“サイズなんて関係ない”

モデルでありシンガーでもあるLGBTQ界の女王ベスが、自身の最新プラスサイズ・コレクション、そしてカウンターカルチャーについて語る。

by Hanna Hanra
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29 April 2016, 10:48am

パンクロックのスターであり、LGBTQ(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender, Queer:性的少数者の総称)にルーツをもつフェミニスト、モデル、ミューズ、シンガー、ソングライター、編み物好き、そしてカウンターカルチャーの女王と、ジャンルを超えて多彩な才能を発揮しているベス・ディトー(Beth Ditto)。そんな彼女は自身のアパレル「The Beth Dittoコレクション」を発表し、またひとつ新たな称号を得ることとなった。倫理にかなった方法で作られた生地を使い、国内での製造にこだわったコレクションは、ベスのような体型でファッションから見放されてきた女性たちに向けられたものだ。彼女のキャリアは、音楽から始まった。ローファイなパンクにディスコやヒップホップの要素を取り入れて一世を風靡したバンド、ゴシップで彼女はボーカルだった。その後、ファッションアイコンとなったベスはJean-Paul GaultierやMarc Jacobsのランウェイを歩き、雑誌『LOVE』では表紙を飾った(服は着ていないが、それもファッションだ)。また、コラボレートをしたコスメブランドMACでは彼女の別注ラインも発売されている。アメリカ南部の、MTVの放送配信が2年で打ち切られた小さな町に育った幼少期には想像もつかない未来だ。その後、フェミニズムとパンク思想が結びついて生まれたRiot Grrrl(ライオット・ガール)ムーブメントを知ったベスは、そのメッカであるワシントン州オリンピアへと移り住み、1999年、スリーター・キニーとの共演を機に音楽のキャリアをスタートさせた。そこに至るまでのできごとすべてに、私たちは感謝すべきだ。なぜなら、今、世界が彼女を必要としているのだから。

自身のコレクションを今リリースに至った経緯を教えてください。
自分で何かをやりたいとずっと考えてきたの。すべて私が決められて、いちから構築していくようなものをね。私もマネージャーもお金を出し合って、色んなところからお金を借りて、洋服作りの世界に飛び込んでみたの! エヴァンスとは2本のカプセルコレクションをやる前から一緒に仕事をしてきた。どれも素晴らしい経験だったわ。でも、倫理の面では疑問が残ったし、私への負担はとても大きかった。それは今でも変わらない。だから、このコレクションを思いついたとき、やるならば最善を尽くさなきゃいけないと心に決めたの。倫理的にも、素材の質やデザインの面でも、それからビッグサイズであるという面でも、ベストを目指さなきゃってね。

このような活動をすると多くの人々との繋がりが生まれますよね。そんな人々からソーシャルメディアを通してメッセージをもらったりすることはありますか? インパクトを与えていると思う瞬間などはありますか?
メッセージはたくさん届くわ。中身のある意見や助けになる情報にはきちんと耳を傾けたいと思っている。聞きたくないような批判であってもね。フィードバックは大事よ。オーディエンスがどんなに盛り上がっているかが分かるだけじゃない。自分が大きなコミュニティの一部になっていることを教えてくれるのよ。インターネットがない時代には繋がることすらできなかったコミュニティだけど、びっくりするぐらいみんな協力的よ。

ロンドンでローンチしたのはなぜですか?
そう、ロンドンには昔からとても強い繋がりを感じるのよ。この街は言い表せないぐらいの喜びに溢れてる。それに、私を理解してもらえているって感じるの。

コレクションはどのようにデザインしたのでしょうか? 簡単でしたか?
デザインを描いたり、それを形にしていく作業は簡単だった。難しかったのはビジネスの面。解放されて今は天国にいる気分よ。

最近、気に入っているファッションアイテムは?
ラバーソールと、Christiesのウールハットね。あと、デニムジャケットも気に入っていて、どこにでも着て出かけているほどよ。Targetで買ったの。びっくりするくらい安いのに、すごくフィットするの。フリースのタイツはこの冬大活躍したわ。ここ4ヶ月は今挙げたアイテムばかり着てたかも。

コレクションを製作する際、自分が持っている服からインスピレーションを得ましたか?
どんなものを見てもインスピレーションは感じるわ。妻のクリスティンは「あなたにとっては何でも可愛いんじゃないの!」っていつも言ってる。たしかにそうなの。だからいつでも世界は美しく見えるわ。なんでも決めつけるような見方は好きじゃない。"正しい"文脈のなかで見れば、私なんて矛盾だらけだもの。チャリティショップや古着屋、生地屋を見るのは好きよ。

