RAF SIMONS

デヴィッド・リンチと、反旗を翻すクリエイティビティ:RAF SIMONS 19AW

Calvin Kleinを離れたベルギーの鬼才、ラフ・シモンズが見せつけた、唯一無二の存在感。

by Steve Salter; translated by Ai Nakayama
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22 January 2019, 3:26am

RAF SIMONS

Calvin Kleinのチーフクリエイティブオフィサーを退任後、初となるラフ・シモンズのショーは、まさにラフ・シモンズそのひとを象徴していた。サウンドトラックはJOY DIVISION、ベルギーのポストパンクバンド、WHISPERING SONSによるライブ、デヴィッド・リンチ監督作品のスチルが施されたアイテム。彼の姿勢、そして彼の過去、現在、未来全てを表現するショーだった。昨年12月、彼がCalvin Kleinを去ることが報道されると、Instagramには黒いハートマークがあふれたが、今や彼の帰還を祝うバンザイマークがそれに取って代わった。王は死んだ! 王様バンザイ!

raf simons autumn winter 19

ラフはRAF SIMONSのショーの成功を祈るひとたちに囲まれながら、ショーの前に「今回のコレクションは、いろんなゴタゴタが起こる前にもう完成していた」と語った。つまりデヴィッド・リンチにインスパイアされた、反旗を翻す挑戦的なコレクションは、Calvin Kleinのデザイナー退任に対する直接的な反応ではない。社会政治的に動揺した現代を反映したものだ。「すべての土台がトラブルの元と考えているけど、同時にそれをネガティブにとらえたくないと思ってる。だって、これから何が起こるか想像するのってすごく楽しいから」

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彼が自らの名を冠したRAF SIMONSを創設したのは1995年。以来彼は、このブランドの下、スキニースタイルの若者たちの現実を徹底的に提示することで、やたらとセクシーさを強調するメンズウェアに反抗、挑戦してきた。「日焼けしたイケメン、みたいなフィクションは、僕が表現したい世界と正反対だった」と、彼本人をゲスト編集長に迎えたi-DのThe Inspiration Issue(No. 206, February 2001)で、ラフはインタビュアーのジョー・アン・ファーニスに明言している。マルタン・マルジェラやヘルムート・ラングなどのデザイナー、そしてアントワープのパンクシーンで活躍していた友人たちにインスパイアされた彼のヴィジョンは、当時圧倒的にダークで、ダーティで、アンダーグラウンドだった。それから24年、カルト的人気を誇り、数々のブランドのクリエイティブディレクターを務めては成功を収めてきたベルギーの鬼才は、自らの現実を見つめ、自らの生活、好きなもの、ハマっているものをコラージュしながら、システムへの抵抗を続けている。そのまなざしの先にあるのはノスタルジーではない。それは可能性を絶えず促し、エネルギーが渦巻く新たな場所へと私たちを導いてくれる。「服をみせたいのではなく、私自身の姿勢をみせたい」。彼のウェブサイト〈rafsimons.com〉には、彼の言葉が掲載されている。「素材は記憶、そして未来のヴィジョン。それらを現代世界にもってくる」

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今回もいつものRAF SIMONSらしく、過去/現在/未来の境界線を曖昧にするショーだった。Diorのアーティスティックディレクター退任後初となった2016年秋冬コレクションは、ショーの日程が偶然にもデヴィッド・リンチの誕生日と重なり、デヴィッド・リンチへのラブレターと化した。そしてその3年後、同じように大手ブランドのクリエイティブディレクターを退任したこのタイミングで、ラフは再びデヴィッド・リンチに回帰した。今回は、目に涙をいっぱい溜めたローラ・ダーンの顔をはじめとする、『ワイルド・アット・ハート』と『ブルーベルベット』からのスチルが、ニットウェアや特徴的なシルエットのテーラリングに使用されている。デヴィッド・リンチは、ラフ・シモンズにとって〈スピリット・アニマル〉なのかもしれない。

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2019年春夏コレクションで、メンズウェアの巨匠たるラフは、ストリートウェアからの脱却を宣言した。彼が「新しい輪郭、新しいかたちが必要だ」と説明したのは今年6月のバックステージのこと。「もちろん、僕もストリートウェアを発表してきた。でも今は、プリント入りフーディがあまりに多すぎる。何かが変わらないと」。そして彼が新世代のために掲げたのは「DIY・ミーツ・クチュール」。それをさらに掘り進めたのが、2019年秋冬コレクションだ。

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「新しいクリエイションには、必ずしも歴史が働きかけているわけではない。ファッションもそう」とラフ。「ファッションの記憶は今や消えているも同然で、現在のファッションは過去の影響をそこまで受けてない。もうみんな、1年前の作品には共感しない。僕にとって大事なのはそこだ。オリジナルであること、進取の気性に富むことは、僕の大切な原動力。僕らが創造しようとしている作品に関心を抱いてくれるひとたちとの対話と同じくらいに大切」。そんな彼が次に目指すのは? 「ずっと前から引退については考えてる」とラフは思案する。「今は自分がどう引退して、そのあとどうなるかを見たい、っていう気持ちのほうが強い」。彼の革命に続く気概のあるデザイナーの登場が待たれる。

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This article originally appeared on i-D UK.

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