日本現役最長パンクバンド、the原爆オナニーズのドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』

今池ハードコアは死なず。還暦過ぎのパンクバンドは一体どこまでゆくのか?

by Ai Ito
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06 October 2020, 4:36am

the原爆オナニーズは、ずっと前からレジェンドだった。結成は1982年、メンバーの交代はあったものの、日本が誇る現役最長バンドで、90年代に絶大な人気を誇ったBLANKEY JET CITYの中村達也や、Hi-STARNDARDの横山健が一時期在籍していたことでも知られている。

「愛知&名古屋って不思議なエリアだよね。ハードコアが、ごく一般的に認知されているんだから」と『JUST ANOTHER』の劇中でボーカルのTAYLOWが語る場面がある。筆者の出身は東海地方だが、名古屋(愛知県)には確かに独自のハードコア・パンクシーンが存在する。枚挙にいとまがないくらい個性的なバンドが多いのだ。だけどそのすべてはthe原爆オナニーズから始まったと言っても過言ではない。

地下レーベルLess Than TVに密着したドキュメンタリー映画『MOTHER FUCKER』(2017年)の後、次回作の構想を練っていた映像作家、大石規湖(おおいしのりこ)は、2018年9月名古屋の「今池まつり」で老若男女を熱狂させている地元のパンクバンドの姿を目撃する。彼らが登場すると、老若男女が一斉にサークルをつくり、モッシュピットが繰り広げられ、ダイブまで始めてしまう。「今年のサークルはイマイチだったな」とモッシュピットを評してるおばあちゃんまでいるらしい。その衝撃が、彼女が今回のドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』の制作に向かわせた。もちろんそのバンドがthe原爆オナニーズだったわけだ。

「なぜこのバンドは愛知県を拠点にし続けているのだろう。なぜバンドに専念しないで普通の仕事をしているのだろう。なぜ60歳を過ぎて今なお激しいパンクロックに拘っているのだろう」ワンカメでバンドマンたちに寄り添い続け、彼らから信頼を得てきた彼女だが、日頃から若いバンドが活動と生計の両立に苦しむ姿を目の当たりにしているからこそ、どうしても知りたい衝動に駆られたという。

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©️2020 SPACE SHOWER FILMS
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©️2020 SPACE SHOWER FILMS

ドキュメンタリーでは、その答えも含めて、単なるサクセスストーリーでは括れない、the原爆オナニーズのカッコよさとカッコ悪さが綴られる。40年近くもバンドを維持していくことの地道さや、人間関係、端からみたら苦行にしか見えない練習風景も、他のバンドに真似なんてできない〈the原爆オナニーズの姿〉だし、その全てがパンクなのだ。

新型コロナウイルスの影響で、the原爆オナニーズを実際にみる機会がいつ訪れるかわからない。だけど、できたら来年の「今池まつり」の頃には帰省してみたい。そして生きた今池ハードコアを数十年ぶりに体験してみようと思う。

JUST ANOTHER』は10月24日(土曜日)から新宿K’s cinema、10月31日(土曜日)から名古屋シネマテークほかにてロードショー。