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アレックスがBALENCIAGAを去った訳とは?

アレキサンダー・ワンが参加したメトロポリタン美術館でのトークショー。そこで私たちは、彼の実像を目の当たりにすることになる。

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17 June 2016, 3:55am

「フォーメーション・ツアーのビヨンセになったみたいな感じだ」——"ジャネット・ジャクソンのマイク"と彼が呼ぶヘッドマイクからスピーカーを通して、アレキサンダー・ワンの声が会場に響いた。ジャーナリストのアリーナ・チョウ(Alina Chow)がメトロポリタン美術館で開催しているファッション・トークイベント『The Atelier with Alina Cho』に参加したワンは、この日ももちろん、彼のトレードマークともいえるオールブラックのいでたちで現れ、司会のアリーナとともに、会場を埋め尽くす観客に向け、ときに笑いを交えてトークを繰り広げた。現在32歳の彼は、これまでアリーナが招いた最年少デザイナーよりも、さらに20歳ほども若い。

19歳にしてパーソンズの服飾科を中退し、すぐに自身のブランドを立ち上げたワン。トークショーは、彼があっという間に成功を収めた(「19歳でそんなことをやってのけるなんて、何様のつもりだったの?」とチョウは冗談で会場を沸かした)背景から、H&MやApple Musicとのコラボレーションに至るまで、彼のキャリアとブランドについて探る内容が盛り沢山だった。約3年に及んだBALENCIAGAでのクリエイティブディレクター職についてももちろん触れられた。

驚きだったのは、このトークショーでワンがとてもパーソナルな内容についても言及していたことだった。チョウは彼の家族、彼の会社のCEOとCPOでもある兄弟たち、そして近親者と仕事をすることについて訊いた。これに対し、ワンは、「簡単ではないよね」と返答しながらも、家族のサポートとビジョン共有がいかに重要かを説いた。また、業界内に家族のコネクションがあったから成功したのだという"通説"についての言及もあった。「どこへ行っても、『ヴェラ・ウォンの息子さんなんでしょ?』って訊かれるんだよ」と彼は笑っていた。

より軽いムードで行われた「ドレイク? それともカニエ?」のコーナー(ちなみに、実際にドレイクとカニエ・ウェストのいずれかを選ぶのは、両親のいずれかを選ぶようなものなのだそうだ)では、「愛? それともお金?」という質問がチョウからなされた。ワンが「愛」と答えると、チョウは彼がめったに語ろうとしない話題へと話を進めた——彼の恋愛事情と私生活についてだ。「私生活なんかないよ」と彼は笑いながらも、誠実さをもって答えた。「友達と家族との時間が僕の私生活だね」。そして、仕事も彼の私生活の大きな一部であると明かした。アレキサンダー・ワンはとっつきやすく"楽しいこと好き"として知られてきたが、今回のトークショーでは、彼が仕事に献身的な努力家であることも知ることができた。

以下が、トークショーから知れたアレキサンダー・ワンの実像だ。

1. 人生と仕事のモットーは「後悔しない」
まだ10代の頃、パーソンズの学生だったワンは、小売業を掛け持ちしていた。そんなある日、「ひとのブランドを手伝うのではなく、自分のブランドを立ち上げることもできるんだ」と気付いたという。「失って一番後悔するものは何だろう?」——そう考えた彼が出した答えは、「時間」だった。そこで早速、自身初のコレクションを制作・発表。まだ20歳にもなっていなかった2005年のことである。BALENCIAGAからのアプローチを受けたときにも、アレキサンダーは19歳の頃と変わらないアプローチで挑んだという。「チャンスを断ったことはない。悔いが残らないよう日々を生きてるんだ」と彼は言った。

2. BALENCIAGA関する批評は一切目を向けず、耳も傾けなかった
ワンがBALENCIAGAクリエイティブディレクターに就任した際の周囲の懐疑的見解は、当然ながら彼の耳にも入っていた。そしてもちろん、彼は傷ついた。「僕も人間だからね。でも、"自分の創作には価値がある"と信じてる。それで十分だと悟ったんだ」。彼は、チームのメンバーたちに、コレクション発表後の批評について一切彼の耳には入らないよう徹底してくれと頼んだ。BALENCIAGAを去ったのは、自分のブランドに集中したかったからだと言う。「Alexander Wangは僕のホームだからね」

3. エイミー・シューマーとパーティ・バスでメットガラ会場入りしたことについて
アレキサンダー・ワンは、今でもメットガラ参加に恐怖をおぼえるという。「だって、あそこは『どけ!』って殺気にあふれてるんだよ」と、メットガラのレッドカーペットについて彼は、冗談まじりに語った。今年は、"誰か一緒にいて楽しいひととなら"とメットガラ参加を決めたそう。当日はマドンナ、そして現在大人気のコメディエンヌ、エイミー・シューマー(Amy Schumer)とともにパーティ・バスで大量のドーナツを食べながら会場入りしたという。このときエイミーが着ていたポピーレッドのドレスは、ワンがデザインしたもの。「あのドレスを着たエイミーは自信に溢れて綺麗だったね」と彼は当日のエイミーについて語った。

4.健康法
ワンは中華料理しか食べない。そして炭水化物が大の好物。トレーニングはほとんどしない(「2ヶ月に数回、数日のみ」)。しかし、彼は遊びに出るのが好きで、友達には「頼むから寝てくれよ」と言われているそうだ。そしてワンには恵まれた体質が備わっている——二日酔いにはならないらしい。

5.深夜営業のレストランを開業するかもしれない
遊んだ翌朝の二日酔い対策として、前夜寝る前に食事をとらないワン。だが、ニューヨークには「クラブへ行った後に食事ができる深夜営業のレストランが必要」だと言う。また、ラルフ・ローレンを"永遠のヒーローのひとり"と明かし、「Ralph Laurenというライフスタイルブランドを体現する究極の形として、ニューヨークにPolo Barをオープンさせた」からだと尊敬の念を込めて説明した。近い未来、アレキサンダー・ワンのレストラン(きっとオールブラックの大理石造り)がニューヨークにオープンする日が来るかもしれない。

Credits


Text Alice Newell-Hanson
Photography Daniel Jackson
Styling Alastair McKimm
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.