from left: Tomoki Kamada (YELLOWUHURU), Riku Yasuba (karahari), Shota Murakoshi, Hiromi Matsubara (Romy Mats).

クラブとは異なる単位となりうるか? 下北沢の新たなスペースSPREADが若者を魅了する理由

音楽が根付く街で新たに育とうとしているクラブカルチャーがある。下北沢を拠点にこれから生まれるであろうストーリーの序章は、世界的パンデミックを乗り越えるところから始まった。

by Saki yamada; photos by Timothee Lambrecq
|
28 August 2020, 10:51am

from left: Tomoki Kamada (YELLOWUHURU), Riku Yasuba (karahari), Shota Murakoshi, Hiromi Matsubara (Romy Mats).

2020年という節目にゼロから何かを作り始めようとした人はたくさんいただろう。2月末のオープン直後、緊急事態宣言により営業自粛を余儀無くされた下北沢の音楽スペースSPREADもまたそのうちのひとつ。5月に実施した一ヶ月毎日配信番組「VIDEO SERVICE “AMUSEMENT”」を皮切りに注目を集め始めたこの場所は店長の安場陸(からはり)、制作に鎌田知希(YELLOWUHURU)と松原裕海(Romy Mats)という都内を中心にDJとして活動する3名とPAの村越翔太がコアメンバーとなって運営されている。現在は新型コロナウイルス感染症拡大によるダメージの為に、先延ばしとなった音響工事代などの資金を募っているところだ。

行き先の見えない状況下でも何かを生み出そうとするのは、作ることでしか現状を変えることができないからかもしれない。20代前半~30代前半の彼らから見た理想や求めている環境を知ることが、何かしらの希望へと変わることを願いながらインタビューを敢行した。

Spread-ID_Timothee Lambrecq_230820_1910819.jpg

「別の単位のものを生んでいきたい」

── SPREADをオープンするに当たりコンセプトやイメージはありましたか?

制作・鎌田知希(以下、鎌田):キャパシティーや機材の関係でガッツリしたフルバンドのライブセット対バンは難しいと思うのですが、フォーマットの制限は設けずに出来るだけ多くの音楽が集まる場所にしたい気持ちはあります。最初にこの物件を見たときに六本木にあったSuperDeluxe(2018年閉店)が持ってた面白さとかも出来そうだなとなんとなく思った。あとは基本的にはこの規模(キャパシティー100人程度)と天井が高くてコクリート打ちっ放しの感じが色々な実験をするのに面白そうだなとは感じています。基本的には音楽が中心のスペースになるとは思うのですが、クラブというよりも音がちゃんと鳴るスペースとして認識していて音楽以外でも個展で使うのもいいと思うし、演奏家が1週間貸し切って公演をやるのもいいし自由なスタイルであってほしい。

── 混ざることが重要だと思うのはなぜでしょうか?

鎌田:例えば、自分はハウス・ミュージックが好きなんですがハウスって多様性と愛だと思っていて。もともとはディスコのバンドから生まれたものであったり、ジャズ、ソウルはもちろん色々な音楽が詰まっている。感情も喜怒哀楽あるように一つの感情だけでは生まれない。それは世代に対しても同じだと思っていて、温故知新の感覚ですね。住む場所が違えば生まれてくる音楽も違うし、色々な要素が混ざりあって共鳴したり反発したりしあうことが新しいものに繋がるし面白いかなと思っています。

制作・松原裕海(以下、松原):自分はレーベルが箱発で始まっていくっていう形に興味があって、自分が主宰する解体新書や鎌田くんが主宰するFLATTOPがレーベル化する時にSPREADを拠点として、単なるパーティとしてではなく別の単位のものを生み出したいって考えてました。SPREADに集まった人が解体新書やFLATTOPと繋がって、その出会いをキッカケにリリースするとか、ここがコミュニティの軸になる。そういうポジションにできたらいいなって話を鎌田くんとはしてました。

