きわどい写真でフェミニズム論を展開するインスタ〈Look at This Pussy〉

アカウント開設者エヴァ・シーラヴが、陰部を礼賛する人気インスタ、そしてそこから派生したお悩み相談コーナーを語る。

by Alexandra Weiss; translated by Ai Nakayama
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31 October 2018, 10:40am

Q:アクアソックス、チューリップ、スライスハムの共通点は?
A:写真によってはヴァギナに見えて〈@look_at_this_pusssy〉に掲載されていること。

このInstagramとアドバイスコラムを通して、書き下ろしの文章とヴァギナのイメージを収集する〈Look At This Pussy〉は、フェミニズムに基づく文筆・キュレーションプロジェクトだ。2014年、親友同士であったエヴァ・シーラヴとチェルシー・ジョーンズがスタートしたこのプロジェクトは、生活のなかで見つけた、女性の身体、特にヴァギナと類似するモノの画像を収集している。

「私たちが女性のセクシュアリティや魅力を考えるとき、その対象は主に胸やお尻です」とアカウントの運営者、28歳のシーラヴは指摘する。「でも私たちの〈Look At This Pussy〉は『ほら、これが誰も見たがらないモノだよ!』って叫ぶんです。おもしろいし、ラディカルでしょう?」

彼女のいうとおりだ。特にこのトランプ時代においては。寄せられた画像やシーラヴ本人が撮影した写真を通して、Look At This Pussyは女性のセクシュアリティを取り戻すだけでなく、再定義しようとしている。ヴァギナにフォーカスしたこのプロジェクトには批判もあるが、シーラヴにとってヴァギナは、〈女性とは何か〉という問いに対するどんな答えよりも強力な、女性性のシンボルだ。お悩み相談などのコンテンツやグッズ販売(予定)を拡張していくことで、ロサンゼルスを拠点として活動するライター/キュレーターである彼女は、ポジティブなかたちでヴァギナが再注目されるよう願っている。

「ヴァギナのついた身体で暮らすって、簡単じゃありません」とシーラヴ。「〈女性であること〉が何を意味していようと、女性であることってハッピーなんだよ、って伝えたいんです」。Instagramに生息するアンチについて、そして弱さ、脆さの重要性をシーラヴが説く。

──Look At This Pussyをスタートした経緯を教えてください。
親友といっしょに立ち上げました。ふたりともまだ20代そこそこで、ロサンゼルスに住んでて、独身のときです。女友達がもはや家族みたいになって、ひっきりなしに連絡取りまくる、20代の関係の深さってあの年代特有だと思うんですけど、私たちも朝起きてから仕事が終わるまでずっとテキストを送り合ってました。それがいつからか、ヴァギナに似てるモノの写真を送るようになったんです。きっかけは確か、私が当時、大嫌いだった仕事を終え、オフィスを出て家に帰っているときに花をみつけて、その写真を撮って友人に送ったことでした。私は美術史を学び、彼女はアート業界で働いていたから、女性や女性の身体のイメージについて、お互いに関心は深かったんです。それに、いわゆるジェンダー論にも興味があった。そうやって、ヴァギナに似てるモノのイメージをテキストで送り合うっていう、すばらしくユーモアのあるやりとりが始まりました。

──プライベートなテキストのやりとりを、Instagramという公の場に移したのはいつですか? その目的は何だったんですか?
「インターネット上のあらゆるイメージは、何らかのかたちでポルノとつながっている」。これ、いつもスーザン・ソンタグの言葉だって勘違いしちゃうんですが、彼女の言葉ではないんですよね。いずれにせよ、インターネットにめちゃくちゃ詳しい誰かの言葉です。私はその言葉が、Instagramとか、あるいは実際のポルノグラフィではどうなのか興味があるんです。女性の身体のイメージといえば、きわどいところまで、でも全部は見せない、っていうストリップ的な画像をよく目にしますよね。性欲をかきたてるような。でもそういう画像って大体男性がつくって、男性が拡散してるんです。それがヴァギナの画像の場合、画像自体に「これがヴァギナだぜ!」みたいな、反抗的な精神が宿っています。

──確かにそうですね。男性が女性をセクシャライズ(性的な対象とする)するさい、ヴァギナをどうこうするってことはあまりない。男性、そして多くの女性にとっても、ヴァギナはまだ怖い、気持ち悪い、と感じるモノなのかもしれません。でもあなたはヴァギナに似ている、として素敵な花だけではなく、スライスハムの盛り合わせまで提示していますね。
そうですね。でも私は身体のデセクシャライズ(性的な特徴を除くこと)がしたいわけではありません。身体は性的なモノです。だからそこを崩さず、だけど別の見方をすることができればと思っています。

