リアーナのファッション変遷

デビュー当時の初々しい姿から革新的なマタニティルックまで、ファッション界のクイーンの軌跡を振り返る。

by Douglas Greenwood, and Tom George; translated by Nozomi Otaki
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13 June 2022, 4:30am

リアーナがこの星で最もおしゃれな女性だということには、誰も異論はないだろう。彼女は2000年代後半から2010年代前半にかけてポップミュージック界を制しただけでなく、Fenty Beautyを通してインクルーシビティが成功への鍵だということを証明した、コスメ界のリーダーでもある。さらにSavage x Fentyで、ランジェリー業界(と私たちの財布)をも支配している。

 彼女のクリエイティビティは今となっては誰にも邪魔できないが、ポップチャートでの成功を目指すバルバドス生まれの少女から、マタニティルックに革命を起こした絶対的なファッションアイコンまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。今回はリリことリアーナがファッションの世界に足を踏み入れ、形づくり、席巻するまでの軌跡を振り返る。

Rihanna Tie Dye Crop Top Teen People Listening Party in 2005
Photo by Kevin Winter/Getty Images

2005年 ジェイ・Zの『Teen People』ラウンジパーティー

懐かしいベイビーフェイスのリアーナ! スターになる直前、当時17歳だった彼女は、ウエストハリウッドで行なわれたジェイ・Zのリスニングパーティーに、ホルターネックのクロップトップ(もちろんタイダイ染め)とボディチェーン、デビューシングル「Pon de Replay」のMVで着用したようなアシッドウォッシュのヒップスタージーンズという、ゼロ年代を象徴するルックで出席した。まだデビューして間もないが、若かったリリはすでに一貫したイメージの大切さを理解していた。

Rihanna Mermaid Dress at New York Fashion Week 2006
Photo by Jason Kempin/FilmMagic

2006年 ニューヨーク・ファッションウィーク

翌年、2ndアルバム『A Girl Like Me』のリリース直前、そしてのちにチャートを席巻するシングルの発表を控えたリアーナは、ニューヨークでファッションウィークデビューを果たす。Condé Nastのオープニングパーティーに招待され、初めて正装で人前に出る機会を得た彼女は、シルバーのマーメイドドレスとダイヤのアクセサリーという、古き良きハリウッドの気品を漂わせるルックを披露。まさにアイコニックだ。

2007年 「Umbrella」ミュージックビデオ

音楽業界で最も勤勉な女性として知られるリアーナは、デビューから3年で2枚のヒットアルバムをリリースできるほどの楽曲を蓄えていた。しかし、彼女をさらなるスターダムへと導いたのは、3枚めのフルレングスアルバム『Good Girl Gone Bad』だ。本作はついに私たちの親世代にもリアーナが何者かを知らしめた。このアルバムの代表曲といえば、ドラァグコスチュームのトム・ホランドしかそのパワーに太刀打ちできないであろうビデオで有名な「Umbrella」だ。このMVの中で、リリが身につけているのはバレエシューズ、フレンチメイド風のボディスーツ、フェドーラハット、レザー風のぺプラムスカートだ。CGの雨の中で傘を回す姿は、まさに唯一無二の絶対的な女神だ。これを観れば、世界のポップカルチャーファンはただ彼女に平伏すしかない。

Rihanna in Gucci's Tattoo Heart Campaign 2008
Courtesy of Gucci

2008年 Gucciキャンペーン

2008年は、2005年から2012年の間でリリがニューアルバムを発表しなかった唯一の年だ。その代わりにリリースされた、オリジナル版からよりパワーアップした『Good Girl Gone Bad』の再発盤は、彼女史上最もダークなビルボードナンバーワンシングル「Disturbia」を生み出した。しかし、彼女の芸術的なヴィジョンが曖昧さを増したいっぽうで、彼女自身の博愛精神に満ちたヴィジョンは、それより遥かに楽観的だった。2008年、リアーナはGucciのユニセフ支援プロジェクトのアンバサダーに就任。慈善事業のイベントでのスピーチやレッドカーペットイベントなど、多方面で活躍する。さらに彼女は、Gucciのキャンペーン〈Tattoo Heart〉で白のボディスーツを着用し、巨大な刺繍入りレザーバッグを斜めがけにして、フープ型の空中ブランコに腰掛ける姿を披露した。いったいどうやってバランスを取っているのだろうか。彼女がその秘密を明かすことはないだろう。