── FLATTOPと解体新書は近いシーンでそれぞれ活動していましたが、今回本格的に同じ取り組みをするようになった経緯を教えてください。

松原:もともとは海外アーティストのプロモーターやブッカーとしてSPREADを手伝おうとしていたんですけど、緊急事態宣言後にSPREADが一ヶ月毎日ライブ配信をするって決めた時に鎌田くんから相談を受けて。その時にお互いのパーティの状況やSPREADの方向性、下の世代について3時間くらい電話したんです。僕やCYKは、例えばContact Tokyoの規模で冠を付けてパーティをやらせてもらっていますが、予算、ブッキング、プロモーションといった失敗談を含むノウハウを伝えられる場所にできればいいねって話してました。

鎌田:小箱と大箱それぞれに役割があると思いますし、とても重要な場所だと思っています。SPREADが100~120人くらいのキャパなので、その中間を繋ぐ側面を持つ場所になれたらいいなと思っています。例えばやり始めの若い人が少し挑戦で使うのもいいし、逆にお客さんを沢山持っている人がコンセプチュアルなパーティをする場として使ったりもできたらないいなと。

「遠慮なく言い合える場所」

── 現在のクラブカルチャーにおける20代前半のシーンはどのような雰囲気でしょうか。

鎌田:僕の場合はいろいろな世代の人の力をお借りして混ぜながらイベントを作ることが多かったんですけど、今の若い子は同世代の演者とお客さんが集まってパーティしているイメージがあります。それで成り立ちながらそれぞれのコミュニティが生まれていることは凄く良いなと思いますね。単純に仲間と自分達最高って表現して場を作って、そこに同世代のお客さんが集まってパーティーになる。最高。そこに刺激をもらったり学ぶことは沢山あるので、逆に若い人がその先に広がることとして自分やSPREADが何を提供できるのかってことが大事だと思います。

── 安場さんは現在23歳ということですが、SPREAD店長になった理由は何ですか?

店長・安場陸(以下、安場):5月のライブ配信を手伝っている時に誘ってもらって店長になることを決めたんですけど、理由は……配信で使った機材をTHREEってライブハウスに返しに行った時、店長がすごく良い顔をしていたから(笑)。

一同:(笑)。

安場:喋りやすい店長がいたら良いなって思いました。制作はFLATTOPでもお世話になっている鎌田さんがいたりするし、なんとかなるかなって。アルバイトの人がやりたいことをやりたいって気軽に言えたり、アーティストの子でも年近い子がやりたいことを遠慮なく言えて、SPREADを使ってできることは力になってあげられたらいいなって思ってます。

「下北沢だからできること」

── クラブが集結している渋谷と違い、下北沢は人々の生活により近いエリアです。もともと音楽やアートが根付いている街でそういうものが好きな人が集まりやすい場所だと思いますが、そういった環境についてはどう感じていますか?

安場:現在、平日にバー営業していることもあって近所を散策したりするんですけど、下北沢は変に流行や色がついていないからSPREADみたいなスペースがあってもおかしくない場所だとは思います。もともと音楽がある街になかったものができるっていうのは、例えば昼間ライブしている人が居酒屋に行く代わりにSPREADや他のクラブで飲む可能性だってあるし、何か起こりそうってワクワクがあります。

鎌田:SPREADは場所でなく物件が最初に決まったので、後から下北沢でできることを考えている状態なんですけど、人の生活圏ってことを意識することは大切だと思います。近所のクラブと新しいものを作っていくことも可能なわけで、そういったことが下北沢でやる意味あるかもしれないです。

PA・村越翔太(以下、村越):例えば11月には近所のCOUNTER CLUBと回遊パーティしようって話があります。LIVE HAUSの人も遊びに来てくれたり、そういうコミュニケーションは始まっているのでそういう輪が広がっていって下北沢にもきちんと馴染んでいけたら嬉しい。

松原:下北沢ってことについて言えば、SPREADに遊びに来た友達が「久々に下北きたけどなんか変わったね、いいね」って言ってくれたり年上の人達が懐かしい気持ちになってるのを見て嬉しくなりました。ここが下北沢に来る一つの目的になったらいいな。

「難しいことはせずにコミュニティを作る」

── そうしたことを実現させるためには何が大切だと思いますか?