──掲載する写真を選ぶさい、何か気をつけている点はありますか?
Look At This Pussyを立ち上げたのと同じ時期、男性として登録しているユーザーと、女性として登録しているユーザーで、Instagramなどのプラットフォームの使いかたが全然違うことに気づいたんです。だから私は、ザラザラ感を強めるパンクロック的なフィルターを使ってる写真は選ばないですね。それでジェンダーを限定されてしまいたくないので。私だって、通常女子が好むとされる花とかキレイな果物は好きですが、それよりも誰も予想していなかったイメージを選びたいです。

──Instagramでの、女性、特に女性の身体に関しての検閲はこれまでも議論の対象となってきました。掲載写真が消されたことはありますか?
私はシンボルが好きで、シンボルを扱っています。Look At This Pussyは、Instagramをフェミニズム運動の一環として使用している大勢のフェミニストとは全然違うんです。誰かの身体を記録することには興味がない。それよりも、ジェンダーに関して、シンボルがどのように機能するのかを記録することに興味があるんです。でも確かに、Instagramの監視のギリギリのところを攻めていると思います。システムをおちょくってるというか。

──フォロワーはやはり女性が多いのでしょうか。
大半は女性ですね。だけど男性ファンもいて、うれしいですね。私が知っている最高のフェミニストは女性ばかりではない。男性もいます。でもフォロワーのなかには、このアカウントは15歳の男の子が運営してるって思い込んで、キャプションを読まないひとたちもいるみたいですね。その全員が男性だってわけじゃないですが。私は、そういうひとがいたって良いと思います。彼らがちゃんとした方向を見つめていて、元々の見方とは違う、新しい見方でモノをみるようになればそれで良い。私たちも全てのひとをターゲットにしてるわけではないですし。

──でもアンチも多いのでは?
残念ながら、ドナルド・トランプが大統領に就任してから、ある特定のタイプのアンチが急増しています。メディアでも恐ろしい、ネガティブな言葉が溢れていますから、こういう政治的なことをいうのは本当は私も嫌なんです。これが文化を反映した結果だとは思いたくない。だけどそれが事実なんです。ここのところ私が見かけるのは「フェミニストを自称する女はバカか、血も涙もないか、男にモテないかのどれかだ」という言説を主張する男たち。無知で、憎しみが強く、女性を悪くいうような誰かが本当に欲しているのは共感なんだ、って思うようにはしていますが、彼らはネット荒らしと違い、心からそういう言説を信じているんです。最悪ですね。

──なるほど。このプロジェクトを立ち上げた2014年とは、政情もすっかり変わってしまいましたね。今起きている出来事を鑑みたうえで、このプロジェクトが重要である理由についてはどう考えますか?
確かにこのプロジェクトを大切だとは思っていますが、その重要性を必要以上に強調したくはありません。そこはうぬぼれたくないので。でもフェミニストの同志たちにとって、笑うことと、連帯感が必要だと思ってます。トランプ以前はそうでした。今だってそのはずです。

──お悩み相談コーナーを始めたのもそのため?
ずっとやりたかったんです。実際、「彼氏が他の女の子にキスしてしまいました。私はどうするべきですか?」「今15歳で、不安で仕方ありません。私に何かアドバイスをください」みたいなDMが毎日届きます。若い女の子たちと、彼女たちの人生について話をする機会があるっていいですよ。私自身、お悩み相談が好きですし、自分の気持ちの問題を家族や友人に話して克服しています。アカウントとフォロワーの関係性は、自然に発展しただけですね。

──あなたのアカウントのどういうところが、フォロワーがいろんな疑問を抱くきっかけになっていると思いますか?
このアカウントがやっていることって、ある意味すごく脆くて弱いんです。イメージ自体が素敵だとしても、生々しさがある。そこから議論が生まれるんだと思います。どんな友人関係でも恋愛関係でも、自分自身の脆さ、弱さをみせると、相手も同じようにさらけ出してくれますよね。誰かひとりがはじめの1歩を踏み出せば、みんながさらけ出せるようになる。Look At This Pussyが伝えたいメッセージは、最初から一貫しています。共感をもつこと、人間らしく行動すること、自分を信じること。楽しいときも、感動するときも、悲しいときも、これこそが導きとなるメッセージです。

This article originally appeared on i-D US.