最強形のふたり:yonige インタビュー

コマーシャルソング ”笑おう”の大ヒットを受け、破竹の勢いで進むロックバンドyonige。10月3日に発売のニューアルバム『HOUSE』を制作中の2人に話をきいた。

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okt 9 2018, 7:47am

「恋愛はコストパフォーマンスが悪い」そんな意見が若い世代の中で広がる一方で、yonigeのように生々しい恋愛観を臆することなく歌というかたちで表現するガールズバンドに共感が集まり、熱狂的に支持されているのはとても興味深い。ギターボーカルの牛丸ありさによる荒削りなサウンドとダイナミックな低音を響かせるごっきんによるベースラインは媚びることを拒むかのように無骨で、私たちにストレートに訴えかけてくる。

質問を投げかけると、牛丸ありさはその質問に対してポツリポツリと答える。その様子は一見するとクールな印象を与えるが、ナイーブな仕草や言葉の端々から音楽への秘められた情熱が滲み出ているのを感じ取ることができた。

2017年にメジャーデビューし、auのCMに"笑おう”が使用されてからの彼女たちのスピード感は目を瞠るばかりだが、その波に飲み込まれることなく、彼女たちは自分たちの道を邁進している。10月3日にリリースされたミニアルバム『HOUSE』の制作が佳境に迫る中で、バンドのこと、制作にまつわるエピソードをふたりに語ってもらった。

——バンドを結成しようと思ったきっかけはなんですか?

ごっきん(BASS):それぞれ学校も違ったんですけど、ライブハウスを通じての共通の友達が沢山いたので、なんとなくはお互いの存在を知っていて。高校卒業と同時にふたりがやっていたバンドが全部解散したんで、ちょっと集まってやってみる?って軽いノリで。

——音楽のバックボーンはどんなものなのでしょうか?

牛丸(GUITER & VOCAL):小学生の時はJ-POPばかり聴いてたんですけど、中学になってからはバンドものがメインになって。マキシマム ザ ホルモンの存在を知ってバンドをやろうって思いました。ギターを始めようと思ったきっかけを与えてくれたのはチャットモンチーですね。何でも買い与えてくれる親戚のオジちゃんがいたんですけど、彼女たちのライブ映像を見て、ギターが欲しいってお願いして、速攻手に入れました。

——すぐに上達しましたか?

牛丸:そもそも上手くなろうとは思わずにただ何となく触ってるって感じでした。練習が嫌いなんで。

——バンドを継続していることでスキルは上がりましたか?

牛丸:自分の弾きたい曲しか弾かず、テクニックなど難しいことにはチャレンジはしてこなかったですが、それでもボイトレに行ってだいぶ変わりました。

——ごっきんさんは何を聴いて育ったのですか?

ごっきん:親のCDばかり聴いていたので、広瀬香美とか、山口百恵とかPUFFYかな。バンドといえばB'zくらい。漠然と楽器を弾いてみたいとは思っていて、中学に入ったらエレキギターをやってみたかったんですけど、その学校には軽音楽部がなくて、仕方なく吹奏楽部に入って。

——吹奏楽部での経験はバンドに生かされてますか?

ごっきん:生かされてるかは正直わからないですね。楽器を始めたときにトランペットとか金管楽器をやりたかったのに、担当楽器を決める際にマウスピーステストってものがあって、それで一番興味がないクラリネットがなぜか上手に吹けてしまって。やりたくなかったものの、心を決めてクラリネットを練習して、それから1年間やって好きになってきたタイミングでバスクラリネットに空きがでたからって担当変えられて。でもこれも最後は好きになってました。ベースも全く同じ流れで、本当はギターをやりたかったけどベースが余っていて、お前の体系いい音出そうだからやれって言われてやり始めたらすげー楽しくて、結局ベースばっか弾いてます。

——ファッションに関して自分のスタイルなどありますか?

牛丸:足が太いからって理由でシルエットが緩めのパンツばかりですね。高校時代はパンク系のファッションに憧れがありました。ゴリゴリのミニスカに網タイツとか。でもとにかく楽なスタイルで、古着やブランドのアイテムも好きだけど、あまり気取ってないやつがいいです。

ごっきん:もしスタイルが良ければ露出多めの服を選ぶと思いますけど、ひたすら着痩せしそうな服を選んでます。ステージではそれぞれがこれだと思う格好で演奏してます。
牛丸:Tシャツにパンツとかね。

——ステージ上でのそれぞれの役割はありますか?

牛丸:ごっきんがライブ会場の空気を作ってくれます。私はずっとこんな感じの低めのテンションでしか喋らないので、お客さんを和ませなきゃいけないなってときには「ごっきん、ここで笑いとって」って。
ごっきん:その指示もすっごいざっくりで雑なんですよ。「え〜大丈夫かな?」って不安になります(笑)

——バンドを続けてきて意見が衝突することはあるのですか?

