Photography Anabel Navarro Llorens

「社会の基準にあわせている暇はない」:アリ・テイトの独白

かつて鏡に映った自分を見て嘆いた彼女は、自分の体に力が宿っていると感じる術を学んだ。

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maj 23 2018, 12:20pm

Photography Anabel Navarro Llorens

アリ・テイト(Ali Tate)はその場になじんでいると感じたことがなかった。平均より大きい体をもつ彼女は、自分を太っていて醜く、孤独だと思っていた。モデル契約のオファーを受けたときでさえ、自分の見た目に満足していなかったという。“プラスサイズ”というレッテルを貼られるのが大嫌いだったのだ。彼女にとって、それは「自分が理想よりも大きい」と言われているということに他ならないのだから。しかし今、彼女の心境は大きく変ってきている。それから6年、MANGOやReformationといったブランドとの仕事を経た今、アリはこれまで味わったことのない気持ちを味わっている。そのわけを彼女が語ってくれた。

「私が育ったのは、カリフォルニアの北にあるサラトガという小さな町。シリコンバレーの一角ね。両親はレストランを経営していて、私は大学時代にサッカーに打ち込んでた。子どものときからずっと続けていたから。特別な学区の出身で、不自由のない家庭生活を送っていた。多くの点で、ものすごく恵まれていたと思う。

でも、不幸な点もあった。成長するにつれ、自分の体に対してネガティブな気持ちを抱くようになっていったの。最初にそう感じたのは、8歳のとき。はっきりとは思い出せないけど、鏡を見て、そこに映っているものが気に食わなくて。太った人が感じる恐怖のようなものを小さな頃から感じていたのね。

サッカーをしてたから、他の女の子たちに比べたら、私はとてもおてんばだった。でもだからといって、みんなのようになりたいという気持ちは抑えられなかった。そういう子たちはすごく痩せてた。私は痩せたことなんてなくて。ぽっちゃりで、友達よりも背が高い。体を隠すために、猫背にもなった。男の子たちはときに小声で、ときに面と向かって、私をからかった。

親友のテイラーが泊まりに来たとき、ふたりで鏡の前に立ったのを覚えてる。遊びでメイクして、キメ顔をして。雑誌に載っているようなきれいで魅力的な女性になったつもりで、長いあいだ鏡を見ていたの。でもぽっちゃりしたお腹がシャツの下に見えて、頭に思い描いていたものからほど遠い姿に気づいた。魅力的にはなれない。私は太っている。太った女の子には魅力がないって信じ込んでいたの。テイラーも同じことを感じていた。お腹を一日中へこませていないと、家を出られないって言っていた。私たちは当時10歳で、週に3日フットボールをしてた。熱心に、ずっと。

自分の体に対するネガティブな気持ちは、長いあいだ、私の思考を支配してきた。アスリートとして、肉体的なピークにあるときでさえ、そこからは逃れられなかった。練習のあと、もうひと走りすることもあったくらい。食べたものを吐こうとしたこともあったけど、友だちや家族に気づかれずにいるのは無理だと思って断念した。かわいいと言ってくれる人もいたけど、絶対に信じなかった。ただ親切で言ってくれるんだと思っていたから。私くらいのサイズの人がかわいいわけないって。

でもそのあと、人生が大きく変わるような出来事が起こった。外国で勉強するため、1年ロンドンに行っていたんだけど、そこでぽっちゃりモデルのコンテストに参加したの。自分をどうしても認めてもらいたくなって。優勝はできなかったけど、プラスサイズのモデル事務所と契約することになった。幸せだった。自分がかわいいんだって認められている気分だったし、それは私がずっとほしかったものだったから。でも同時に、プラスサイズモデルっていうことは、恥ずべきことなんじゃないかと葛藤もした。自分が太っていると思っていたことが繰り返されるみたいな気がして。ちゃんとしたモデルだっていう気分じゃなかった。最初の何本かの撮影では、写真に写った自分を恥じたくらい。

それでも、業界でたくさんのプラスサイズモデルを目にするようになって、考えも変わっていった。業界には、痩せていなくても美しい人たちがたくさんいる! つまりそれは、私だって美しくなれるということ。猫背になるのもやめたし、誇りを持って自分のサイズの服を着るようになった。縮こまろうとするのはやめて、自分の体を愛すようにした。ふりをし続ければ現実になるって言うでしょう? これは本当だったみたい。

6年以上この業界でモデルをしているとこう思うの。当時あんなに自分自身をさげすんでいたのはクレイジーだったって。若かった頃の自分を気の毒に思うし、あの頃に戻って、今知っていることを伝えてあげたいとも思う。小さい体を手に入れても、幸せになれるわけじゃない、今の自分自身を愛することだけが、あなたを幸せにしてくれるんだって。違う自分になることを望んで、どれだけ時間と労力を無駄にしてきたかを思うと、後悔しかない。

プラスサイズ業界は進化を続けてる。アシュリー・グラハムのようなモデルたちが、それまでまったく存在すらしなかったプラスサイズのモデルたちに門戸を開いてくれている。この業界には、パロマ・エルセッサー(Paloma Elsesser)やバービー・ノックス(Barbie Nox)といった個性的なインディ・モデルがいるし、タブリア・メジャーズ(Tabria Majors)のようなセクシー系や、サビーナ・カールソン(Sabina Karlsson)みたいにエキゾティック系の美しい人もいる。業界には、あらゆるタイプの女性たちのために、いまだかつてないほど広い場所が提供されているの。大きめ、小さめ、黒人、白人、なんでも。

モデルが平等に活躍するのを女性たちが見るようになって、多様性は当たり前になってきた。今の若い子はモデルたちに自己投影することができる。女性の多様性をふつうのこととするこういう意識は、若い世代の精神衛生上、とてもいいことだと思う。現代の女性は、多様な表現を見ることで、私が通ってきたような道を避けられるかもしれないから。彼女たちが雑誌を見たとき、そこに少しだけでも自分の姿を見出すことができたらと願ってる。愛され、称賛されるだけの価値が自分にはないと信じてしまう苦しい時期を回避できればって。社会の偏ったものの見方に適合するために使うエネルギーは、代わりに政治家や科学者になるための力にだってなるかもしれない。職場のリーダーや革新者となるとき、男女のハンディをなくすために。世界をより良い方向に変えるために。

Credits


Photography Anabel Navarro Llorens
Ali Tate is with Milk Management
Translation Aya Takatsu

This article originally appeared on i-D UK.