ヴァレリー・フィリップスが女の子を撮り続けるワケ

初の公式写真集『ANOTHER GIRL ANOTHER PLANET』をリリースした、写真家ヴァレリー・フィリップスの素顔に迫る。

by Minako Shimatani
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25 October 2016, 3:35am

21世紀ガーリーフォトの旗手として知られる写真家ヴァレリー・フィリップスが手がける写真集『ANOTHER GIRL ANOTHER PLANET』が日本で先行発売された。ヴァレリー自身が1年かけてセレクトしたという、これまでの作品を集めた初の公式作品集だ。PJハーヴェイやサラ・カミングスなどのIt Girlらも登場し、ガーリーな世界観を堪能できる1冊となっている。来日中のヴァレリーにこの写真集にまつわる秘話や、女の子を撮り続ける理由を聞いた。

『ANOTHER GIRL ANOTHER PLANET』の女の子たちについて教えてください。
今まで仕事してきたなかで一番好きな写真を集めたの。だからとってもスペシャルなものよ。どの写真もハッピーでポジティブ、そして1枚1枚に思い出が詰まっているわ。今までは1冊につき、1人の女の子にフィーチャーしたものだったから、フォーカスする部分もとてもニッチで、その女の子の世界観に執着したものだった。だけど、今回の写真集は色んな女の子の生活を少しずつ描いたわ。有名な子からそうでない子、モデルから女優、飛行機で偶然出会った子やコーヒーショップで声を掛けた子まで、様々よ。

『ANOTHER GIRL ANOTHER PLANET』から、お気に入りの1枚を教えてください。
一番良い写真というわけではないのだけど、私の人生を変えてくれた、モニカを撮影したものよ。モニカが歯医者に行った後の1枚なんだけど、彼女はこの子供っぽい雰囲気が好きではなくって、この写真を写真集に載せるといったらとても怒っていたわ(笑)! モニカは私が初めて出した写真集のモデルで、彼女と出会った日に、私の運命が変わったの。出会いは、1999年頃。ちょうど写真集を作りたいと考えていたときで、姉が開いたハロウィンパーティに参加していたの。ふと窓の外を見た瞬間に、私の目に彼女が飛び込んできた。ハロウィンパレードに参加していた彼女がね。もう、稲妻に打たれたような衝撃だった。急いで階段を下りて、パレードのなかの彼女を探したの、それがこのモニカよ。

モニカの魅力とは何だったんですか?
彼女には「何か」があったの。ただ可愛いということではなくて、彼女の顔、表情、目の動き……その「何か」に完全に恋したの。

PJハーヴェイを撮っていますが、彼女を撮ろうと思ったきっかけは? 彼女との撮影はどうでしたか?
PJハーヴェイは私が世界中で好きなミュージシャンの1人なの。もしかしたら、一番好きかも。キャリアをスタートしたときは、音楽シーンを撮影することが多くて、そこで彼女に出会ったの。美しくって静か、だけど騒々しくて激しい、他の人とは違うどこか奇妙な魅力にハマったわ。 彼女のいいところは、彼女自身が好きな作品を作る人と一緒に仕事をしていること。だから、全力で撮影に臨んでくれるの。この本に載っているものはLAで撮影したもので、彼女とした撮影で最も好きな1枚よ。

