつも旅先で新しいミュージシャンをリサーチ、発見しているんだ。

暖かいところが好きなんですね。サウンド的に冷たくて冬が好きかと思っていましたが、夏が好きなのですか?
キャット&ニコラス: 夏が好き!
キャット: ベルリンの冬は最悪だわ。イギリスの冬もひどいと思っていたけど、ベルリンは寒いし、暗いし、ダントツでワースト。この冬も暖かい国に避難する予定なの。
ニコラス: 特に10~3月はきついね。ベルリンの冬はとにかく長いんだ。

The KVB - In Deep

ドイツ人フォトグラファーKlara Johanna Michelとの撮影はどうでしたか?

キャット: 彼女の作品はユニークで、作品から感じたロマンティックかつ繊細な点が好きだったから、喜んで一緒に撮影したの。
ニコラス: 撮影で着用したベルリンベースブランド"VERENA SCHEPPERHEYN"は、後日彼女のスタジオを訪ねて、シャツ、パンツ、ジャケットを購入したよ。

最後に、2017年の展望は?
キャット: 今年の夏にはニューアルバムのレコーディングを終えて、EU/UKツアー、秋にはアジア・ツアー。そのときぜひ日本も訪れたい。次回作はよりポピュラーなテイストになるかもしれない。多分、もっと夏の感じかな(笑)。
ニコラス: 僕のソロ・プロジェクトSaccadesのデビューアルバム『Saccades』が7月28日にリリースされるんだ。The KVBの作品と比べてよりサマーテイストな作品だよ。

@thekvb

Credits


Photography Klara Johanna Michel
Text and Styling Yukiko Yamane
Hair and Make-up Sabina Pinsone