鎌田:自分たちが面白いとか良いと思うものに集中してやっていきたいです。それから体験できる場として遊びにきた人が「来て良かった」と思える環境を整えること。そのために音響工事をするし、接客もブッキングも手を抜かない。店としてはそういうところが大事だと思います。コロナも相まって今はとても難しい状況だけど、実際に見えるもの感じることとか生を大切に生きたい気持ちは変わらないです。

安場:これは理想論かもしれないですが、僕らが思っている面白いことは混ざることだと思うので、あるアーティストを見に来た人が他の出演者を見てやばいって思ったり、普段聞かない音楽を体験してそこからのめり込んだり、人が人を呼んだり、そういう広がり方がいいな。

── 2020年上半期に感じたことや発見はありましたか?

安場:自粛で人と会えなくなった時にどうして人前で音楽をやるのかって話を友達としてたんですけど、自分の好きなことをやりたければ人前に出さなくても家でやってればいいじゃないですか。それをわざわざやるのって共有する喜びというか、自分ひとりの体験ではできないことがあるってすごく感じました。本来、自分の持っている感情って言葉に当てはめたりしないとできないわけで、それが顔を合わせたり音楽を一緒に聞くことで叶うのは素晴らしいことなんだと実感しました。

村越:DJは人前で音楽を流すことで成り立つから、本質的にそうなのかもしれないですね。自分としては関わる人が変わってきたな、と。人と会うことが困難になって、その中でも会える人って特別な関係というか、大事な人だったり。そういうことは感じました。

松原:音楽って脆いけどすごく強い。生活の第一ではないかもしれないけど、救ってくれるものだと思います。

鎌田:音楽に救われた経験があるから今こういう活動をしているんですけど、いろいろな大切な場所がクラウドファンディングやショップ販売を通して救われているのを見て、そういう場所を守りたい人がたくさんいることに希望は感じました。自分達はまだ何もやっていないから、まずは今までやってきて作ってきた場所が守られることが大事だと思う。そこが作ってきてくれたから、今自分達も新しいことを始めることができるってことは忘れたくないです。そういう希望を見せてくれたからこそ、こういう状況の中でも音楽でできる面白いことを模索しながらそういう場所になれるように頑張って行きたいです。

SPREAD Instagram
https://www.instagram.com/spread_shimokita/

SPREAD CONTINUE PROJECT
https://camp-fire.jp/projects/view/313068

「SPREAD」クラウドファンディングの締切:2020年9月3日(木) 23:59 PM
「SPREAD」リターンの発送予定時期:2020年11月上旬より、順次発送予定。

『SPREAD CONTINUE PROJECT』にて公開中の一部リターンアイテムはこちら。

Spread-ID_Timothee Lambrecq_270820_TIM4422.jpg
SUIMIN WEARS SPREAD CONTINUE PROJECT RETURN ITEM COLLECTION.
Spread-ID_Timothee Lambrecq_270820_TIM4303.jpg
SUIMIN WEARS SPREAD CONTINUE PROJECT RETURN ITEM COLLECTION.
Spread-ID_Timothee Lambrecq_270820_TIM4185.jpg
A VIRGIN WEARS SPREAD CONTINUE PROJECT RETURN ITEM COLLECTION.
Spread-ID_Timothee Lambrecq_270820_TIM3962.jpg
MIU YAMAMOTO WEARS SPREAD CONTINUE PROJECT RETURN ITEM COLLECTION.
Spread-ID_Timothee Lambrecq_270820_TIM4051.jpg
YELLOWUHURU WEARS SPREAD CONTINUE PROJECT RETURN ITEM COLLECTION.