TOGA Photo by Shun Komiyama

東京の可能性:東京コレクション2018SSのまとめ

2018年春夏、東京コレクション。sacaiやUNDERCOVER、TOGAら海外コレクションの一線に立つデザイナーが凱旋し、MIKIOSAKABEは去来の日本の姿を想い、AVALONEは世の中にはメインストリームでないことの強さがあるのだと示した。

by Tatsuya Yamaguchi
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24 October 2017, 10:06am

TOGA Photo by Shun Komiyama

2017年10月中旬、オフスケジュールのショーを含めた「東京コレクション」は天候に恵まれなかった。大型台風が日本列島の南で発生し、真冬並みに冷え込む日もあれば、横殴りの雨が降りつける日もあった(防水ジャケットが目についたのは、きっと雨のせいだ)。揺れ動く日本の情勢。そしてその行く末を決めかねない衆議院選挙が間近に迫ってもいた。こうしたことをデザイナーたちが意識しているかどうかは断言できないが、東京に暮らすそれぞれのデザイナーが現在、何を感じているのか、その心境の断片が伝わってきたシーズンだった。

Amazon Fashionが冠スポンサーになり2シーズン目を迎えた。そのスペシャルプログラム「AT TOKYO」のコンセプトに賛同し「26年前の『6.1 THE MEN』を間近で見た衝撃を今でも鮮明に覚えています」とオフィシャルメッセージを出したのは、sacaiの阿部千登勢だ。1991年6月にCOMME des GARÇONS とYOHJI YAMAMOTOが東京で共同開催した「6・1 THE MAN」へのオマージュとして、UNDERCOVERの高橋盾とタッグを組んだ合同ショー「10.20 sacai/UNDERCOVER」を開き、関係者のみならず約200名の学生を招いた。錚々たるパリコレクションのタイム・テーブルの中でもひときわ熱い視線を向けられる両雄の表現は、次世代のファッションを担う日本のユースたちの背中を強く推し、勇気付けるエールだったに違いない。それこそが、両者がこの機に東京を舞台に合同発表する、厳然たる動機だったのだ。

10.20 sacai/UNDERCOVER Photo by Shun Komiyama

東京で魅せるサプライズな演出を携えて凱旋したのは、彼らだけではない。NUMBER(N)INEの元デザイナーである宮下貴裕によるTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.は漆黒の特設テントで「femme fatale fellow」をテーマに掲げたショーを開いた。Suzanne Vegaの「Tom's Diner」の囁く歌声が鳴り響いた会場では、"最愛の女性"の視点に擬似的に立ち見出した「メンズ服の持つ可能性」を現前とさせていた。

TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. Photo by Shun Komiyama

ロンドン・ファッション・ウィークで発表しているTOGAは、2017年10月でブランド設立20周年を迎えた記念すべきショーを、夜の国立新美術館で催した。男性モデルがウィメンズウェアをまとい、さまざまな対比を通して、デザイナー古田泰子ならではの「性のボーダレス」を表現した。北村道子がスタイリングを手がけた、東京では12年ぶりのただ一度きりのショーは、足早なヒールが地を打つ音でフィナーレを迎えた。彼女はすでに、21年目の未来に歩みを進めている。

TOGA Photo by Shun Komiyama

AT TOKYOのプログラムではないが、吉原秀明と大出由紀子の2人(夫婦)が手がけるHYKEは、男性的になりがちなミリタリーやアウトドアスポーツウェアを、クリーンな官能性が漂う、優しいフェミニティまで導いていた。その潔いクリエーションはインテリジェンスを内包していた。ジェンダーは、いつの時代もファッションの主題のひとつなのだと、今ここ東京で改めて考えさせられる好機が何度もあったのだ。

HYKE Photo by Shun Komiyama

リアルタイムで刺激的なものをキャッチアップするスキルは、確かに日本のユースの特徴かもしれない。その一方で、あらゆる情報に瞬時にアクセスできるがゆえか、クラシックやレトロ・シック、ノスタルジックな空気を持つ日本にかつて存在していた「過去」や「歴史」に対するリベラルな眼差しが浮上してきている。マドモアゼル・ユリアが手がけるGROWING PAINSは75年の歴史がある小笠原伯爵邸を舞台に、「MOGA」と呼ばれるモダンガールにインスパイアされたショーを発表した。MOGAとは、今から90年以上前の大正末期から昭和初期に、西洋文化(洋装、断髪、濃い化粧、そして思想も)の強く影響を受けた女性たちのことを指す言葉だ。

