低身長の男性に春到来? TikTok発の〈ショートキング〉ブームとは

高身長の男性が席巻していたマッチングシーンで、いま新たな変化が生まれつつある。

by Laura Pitcher
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24 May 2022, 9:15am

「一応言っておくと身長は6フィート(約183cm)」。Tinderのようなマッチングアプリで男性のプロフィールを見ていると、このような言葉が頻繁に出てくる。高身長がマッチング成立に望ましい条件というのはずっと理論上の話だったが、最近それを裏付ける研究も発表された。この調査によれば、背の低い男性が高身長の男性と同等に魅力的とみなされるためには、後者より高収入でなければならないという。例えば、身長168cmの男性が183cmの男性と同等の魅力を得るには、年収が17万5000ドル(約2200万円)高くなければならない。このような偏見がミソジニー、身体障がい者差別、人種差別に根差していることは明らかで、しばしばアジア人男性が矢面に立たされる。しかし、春分も過ぎた今、ネットユーザーたちが高身長男性によるマッチングシーンの独占を指摘したことで、変化が生まれつつある。〈ショートキング〉に春が来たのだ。

コメディアンのジャブーキー・ヤング=ホワイトが2018年にツイートして以来、〈ショートキング〉という言葉が世の中に浸透して久しいが、女性が高身長の彼氏を〈ショートキング〉と呼んでその反応を見る、という動画が話題を呼ぶと、このトレンドはTikTokで瞬く間に拡散した。結果として高身長男性の根深い自信のなさが露呈したが、その後、当事者である低身長の男性たちがTikTokでこの言葉を奪還することになる。「のっぽさんたち悪いね、次に来るのはショートキングだ」とあるクリエイターは投稿した。女性たちも身長の低い男性とデートしたいという願望を表明し、「これからは180cm以上のひとはお断り」と宣言するようになった。幸せなカップルたちが身長差を讃えるビデオを投稿し始め、有名なビデオにジェイダ・ブードラムが投稿した「ショートキングの春」を宣言するコメントには、24万以上の〈いいね〉がついた。

「男性として生きていながら小柄で痩せている」ことに悩んでいるクィアでノンバイナリーのアイザック・シルヴィア・ルッカーによれば、ネット上でのショートキング人気は、ゼンデイヤとトム・ホランドの身長差(とゼンデイヤがトムの腰を抱いて歩く写真)によるところが大きいという。「ゼンデイヤが自分より背の低い相手と付き合ったことが、ミソジニーや男女二元論的な文化的期待、ホモフォビアに深く根差す、既存のジェンダー規範や期待をひも解いていったのです」とアイザックは説明する。モデルとして、ずっと身長に複雑な思いを抱えてきたアイザックは、真の意味での身体多様性を讃える〈ショートキング〉ブームを推奨している。この現象はまだ始まったばかりだという。

アラバマ州に住む23歳のトランスのフォトグラファー、ダミアン・ブライアントは、マッチングアプリでの「身長何センチ?」という質問に不安を覚えると打ち明け、身長を聞いてこない相手との方がうまくいく確率が高いと語った。168cmのダミアンは、しばしば身長への違和感に襲われる。「トランス男性にはトランス男性としての社会的な期待がつきものですが、そこにシス男性とその身長に対する期待も加わります」と彼はいう。「身長は必要以上にその人のキャラクターを物語るものに仕立て上げられていると思います。女性的や従順、ソフトといった言葉は、背の低さに結びつけられがちで、僕たちトランス男性は決して100%男性としてみなされることはないという壁にぶつかっているように感じます」

ダミアンはショートキングという言葉を、ネット用語の〈スキニー・クイーン〉と同じくらい侮蔑的なものだと考えている。「社会が身長6フィートの男性へのこだわりを手放すまでには、まだまだ時間がかかるでしょう」と彼は続ける。「この先、もっと小さい男性を受け入れようという論調が広がっていくかもしれませんが、今は見せかけの〈ウォークネス(※社会問題に高い意識を持って取り組むこと)〉の時代でもあるので、実際に目にするまでは信じられません」。それでもダミアンは、これからの季節、身長を理由に躊躇することはないと断言する。「今年の春の僕は、セクシーで、チビで、マスキュリンです」

マッチングシーンで最も葛藤しているトランスコミュニティは、〈ショートキングの春〉はついに身長の高低による差別を解消するのか、それともネット上のトレンドの多くがそうであるように、見かけだけに過ぎないのだろうか、という疑問を投げかけている。フィラデルフィア州を拠点とする34歳のコメディアン、ジュール・ポズナーは、まだ現実での変化は実感していないという。「今年がショートキングの年になったらすごくうれしいです」と彼はいう。「そうすれば、お互いとの相性が表面的な身体的特徴に勝るのかどうか、自発的に考えるひとが増えるかもしれません」

〈ショートキングの春〉による変化はまだ実感していないものの、ジュールはまだ始まったばかりのこのトレンドを全体としてはポジティブなものとして捉えている。「ショートキングの春が別の前向きな変化をもたらす可能性は全くない、と言えば嘘になります。実際に体験するまでは信じられませんが」と彼はいう。さらに彼は、〈ショートキング・コミュニティ〉への貢献を讃えてトム・ホランドをノーベル賞にノミネートしたい、と語った。「トム・クルーズという前例がいたからこそ、今のトム・ホランドがあるんです」

身長による差別は、職場をはじめ社会のあらゆる場所に広がっている。『FORTUNE』誌がCEO500人の身長を調査した結果、米国のCEOの平均身長は、米国男性の平均身長より約6.3cm高い183cmであることが判明した。〈ショートキングの春〉は、魔法のように数世紀にわたる身長による差別や世の中の風潮を一瞬で覆すわけではない。しかし、それでもなお、このトレンドは既存の型にはまらないカップルにまつわる対話を生み出している。身長や体型の多様性が実生活でも尊重されるようになれば、未来のパートナーが自らの内なる偏見を見直すきっかけになるはずだ。

さらに、人生を通して〈ショートキングの春〉を体現している男性もいる。身長160cmのジェイソン・ニューマンは、妻が自分より数センチ背が高いことに心から満足している。今回の新たなトレンドは、彼が今までずっと感じてきたこと、つまり背の低い男性は背の高い男性と同様に魅力的で、高身長の男性があまりにも長い間「全ての愛情」を独占し続けてきたことを裏付けた。今こそ小さい男性が輝く時だ。新たな季節の到来を前に、彼はこう宣言する。「背の高い男性は世界を見つめる。背の低い男性が世界を変える」

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