ごっきん:ないですね。
牛丸:わしの言うことを全部ごっきんが聞いてくれるんで。
ごっきん:基本、牛丸のことは肯定します。別に否定しようと思ったことがないし、すごいって感情しかない。女子はスリーピースバンドとかだと難しいので、ふたりが最強形なんですよ。

——バンドとして一番影響を受けているのは?

牛丸:ふたりともチャットモンチーですね。彼女たちは女の子らしいバンドって印象を持ってる人が多いけど、ちゃんと聴いたらめっちゃトゲがあるし、歌詞も面白いし変な曲もいっぱいある。

——近い将来のバンドとしての野望はありますか?

牛丸:海外でライブをやりたいです。私のお父さんが住んでるんで、特にオーストラリアには行ってライブしたい。
ごっきん:ただただバンドで海外に行きたいっていう。ずっと言い続けてるけど、なかなか叶わないなあ。

——女性限定ライブをやって話題になってましたが、女性がロックの現場に居辛いなって思った経験はありますか?

ごっきん:実際にライブハウスに行くまでは絶対一生入れない場所だって思い込んでました。治安が悪そうで。
牛丸:私はライブハウスを怖いって思ったことはなかったかな。むしろ怖いところには好んで行くタイプだし。中学時代にBUMP OF CHICKENが好きだった時期があって、その時は男性バンドがかっこよすぎて自分が女であることに病みました。なんで私は男として楽器を触れないんだろうって。

——今も男性に生まれてきたかったと思いますか?

牛丸:ずっと男に生まれてきたかったと思ってたけど、yonigeをやり始めてからやっと女であることを肯定できるようになった。最初は女って嫌だと思いながら曲を書いていたんですけど、バンドを続けるうちに私の歌詞に共感や好意を抱いてくれる女の子が現れるようになって、曲を通じて女の子に寄り添えるようになりました。

——自分が女だなって思う瞬間はどんなところですか?

牛丸:すぐ泣いたり、感情が先に動いてしまう時に自分が女だってことを自覚させられます。

——yonigeがガールズバンドというカテゴリーで語られることに関しては?

ごっきん:それは全然構わないです。女であることを武器にしているところもあるし。女がやって格好がつくこと、男がやって格好がつくことって全然別物だと思うので。

——先ほど歌詞の話が出てきましたが、歌詞はどんなシチュエーションで書いてますか?

牛丸:とりあえず日常の思ったこととか景色とかをiPhoneのメモ帳に書き留めておいて、それをメロディーに合わせる。歌詞のアイデアが思いつかない時はめっちゃ考えてひねり出しますけど、歌詞を書かなくていい期間の時も、ふと思いついた時などには、なるべく書きとめるようにしています。

——今まで書いた中で一番印象的な歌詞は?

牛丸:この歌詞書けてよかった~って思ったのが「しがないふたり」の歌詞なんですけど、「流行りの映画で泣けるわたしと、安売りの愛想で喜ぶ君」ってフレーズがあって、これ書いた時は自分で天才だって自画自賛しました(笑)

——関西から東京に拠点を移し、アルバム『HOUSE』を制作中ですが、音楽の制作方法に変化はありましたか?

牛丸:レコーディングに関わる大人の数が圧倒的に増えました。インディーズ時代は時間も限られていたので。それに曲のアレンジを考えてくれる人がもうひとり増えたので、めちゃくちゃ楽になりました。勿論自分主導で考えるけど、もう一個の意見を言ってくれる人がいるのはすごくありがたい。
ごっきん:普通に生きていたら触れないような年代ものの楽器とかを使わせてもらって、収録されている全曲違うベースで弾いていたりとか。音を作ってくれるプロがいるので、その楽器の音がそのまま出て反映されている。今までとは全然違いますね。

——今作のレコーディングで特に思い出に残っていることは何ですか?

牛丸:3年ごしの曲が完成したこと。最初にその曲を作ったのはインディーズの1枚目のアルバムを作っている時で、その時はギター、ドラムやベースをただうるさく演奏することしかできなかったんで、どうしたらいいか分からなくなって、ずっと放置してたんです。今回のレコーディングでは多くのサポートがあってやっと完成しました。しかも超大満足の内容になって、すごい嬉しかった。
ごっきん:牛丸が「チャリ乗る曲作った~」って持ってきた曲があって、今までベースのパートを褒められたりすることってあまりなかったけど、ベースを録音した時に「かっこいい」って言ってもらえて。疾走感のある曲なんで、めちゃくちゃシンプルにしようって心がけて弾きました。

——バンドをやっていてよかったなと思う瞬間はどんなときですか?

牛丸:ネットとかに上がってない曲の歌詞とかをインスタとかに書いてる子を見つけた時ですね。ちゃんと私たちの音楽を聴いてくれてる人がいっぱいいるんだなって。作品をちゃんと買って聞いてくれてるのを実感できる時が一番嬉しい。

——これからの展望などあれば教えてください。

牛丸:売れたいってのはもちろんあるけど、今回のアルバム『HOUSE』くらいのテンションの作品を継続してリリースしていけたらいいな。死ぬまでバンドを続けたいとまでは思ってないですけど、やれるところまではやり遂げたいって思ってます。