Rihanna in Soho wearing Christopher Kane gorilla dress
Courtesy of Getty Images

2009年 ニューヨークにて

2010年になる前、リアーナは10年間で最後のイメージ改革を図った。ロックの要素を取り入れたハードなアルバム『Rated R: R指定』で、リアーナは頭(の片側)を剃り、レッドカーペットやMVに対しても異色のアプローチをとった。NYのソーホー地区で、彼女は雄叫びをあげるゴリラがプリントされたChristopher KaneとTOPSHOPのコラボドレスを着用しているところをキャッチされた。ハイファッション×ハイストリートのクロスオーバーが絶頂期を迎えるなか、このルックはそのコラボレーションの力を揺るぎないものにした。

2010年 「What’s My Name?」ミュージックビデオ

2010年、リアーナは自身のポップ・アーティスト時代を象徴するアルバム『Loud』を発表。「Only Girl (In The World)」や「S&M」などのシングルが全世界でスマッシュヒットを記録し、彼女をスタジアム規模の観客を動員する歌手へと押し上げた。いっぽう、ドレイクとコラボした「What’s My Name?」のMVに、彼女は誰もが知るあの有名なルックで登場する。真っ赤な髪に、フワフワの髪飾り。鮮やかな差し色の入ったモノクロのショートパンツを履き、バングルとネックレスを重ね付けしている。それを引き締めるのが、ビートルジュースを思わせるストライプジャケットだ。

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Courtesy of Armani Jeans

2011年 Armani Privéキャンペーン

リアーナのモノクロブームは翌年も続いた。この年、彼女はArmaniのデニムとアンダーウェアの2011年秋冬キャンペーンのモデルを務めた。彼女が大手ファッションブランドのコレクションを手がけたのはこれが初めてで、マート・アラス&マーカス・ピゴットとスティーヴン・クラインが撮影したモノクロのプロモーションで、スイートなピンストライプのショートパンツからネグリジェ、ハイウエストジーンズまで、多様なアイテムを着こなしている。

Rihanna Met Gala 2012
Courtesy of Getty Images

2012年 メットガラ

リアーナが初めてメットガラに招待されたのは2007年。当時のこのイベントは今よりも地味で、ビジューつきの純白のドレスが主流だった。彼女は2009年のチャップリン風のタキシードと2011年のレースドレスに続き、これまでのイメージを覆すようなルックで登場した。2012年には〈Schiaparelli and Prada: Impossible Conversations〉展のテーマに合わせ、彼女はミウッチャ・プラダがデザインした背中の空いたクロコダイルのドレスで、古代ギリシャの女神に変身。メットガラの歴史に名を刻んだ。

2013年 「Pour It U」ミュージックビデオ

2012年のアルバム『Unapologetic』は、その年を代表するシングルをもたらした。トラップアンセム「Pour It Up」だ。夢のようなストリップクラブを舞台に、リアーナはプラチナブロンドのウィッグ、宝石を散りばめたランジェリー、Y/Projectを先取りしたようなデニムのTバック、ドル紙幣がプリントされたピンヒール、ボリューミーなフェイクファージャケットを身にまとって登場する。「お金が世界を動かす」と黄金の玉座に腰かけた彼女は歌う。これこぞボス・ビッチのエネルギーだ。

Rihanna CFDA 2014
Courtesy of Getty Images

2014年 CFDAファッションアワード

25万個のスワロフスキーのクリスタル、ヌードカラーのパンティ、ほんの少しのフェイクファー。それが2014年のCFDAファッションアワードでリアーナが〈今年のファッションアイコン〉として身につけたすべてだ。Adam Selmanのドレスを取り入れたこのルックは、彼女のターニングポイントとなった。シアーで乳首を解放する(「私の胸が気に障る?」というコメントが記憶に新しい)、職人技が光るこのデザインは、女性が着るべき服とそうではない服を決めつけようとするポップミュージックの世界への複層的なステートメントのように感じられた。この瞬間、私たちはリアーナが自称〈批評家〉の意見などまったく気にしていないということに気づいた。これこそ完全無欠のルックだ。

Rihanna at IHeartRadio Awards 2015 wearing Versace Green
Courtesy of Getty Images

2015年 iHeartRadioアワード

勇敢なエイリアンが地球に亡命する子ども向けの映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』への出演と、「Bitch Better Have My Money」というタイトルのニューシングルを両立できるアーティストが他にいるだろうか。リアーナは、軍のヘリコプターの前でのiHeartRadioアワードのパフォーマンスで、アルバム『Anti』期(彼女は本作に続く最新作のリリースもほのめかしている)の始まりとなるトラックを披露した。衣装は全身リドラーグリーン。ボディコンドレスにサイハイブーツ、『セサミストリート』を思わせるファーを組み合わせ、アクセサリーはVersaceで統一した。

