ショー会場の外にある、もうひとつのランウェイ

街、通行人、パパラッチ、ファッショニスタ、そしてスターたち……。会場外で行われるランウェイを写真に収める、イタリア人フォトグラファーにインタビューを行った。

by Felix Petty
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13 June 2016, 5:40am

ファッションショー会場の外は、ランウェイ以上にエキサイティングかもしれない。ファッション業界のスターたちに群がるカメラマンは、まさにクジャクとその尻尾のよう。カメラのフラッシュが飛び交う中、会場に入ろうと躍起になっている人や、誰かの目に留まるために奇をてらったファッションに身を包む人など、それは非日常的でシュールな光景だ。

こうした場外の状況をよく知る者がいる。長年にわたり、ショー会場をドキュメントし続けてきたイタリア人フォトグラファー、ピエルフランチェスコ・チェラーダ(Pierfrancesco Celada)だ。チェラーダは、自分がまるでちっぽけな存在に思えるような大都市に潜む孤独に焦点を当て、東京や上海、香港、ソウルなどを撮影してきた。しかし、プロジェクトの合間に故郷ミラノへと戻ったチェラーダは、ファッションウィーク真っ只中の熱狂に出くわし、思わずレンズを向けた。門外漢の彼の目を通してみたファッション・サーカスは、嘘がなく、面白く、そして非現実的だ。

最初にショー会場人だかりを見たのは偶然だったのでしょうか? そして、どのように感じましたか?
プロジェクトを始める前、ファッションについてほとんど知らなかったんだ。それほど興味もなかったし、トレンドを追ったこともなかった。このシリーズを始めたのは単に好奇心からで、ファションウィークが街やその住人にどう影響をおよぼすかを知りたかっただけなんだ。ファッションの世界を知らないことは僕の強みだと思うよ。ルールも影響力を持つ人物も歴史も知らない。だからこそ、先入観なく新鮮な目でファッション界のシステムを分析できるんだ。

このシリーズを撮影し始めたのはいつですか?
ファッションウィークに出会ったのは3年前。大都市の生活をドキュメントするプロジェクトをずっと続けていたんだけど、少し休みが取りたくなってね。そこで、故郷ミラノでできるこのプロジェクトを始めたんだ。それから、ヨーロッパ各地で開催されるトップブランドのファッションショーに出かけていっては、外で起こっていることをドキュメントしているよ。

ご自身のアプローチを、"部外者の視点"だと考えていますか? それが作品に見られるユーモアを生んでいるのでしょうか? ファッション業界に関係している人には捉えられない、奇妙でシュールな瞬間が多く捉えられているように思います。
ショー会場の外で起こることを撮り始めた頃は、そこで何が起こっているのかを知らずに撮っていたんだ。眼の前で起こっている状況にただ反応しようとしただけ。街とファッショニスタ、カメラマン、パパラッチ、そして通行人の間で起こる交流や矛盾を捉えたいと思ったんだ。あれから数年経って、僕の視点も少し変化したかもしれない。あの頃より、ブランドやファッション界のルールを知っているからね。だけど、今でも自分を部外者だと考えているし、ファッション業界の人たちには決して見ることができないもの、彼らが見て欲しくないと思っているものを見たいと思っているよ。

その場にいる他のカメラマンたちはどのような人たちなのでしょう? 彼らと交友を深めることはありますか? そして彼らは自分たちが写真に撮られることをどのように思っているのでしょう?
会場の外にいるカメラマンたちこそが、ショーの"ビフォー・アフター"を最も如実に表す存在だよ。多くの場合、彼らはユニットとしてみんなで動いて、一緒に写真を撮ったりするんだ。この数年で、彼らと知り合い、そのうちの数人とは友達にもなった。他のカメラマンと口論になったりしたこともあるけど、たいてい僕は透明人間みたいなものだね。彼らを撮っていて大きな問題になったことはないよ。僕だって彼らの写真に写り込んでいるはずだしね。

カメラマンたちが写真におさえようと躍起になるストリートのスターやファッション業界の人々をどう思いましたか? あなたもそういった人々を何人か写真に収めていますが。
重要人物の顔を覚えるまで数シーズンかかったぐらいだからね。未だに彼らの存在感に対する感度が低いみたい。彼らが着ているものにも興味がわかないし。僕は、全体の躍動感とか表現、動き、そこに生まれる交流、それから矛盾みたいなものに惹かれるんだ。

シリーズの中で気に入っている作品はありますか?
ファッションの世界で認められている人と、そうでない人の間にある明らかなギャップをおさえた写真が好きだね。それから、複数人が写っている写真——撮りたいものを撮ろうと躍起になったり、人の注目を浴びようと必死だったり、ただファッション界の仲間に入ろうとしていたりしている人々のね。

ショー会場の外で写真を撮ることで、ファッション業界について学べたことはありますか?
顔やファッションスタイル、力関係が分かるようにはなってきたね。ブランドのことも少しは分かってきたけど、未だに多くのブランドは覚えられない。だけど、数シーズンはこのプロジェクトで写真を撮り続けられるぐらいの好奇心は残っているよ。時代にそぐわないファッションウィークのあり方が社会的にも問われてきているから、これからが楽しみだね。

Credits


Text Felix Petty
Photography Pierfrancesco Celada
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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