今回もサラ・カミングが登場していますね。彼女を撮り続けていてなにか変化はありましたか?
私の大好きなサラ! 結婚して(笑)!!! まだ出会って2、3年かな? その出会いもまたクレイジーなんだけど、友達が彼女のInstagramを見せてくれたの。「OMG! 彼女を撮影したい! 今どこに住んでいるの?」って、彼女とスカイプをしたわ。そして、すぐにLAからにロンドンに来てもらったの。でも、ロンドンの空港の入国審査で8、9時間足止めされて。だから、初めて顔を合わせたとき、彼女も私も泣いていて、ハグして、慰めあって……その瞬間強い絆が生まれたの。とても腹立たしい出来事だったけど、この絆を生んだところは良かったと思うわ。でも、彼女は一晩しかロンドンに泊まる許可が降りなくって、翌日の午前中にまた空港に彼女を戻さなくてはいけなくなったの。一晩のロンドンだから、なんでも好きなことをしようって提案したんだけど、彼女は寝ずに写真を撮ろうって言ってくれたの。私もびっくりしたわ。そうやって1晩で1冊の本を完成させたの。それから、LAやニューヨーク、東京で一緒に撮影をしたわ。これからもきっと彼女との撮影を続けていくと思う。

『ANOTHER GIRL ANOTHER PLANET』のスタート地点を東京に選んだ理由とは?
初めて、日本語版での出版が決まったからよ! だから、とても楽しみなの。東京は自分にとって大切な場所、そして世界中のどこよりも好きな街。日本人はフォトグラフィーや写真集、ZINEカルチャーに敏感に反応をしてくれる人が多い気がする。特に若い子たちはすごく熱心で熱狂的だと思うわ。

日本のどこが一番好き?
とてもマジカルでミステリアスな感じがするところ。ニューヨークで育っている私は、心地よさも感じるわ。いつも忙しく、深夜に街を歩くとクレイジーなことに出会えるのではないか……って思わせてくれる。すごく自分にとって馴染みのある感覚でありながらすごくミステリアスでもあるの。

日本の女の子をどう思う?
とにかくアメイジング! 日本人はすごくユニークなスタイルを持っている。そこがとても好き。インスピレーションを得られるし、見ているだけで楽しいわ。日本人は、この写真集にも登場しているけど、もっと撮っていきたい。でも、実際には、私が女の子を選ぶ基準は国籍とは関係ないんだけどね。コネクションを感じられるか、同じスピリットを持っているか、またその人が自分の世界観をどのように体現していて、どういうことを表現したいのか、という部分に一番の魅力を感じるから。

女の子を撮り続ける理由とは?
とても難しい質問ね。女の子たちからマジカルなスピリットを感じるからかしら。私の写真にはどこか自伝的なところがあるように、同じ女性として彼女たちと同じ経験をしながら撮影している……その感覚が好き。男の子に関しては女の子に感じるようなコネクションが少し薄く感じられて、そこまで感情移入ができないのかもしれない。女の子の方がより直球で、人と関わることを恐れず、その自由も楽しんでいるような感じがするの。
だから、フォトグラファーという職業を通して、その人の世界に入り込んで、その人のことを知ることができる。そしてその人と一緒にアート作品を作り上げることで絆ができるの。そのコネクションがたまらなく好きだから、とても恵まれていると思う。

今撮影したい人物はいますか?
マイリー・サイラス、エル・ファニング、カーラ・デルヴィーニュも撮影してみたい。普段モデルを撮影したいと思わない私にしては珍しいチョイスだけど、彼女には何かスペシャルなものを感じる。何か大きなプロジェクトを一緒にしてみたいの。何かみんなに共通する点があるはずだけど、それが何なのか、わからないわ。それぞれユニークで、すごく興味をそそられる女の子たちね。

今後のプロジェクトについて教えてください。
いくつかのZINEのプロジェクトをやっているわ。今ロンドンで撮影しているスコットランドの子をフォーカスしたZINEが次に出るプロジェクトかしら。今作成している写真集は、より自伝的なもので、私の世界観をコラージュしたもの。 今はまだ家の床に散らばっている状態だけどね(笑)。

Photo by Sara Cummings

「このポートレイトはLAにいるサラ・カミングスに撮ってもらったわ。ハリウッド・ブールヴァードの道端にある宇宙飛行士の英雄たちへの賛辞が書かれたタイルの上に座っているところよ」ヴァレリー・フィリップス

Credits


Text Minako Shimatani