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「絵で醜悪な自分を撃ち殺す」:Aruta Soup インタビュー

『i-D Japan no.3』に掲載されたクリエイティブ・ユースたち。そのひとり、ポップアーティストとして活動するAruta Soupの表現へと駆り立てられる熱源とは。

by Hiroyoshi Tomite
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06 July 2017, 10:55am

アーティストとして活動するに至った原体験はありますか?
幼少の頃、田舎で暮らしていたのですが、すごく辺鄙な場所だから「ドラゴンボール」など日本のアニメをみることができなかったんですよね。だけどケーブルテレビだけはなぜか映りがよくて、「シンプソンズ」や「バイカーマイス」「タートルズ」といった海外のアニメばかりを観ていました。その頃見たアニメのキャラクターは自分のアイデンティティの一部になっていると思います。また、自分がアフリカやヨーロッパ、アジアを旅していたときに感じたのは、言語が分からなくても、世界的に有名なキャラクターは共通言語として通じるということ。僕がキャラクターをサンプリングしたり、ペーストしたりする作業はその面白さからきているといえます。時期によって手法も国も移り変わっているけど、全部原体験の延長線上だと感じています。

影響を受けたカルチャーはありますか?
17歳の頃から大学卒業した後しばらくロンドンに住んでいました。むこうでは絵描きより、波調の合うミュージシャンとよくつるんでいました。毎週末のように行った倉庫や工場、廃屋などで開催されるスクワット・パーティ(不法占拠パーティ)などで見た展示物イベント、そこにいる人たちの様子から影響を受けていますね。パトカーがまっぷたつに割れている展示物があったり、50代くらいのジャンキーがサンタの格好をして寝ている姿であったり、ダブルデッカーの中でカエルになっちゃった人とか、今でも脳裏に焼き付いています。ロンドンのアートカレッジに通うまで、フラフラとしていた時期があったのですが、今描いている薄気味悪くてコントラストの強い絵の印象は、その頃見たカルチャーや出会った人たちから強く影響を受けているので、いろんなものが血肉になっているのだなと思います。

ターコイズと水色の間のような色合いの作品が印象的です。
これは僕の祖母が亡くなったときに、どういうわけか僕の頭の中に駆け巡っていたイメージに近い色です。具体化するために何度も調合を重ねて見つけました。「死」を連想させるポップだけど、薄気味悪い色合いですね。

強い感情と色彩が結びついているのはなぜですか? その他、作品に反映されている感情と色はありますか?
色は感覚的な部分が大きいのだけど、基本的に彩度の強い色と淡い色の組み合わせ、シャープな線を使った絵を描いていて。感覚的なものだけではなくて、ロジカルな図形で考えることも多い。例えば、極端なメッセージを絵で表現するときはパステルな色彩の隣に赤を置いてみるとか、静寂を表現するんだったら間は大きくとるとか。色そのものっていうより、組み合わせたときに人の感情を動かせたらいいなって。

3つ目のキャラクターやケガをしたキャラクター、こめかみに銃口を突きつけているキャラクターなど、不穏な作品が多いですがこれは何がモチーフなのでしょうか。
キャラクターを通じて、いろんなバリエーションの自画像、風刺画を描いているといえばいいのでしょうか。自分のことはわかっているようでわからないじゃないですか。だから平面に置き換えて、その上でサンプリング、カット&ペーストしている感覚が強いです。自殺している様子が描かれたキャラクターは、人には見せられないダメな部分や醜悪な自分を撃ち殺したいなと思って描きました。一方でそういう醜悪な自分を撃ち殺す行為は、人前に晒している表層の自分自身と表裏一体だった部分も殺してしまうリスクがあるかもしれないという意味もあります。テーマは主観的なんですが、誰しもが感じる普遍性があることなのではないかなと思っています。

これからどんな風に表現を続けていきたいですか?
「アートで世界を変えたい」と思う人もいるでしょうけど、僕はアートで世界が変わると思っていません。ただ、表現することは時代や社会に対してのひとつの強力な武器だと捉えています。そして、日本社会で絵を描いてご飯を食べている人間のことは知られていない。むしろ黙殺される傾向にあると思うので、こういう絵描きもいるということを知ってもらえたらいいですね。日本人はほとんど皆カタく生きている人たちばかりなので、「あ、こんないい加減な生き方をしてもいいんだ」と思ってもらえたら、それが一番いいかもしれない(笑)。

Credits


Portrait Photography Ai Ezaki
Text Hiroyoshi Tomite