ケープタウンのヒップホップ・シーンを牽引するラッパー7組

南アフリカの写真家イムラーン・クリスチャンが地元のミュージシャンにカメラを向ける。

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mar 5 2018, 10:32am

写真家イムラーン・クリスチャン(Imraan Christian)は、南アフリカの若者たち——抗議運動に身を投じる学生たち、植民地主義と戦うZ世代——の姿を捉えて、一躍有名になった。最近、グローバルな音楽プラットフォームBOILER ROOMが南アフリカを訪ねた際、この政治意識の高い24歳のヴィジュアル・アーティストに、ある仕事が託された。盛り上がりを見せるケープタウンのヒップホップ・シーンで、いま抜群に輝いているMCとプロデューサーをスナップするというタスクだ。私たちもぜひ、彼らのことをもう少し知りたい。

Nyota
コンゴ、アイルランド、南アフリカ共和国の血をひくNyota Parkerは自称「ノン・バイナリーで、ノン・コンフォーミスト(非順応主義者)」。17歳のラッパー、シンガー、ソングライターであるNyotaのサウンドは、トラップ、ジャズ、ブーンバップの重なる辺りでバランスを保っている。本人曰く「トラズ(Trazz)」。「自分は常に限界を広げてシステムを揺さぶっている。システムに戦いを挑む、特別な視野の開いているファイターたちの世代に影響を与えたい」とNyotaは言う。「ほとんどの人たちは、実際に起きていることを見ていない。権力を持つ者たちが見せたいと思うものだけを見ているから」。スワヒリ語とリンガラ語で「星」を意味する名前を持つNyotaは、ケープタウンにはイプホップのプラットフォームやイベントがほとんどなく、その結果としてまだ発掘されていない才能がたくさんあると感じている。それはそれとして、2018年はケープタウンの年になるとNyotaは考える。なぜなら「連帯こそが成功への唯一の道」であることに、人々が気づき始めているから。

Stiff Pap
ラッパーのAyema ProblemとプロデューサーのJakindaのふたりでStiff Pap。自分たちを、この世代——共感できる音楽を求めているケープタウン・キッズのニューウェーブ——を代表する声と考えている。ふたりは、サウスアフリカの若者たちとナイトライフについてのトラックを書く。例えばデビューEPに収録された「Based on a Qho Story」は、ウムラジ出身のティーンが初めてuQho(エクスタシー)でトリップ体験する物語。このデュオはクウィト、ゴム(GQOM)、ハウスとヒップホップを融合させて、ユニークなバランスが最高のエレクトリック・ミュージックを作り出す。ヒップホップが本当に盛り上がるには、ケープタウンはまだまだ白人的すぎる、というのがStiff Papの意見だ。国内でもっとも実験的なアーティストが、この街を拠点にしているとはいえ。「街で力を持ってるやつらは、ヒップホップなんてあまり気にしてない」ふたりはため息をつく。

Dada Shiva
ケープタウンのキーパーソンDada Shiva またの名を Da Don Dadaは、すべてに神聖さを求めるような人物だ。23歳のラッパーにしてTone Societyのメンバーでもある彼は、複数のパーソナリティを使って自分の音楽に両極性を持たせ、人間と神の同一性に思いをはせる。「Dada」には、彼のニックネームとアヴァンギャルド芸術運動ダダイズムの両義的な意味がある。Shivaは自分の痛烈なフロウを「ソクラテスの巧みな比喩とキリストの大工仕事」に例える。そして、何事も潜水艦的/宇宙空間的なサウンドにしておくことを好んでいる。「宇宙の果てと深い海の底の類似性を考えれば」とShivaは説明する。「我々は両方の場所を同じように体験するという結論が導き出せる」
Shivaの考えによると、いまのケープタウンの状況のせいでアーティストたちは極小の分離主義的ムーブメントを作り「みんなが自分の国家を持ちたがっている」。「そういう意味では、それぞれのアーティストが島のようなものだと言える」と、Shivaは思いを巡らせる。

Lurah
Lurah(別名Kapatown Boyそしてかつての名はLusapho Burwana)は、フィリーの愛称で知られるケープタウンのタウンシップ(黒人居住区)、フィリッピの出身。彼はケープタウンのヒップホップ・シーンを、隠された爆弾、爆発を待つ小型の荷物に例える。14歳でラップを始め、それから着々と強さを増してきた。音楽に関して言えば、Lurahは完璧主義者だ。彼のヒップホップにはトラップの影響が強く表れているが、「全部の曲にソウルを感じさせるものがある」よう心がけていると言う。音楽ではアクテヴィズムを色濃く出さない代わりに、自らの野望や体験してきたことを曲にする。いつでも自分を取り巻く環境とのつながりを忘れないことで、彼の言う「リアルさ」を音楽に吹き込んでいる。

Master Kii
Master Kii(Tando Moyake)は19歳のインディペンデントなラッパー。MF Doomやウータン・クラン、Quasimotoのようなオールドスクールのヒップホップのヴァイブスに現代的なエッセンスを加えて、ケープタウンのアンダーグランド音楽シーンに届けている。彼の音楽は90年代のローファイなブーンバップの影響がかなり強く、そこにクールなイーストコースト・ラップのフレーバーが混じり合って、心地よく耳を包む。Kiiは国際的なコネクションを求めて、米国や日本の人たちともオンラインで音楽のコラボレーションを行っている。

Uno July
ググレツ生まれのUno Julyの父親は、ザンビアに亡命していたこともある自由の闘士だ。Unoはケープタウンではおなじみの人物で、2005年からこの街のヒップホップ・シーンを動かす存在だった。最初に広く名前を知られたのは、ケープタウンの伝説のヒップホップ・チームIll Skillzのメンバーとして。その後2015年のデビューEP「Best Kept Secret」と2016年の「Uno ‘n Only」でソロとしても有名になった。Unoはケープタウンのヒップホップ・シーンの盛り上がりを、ヨーロッパやアメリカのカルチャーの影響が流入してきたことによる世代的なものだと言う。彼の説によれば、ケープタウンの街の政治的な状況や分離政策が、結果としてそこに住む異なる民族性を持つ人々のスタイルや言語に多様性を生じさせた。そのもっとも顕著な例としてあげられるのが、Uno Julyというわけだ。

Wah Li
言葉を操る才能に恵まれたWah-Liは、言葉と完璧に戯れるスキルの持ち主だ。要するに技術的な正確さがある。リリックは一行ごとによく構成され、ライムは複雑でかつ統一感がある。2014年、彼はBack To The City Festivalの10Kチャレンジで、国中から集まった何千という参加者の中でベスト20に選ばれた。彼の周辺の他のMCたちと違って、Wah-Liは異なるタイプの音作りを追求することに熱心だ。自身の領域の外側の音楽を積極的に探ろうとする彼は、そうすることで常に多方面に影響を与えていくはず。

Credits


Photography Imraan Christian
Art director Haneem Christian
Assistant Joshua Pascoe

This article originally appeared on i-D UK.