人生の師、ジェフ・クーンズ

ジェフ・クーンズが、アート、アクセシビリティ、そしてGARAGEへの最新映像作品における『超越』の本質について考えを巡らせる。Supported by Louis Vuitton.

by Erin Schwartz; translated by Aya Takatsu
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16 januari 2018, 6:15am

最後に『超越』を感じたのは、マンハッタンからニュージャージーへ向かう電車が、途中セコーカスにある荒れ果てた沼地を横切ったときだった。何層にもグラフィティが塗り重ねられた錆だらけの信号小屋や、茶色のホコリがしっかり積もったコンテナ、薄緑色の水草が車窓から見えた。そこにあったのは、工業用に利用され、また戻ってくるというひとつのエコシステム。このときアオサギを見た。たった1羽、翡翠のような緑色の水に立ち、側には膨張して破裂したタイヤが浮かんでいる。悲しみと同時に、私は貴重な鳥がここで繁殖しているかもしれない奇妙な希望も感じたのだった。

私は、そこではっきりと、もっと普通の場所――瞑想、アート、自然の風景、朽ち果てていない純粋なままのもの――の中に『超越』を見つける助けが必要だと感じた。幸運なことに、GARAGEに向けた最新映像作品『Jeff Koons’ Guide to Transcendence』で、私はジェフ・クーンズに指南を仰ぐことができたのだった。

第1の教え:『超越』は陳腐さの中に見ることができる。アートのエクスタシーはごく限られたマスターピース――システィーナ礼拝堂や、フィラデルフィア美術館でサイ・トンブリーのイーリアスを見たときの高揚感――に由来するものだが、ミラーボックスの中に収められた風船の花を素晴らしいと思っても一向に構わない。「ものを作りたいと思うことで、コミュニティの全員が利益を得ることができるのです」とクーンズは言う。「その階層構造がないと、観る側のみが力を得てしまいます」(参照:クーンズはコメディ映画『タラデガ・ナイト オーバルの狼』を素晴らしいアート作品だと賞賛している)。

第2の教え:『超越』はある種の私欲のない状態のこと。見知らぬものとの出会ったとき、ひとは未完成で作り変えられた状態になるから。クーンズは、どこにでもあるような庭のオーナメントから着想を得たディープブルーの反射ボールを、マスターピース的なアート作品の中に落とし込む。文字通り、絵の中でその物体を見せるためだ。「何年もかけて、『超越』とは、まさに自己の外側にある何かに自身を明け渡すこと、そして、自己の外側にある何かを見つけることで体験できるのだと学びました」とクーンズは話している。

平凡に潜む美しさ?要チェック。自分の外側にある何かとのつながりを感じること?これも要チェック。クーンズの解説によって、ニュージャージーの沼地で感じた『超越』の瞬間はそう悪くなかったことがわかった。さて、私はこれからアオサギに関する深遠なアート作品をつくらなければならないので、今日はこのあたりで。