GROWING PAINS Photo by Satomi Yamauchi

MIKIOSAKABEは、もっと奔放にタイムトリップして、「和」のエッセンスを随所に取り入れた。束髪ヘアは1880年代ごろに流行し、女子高生が持っていたようなスクールバックは2000年代のイメージ、超厚底靴は特に江戸時代より少女や舞妓が用いた"ぽっくり"から着想している。星やハートをかたどった造形的なピースは「現在の東京のカワイイ」を表現したのだと、デザイナーの坂部三樹郎は話していた。

MIKIOSAKABE Photo by Jus Vun

ACUDO by CHANUは、戦国時代の武将、織田信長(彼は日本でうつけ者だったとも言われる)の破天荒さとヒップホップの融合をテーマとした。

ACUOD by CHANU Photo by Nobuko Baba

日本独自のアンダーグラウンドな空気を常にまとっているのはAVALONEだ。デザイナーの三浦進は、デスメタルバンドのボーカルや彫師を経てファッションブランドを立ち上げた異色の経歴の持ち主。王道ではなくアウトローであり続ける、彼にとっての自然体なアティチュードを、シンボリックな東京タワーのふもとにある地下駐車場でショーを行った「THE ANTAGONISTS(敵対者たち)」というシーズン・テーマにのせた。また今季デビューしたウィメンズ・ラインのデザインには、三浦曰く「共鳴者である」、歌代ニーナを迎えた。

AVALONE Photo by Jus Vun

日本や東京に根ざしたカルチャーやストリートウェアへの素直なフォーカスは、デザイナーの素性を明らかにしないアノニマスなBlackEyePatchのショーが饒舌に物語っていた。日本の伝統芸能である能の聖地、観世流能楽堂の跡地を会場に繰り広げられた、沖縄を活動拠点とする旧車會GIMATAIによる改造バイクでのスタント・パフォーマンスは圧巻だった。ただし、i-D Japanによるエクスルーシブなインタビューを引用すればデザイナーは「東京を掲げている、東京の代表という気持ちはありません。ただ、生まれ育った場所で、色々なものに触れて影響を受けてきただけかなと。日々の生活のなかで『面白い』と思ったことを自分達のフィルターを通して表現しているだけ」なのだと、静かに語った。

BlackEyePatch Photo by Shun Komiyama

自身の五感で吸収したものを起点にしたデザイン。そして、自分らしく生きたいという願い。ファッションの力を信じて、パーソナリティと整合する本当の自由を思い描くデザイナーもいた。これまで同世代の日本人なら「ウンウン」と頷けるスクール・ボーイやゲーマー風のルック——きっとデザイナーの吉田圭介も体験したであろう「青春ならではの辛苦や瞬き」をテーマにしていたKEISUKEYOSHIDAの、自身の殻を打ち破らんとするコレクションは社会制度や世界情勢に抗っていた70年代のヒッピーに着想していた。

KEISUKEYOSHIDA Photo by Shun Komiyama

少年時代の記憶——物作りにかけるピュアでプレイフルな喜びに回帰したのは、YOHEI OHNOだ。例えば、ホームセンターで気になった素材をかき集めて工作しているような、手を動かすことが大好きな男の子の姿が垣間見えた。きっとバウハウスやインダストリアルの魅力に惹かれているデザイナーの大野陽平もそういう少年だったはずだ。

YOHEI OHNO Photo by Shun Komiyama

"思い出"を手がかりにしたのは、2017年度のDHLアワードを受賞した5-knotを手がける鬼澤瑛菜と西野岳人もそうだ。旅先で見聞きし感じたことをデザインに取り込む彼らは、ポルトガルの海沿いの街、ナザレに想いを馳せた。

5-knot Photo by Takao Iwasawa

特にこの2〜3シーズンでアジア諸国からの参加が徐々に増え、定着しつつある。シニカルだがユーモラスな、マレーシア出身デザイナーのモト・ゴーとキンダー・エングが手がけるMOTO GUOは二度目の参加を果たした。

MOTO GUO Photo by Yuhei Taichi

Asian Fashion Meets TOKYOと題されたプログラムではフィリピンタイから7ブランド、Fashion Hong Kongでは4ブランドのショーも開かれた。同じアジアながら日本とは異なる、その地の風土や習慣、彼らのメンタリティーが薄っすらとにじみ出ている。

Asian Fashion Meets TOKYO (Philippines) Photo by Jus Vun
Asian Fashion Meets TOKYO (Thailand) Photo by Jus Vun

この原稿を書いているときには、日本各地で記録的な雨量を観測し、甚大な被害をもたらした超大型の台風21号は東京の地を過ぎ去り、見上げると突き抜ける青空が広がっている。

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