バンド時代、あなたが撮影用の服を自分で作ったというのは有名な話です。お金がないからこそ工夫していたということですが、今のあなたの生き方に影響していると思いますか?
自分が辿ってきた道について思いを馳せない日はないわ。初心を忘れないでいるからこそ、いまでも自分が進むべき方向性がわかるの。前に進み続けること以外、とくに計画があるわけじゃないけどね。ハウストレーラー、竜巻、故郷の小さな街、了見の狭いアメリカという国−−そういう過去が私にとって最大のモチベーションなの。自分の過去も身体も、私はできるかぎり受け入れているわ。他の人たちとの違いを受け入れることで、初めて私たちは自分自身の世界を作ることができる。大切なことはすべてそこから生まれるの。クリエイティビティ、知恵、アート、ユーモアのセンス、怒り、活力。そういったものを自分のうちに認めて、それを育み、肯定すると、そこにムーブメントが生まれるの。

今でもサブカルチャーのコミュニティの中心人物であると感じますか? それともメインストリームへ踏み込みだしていると思いますか?
間違いなく、サブカルチャーの一端だと思う。私は平凡だから、サブカルチャーでそこまで受け入れてもらえてるのが不思議なんだけど。メインストリームには何度も足を突っ込んでいるけれど、あそこはいまだに資本主義的で男性主導の世界。苦手な駆け引きばっかり。ラッキーだなって思うわ。挑戦するのも好きだし、みんなが経験できるわけじゃないメインストリームとサブカルチャーの行き来を、こうしてさせてもらえているんだから。南部生まれの魚座だから、とても外向的なの。それが功を奏してるのね。

カウンターカルチャーが今も存在するということは、あなたにとってどんな重要性をもつのでしょうか?
この散々な世界でカウンターカルチャーだけが、ヒューマニティを保ち続けているの。アンダーグラウンドこそが、この世の中のすべてを形作っている。そして、それは変わり者たちが受け入れられる場所でもあるわ。不器用な人、誤解されている人、外道を進む人、夢見る人、先進的なひと。いわゆるノーマルな世界は、そのうちカウンターカルチャーにすり寄ってきて、その要素を取り入れようとする。でもカウンターカルチャーはその頃にはもう何百回も変化を経てるの。ポップカルチャーを形成するものはすべてとてもパワフルなのよ。

プラスサイズの人々に対する社会のメンタリティに変化は感じますか?
もちろん。太った人たちが自分の体型に対して抱くイメージに変化がでてきているんだと思う。そしてそれこそが、世界が目覚めるための第一歩なんだと思うの。いまInstagramにハマっているんだけど、太った人たちが健康的に普通の生活を送っているのを見ると、それこそが、これまで「彼らは怠惰で自己嫌悪でいっぱいで、不健康で社会不適合者で、セックスとは無縁で悲しい人種だ」っていうレッテルを貼ってきた世界に向けた、最高の復讐になると思うの。90キロ以上も体重があるひとがヨガを教えたり、パーソナルトレーナーをつけて運動をしてたり、自分の洋服を作ったり、アイデアや経験をシェアしている。自分を愛し、健康な生活を送るためにね。インターネットはすごいわ。そこでは私たち自身がファッション誌やライフスタイル誌になっているんだから。気づいてもらえるのを待っているんじゃなく、自分たちで行動を起こして、自分たちで繋がりを作って、自分たちの世界を作ることができる。どうやってここまでムーブメントに関わるようになったのかは分からないけど、これだけは言える。私以前にも多くの素晴らしい人々がいたし、今もいる、そしてこれからも私と同じ体験をしてきた、素晴らしい人々がどんどん出てくるわ。偶然生まれたキャリアだったけど、活動を始めたばかりの頃はとても孤独だった。それが今では、自分だけじゃないって実感できる。私たちは太っているかもしれないけれど、私たちがこれから切り拓こうとしている世界は大きい。どれだけスペースがあっても足りないぐらいの大きさよ。

Credits


Photography Clare Shilland
Styling Bojana Kozarevic
Text Hanna Hanra
Hair Lyndell Mansfield at CLM Hair & Make-up using Pureology
Make-up Andrew Gallimore at CLM Hair & Make-up using NARS Cosmentics
Nail technician Sophy Robson at Streeters
Photography assistance Rory Cole
Styling assistance Ryan Peterson
Hair assistance Benjamin David
Make-up assistance Ana Fry
Location Recession Studios
Beth wears all clothing The Beth Ditto Collection. Earrings Versace. 
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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