Rihanna on the set of Ocean's Eight wearing Hillary Clinton Sweater 2016
Courtesy of Getty Images

2016年『オーシャンズ8』のセットにて

2016年の米大統領選投票日、リアーナは全員女性の『オーシャンズ』シリーズ作の撮影でニューヨークのセットにいたが、撮影の合間に政治の議論に参加した。同じ年、彼女はヒラリー・クリントンの顔がプリントされたTシャツを着ているところをキャッチされている。ネット民はすぐにこのスナップを「私は彼女(=ヒラリー)に賛同する。そして彼女(=リアーナ)にも」というスローガン入りのTシャツとスウェットを制作した。リアーナはそのトレンドをメタ的に捉え、パパラッチに新たな〈リアーナ×ヒラリー・クリントン〉スウェットをチラ見せし、自身の政治的スタンスを表明した。

Rihanna wearing couture Dior at Cannes Film Festival 2017
Courtesy of Getty

2017年 カンヌ国際映画祭

2017年にはリアーナはあらゆるレッドカーペットイベントの常連となり、それを物にする方法を熟知していた。しかし、ティルダ・スウィントンが出演した『オクジャ/okja』のカンヌプレミア上映に現れた彼女の姿は、今なお私たちを惹きつけてやまない。DiorのドレスにAndy Wolfの小ぶりなサングラスを組み合わせ、彼女は米国内でもコート・ダジュールでも、何人たりとも女王リアーナの魅力に抗えないことを証明した。

Rihanna wears Margiela at the Met Gala 2018
Courtesy of Getty Images

2018年 メットガラ

リアーナの2012年メットガラのルックはまさに炎の絵文字の擬人化であり、2015年のGuo Peiの超ロング丈のゴールドドレスによって、彼女のメットガラの支配者としての称号は揺るぎないものになった。しかし、拍手喝采にふさわしいメットガラ・ルックといえば、やはり2018年のルックだろう。他のセレブたちがカトリックというテーマを曖昧に解釈するなか、リリはさらに一歩踏み込み、教皇その人として登場した。Maison Margielaのドレスと教皇を象徴するヘッドピースを身につけた姿を見て、その場にいた出席者もスクリーン越しに眺めていた観客も、心の中でリアーナ教皇の前にひざまずき、その足にキスしたに違いない。

Rihanna at Savage x Fenty Launch 2019
Courtesy of Getty Images

2019年 Savage x Fentyローンチイベント

2019年は、リアーナのファッションにおけるレガシーが業界全体を支配した年だ。LVMHとパートナーシップを組んで立ち上げたFentyは、史上最も大きな話題を呼んだ新生ブランドだ。この新たなステータスを全うするべく、リアーナは身につけるものや目の肥えた大衆の期待に応えるアイテムを、今まで以上に厳しい目で選別するようになる。Savage x Fentyのローンチイベントでは、自身のブランドのクリスタルが散りばめられた身体にフィットするミントカラーのドレスに、Andy Wolfのミニサングラスを組み合わせた。

Rihanna wears Balenciaga at the Met Gala 2021

2021年 メットガラ

Balenciagaのデムナ・ヴァザリアは、2021年のメットガラの2つのベストルックを生み出した。キム・カーダシアンの見事な曲線美に完璧にフィットするボディスーツで人びとに衝撃を与えたあと、彼はリアーナにそれとは真逆の衣装を提供した。それがこのボリューミーなブラックのガウン、ブラックのビーニー、そこからのぞくクリスタルのヘッドピースだ。このルックによって、私たちはリアーナがメットガラの主役だという周知の事実を再確認した。2022年の同イベントでは、妊娠中で欠席した本人の代わりにデジタルの銅像が作られたほど、彼女はこの催しに欠かせない存在なのだ。

2022年 ロサンゼルス

ここ最近のリアーナは、Fentyのコスメラインやランジェリーの制作でほとんど裏方に徹してきた。しかし、2022年には全世界の羨望の的となる第1子の妊娠を発表。ファッション界のクイーンは、妊娠中も膨らんだお腹を堂々と見せながら数々のアイコニックなルックを披露している。つい先日、出産を目前に控えた彼女は、Miu Miu 2022年秋冬コレクションのセクシーなシルバーのセットアップで、サンタモニカのお気に入りのレストラン〈Giorgio Baldi〉に現れた。彼女こそ真のレジェンドであり、ファッション界を制する女王だ。ロビン・リアーナ・フェンティとその活躍に、心から感謝したい。

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