A24製作のおすすめ映画24選:テン年代を制した映画スタジオのこれまで

数々の話題作を世に送り出している気鋭の映画製作スタジオA24。知らないうちに観ている作品もあるかも? 『ムーンライト』『ロブスター』『20センチュリー・ウーマン』『レディ・バード』『ヘレディタリー/継承』『スプリング・ブレイカーズ』などなど。

by Douglas Greenwood, and Iana Murray; translated by Nozomi Otaki
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21 February 2020, 8:34am

テン年代を代表する映画スタジオといえば? 果敢に映画製作に挑み、ストリーミングの常識を覆したNetflix? それとも、近年の興行収入を独占している大手フランチャイズをことごとく買収し続けているディズニーだろうか。

私たちの意見は少し違う。この10年の映画製作を定義づける究極のスタジオは、インディ映画を愛してやまない大胆な若者集団だ。彼らはニューヨークの地味なプロダクションを、ハリウッドでも近年類を見ない、世界一クールな配給会社へと成長させた。

2012年、3人の仲間たちが立ち上げたA24(エー・トゥエンティーフォー)は、数々の紆余曲折を経てきた。設立当初は、『ジンジャーの朝 さよならわたしが愛した世界』や『スプリング・ブレイカーズ』など、他のプロダクションがあえて挑戦しないような小規模なインディ映画を手がけてきたA24だが、今ではあらゆる映画賞を席巻している。アカデミーでは『ムーンライト』や『ロブスター』、『20センチュリー・ウーマン』などでこれまで計25部門でノミネートされ、快楽主義的なZ世代を描いた人気ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』で、TV業界への参入も果たした。

A24作品に興味はあるけれど何から観たらいいかわからない、という方のために、i-D編集部オススメのA24作品24本をリストアップした。テン年代を代表する珠玉の名作をじっくり堪能してほしい。

1.『20センチュリー・ウーマン』(2016)
本作は、マイク・ミルズ監督が彼を産み、勇気づけ、愛したエキセントリックな女性たちに贈るラブレター。アネット・ベニング、グレタ・ガーウィグ、エル・ファニングの3人が、エネルギッシュな演技を披露している。ミルズ監督のレンズを通してみる1979年は、とても有意義な体験をもたらしてくれる。

2.『スプリング・ブレイカーズ』(2012)
ヴァネッサ・ハジェンズとセレーナ・ゴメスがディズニー・チャンネルに向かって中指を突き立てて、とんでもない悪党に変身し、鮮烈な印象を焼き付けたハーモニー・コリン監督作品。フロリダを舞台に、悪行の限りを尽くす少女たち。飲んだくれ、ドラッグをキメ、間抜けな男たちを自分たちの崇拝者に仕立て上げ、数え切れないほどの重罪を犯す。まさにアイコニックな作品だ。

3.『ムーンライト』(2016)
このバリー・ジェンキンス監督による青春映画には絶えず水が登場するが、本作の物語もさざ波のように始まり、荒々しい波となって砕け散る。3部構成のストーリーのなかで、束の間のきらめきと穏やかな会話、その後に待ち受ける衝撃的な展開を通して、愛と黒人のアイデンティティが描かれる。

4.『エクス・マキナ』(2015)
アレックス・ガーランド監督による静謐なSF映画。主人公は、AIを搭載した本物そっくりな女性型ロボットで実験を行なう、若きコンピュータープログラマー。アリシア・ヴィキャンデルとオスカー・アイザックは、本作を最後にしばらく示唆的な作品には出演していない。残酷だが極めて美しい作品だ。

5.『レディ・バード』(2017)
本作の粗い映像は、長い時を経てすっかり色あせてしまった、大切な古い写真を思わせる。グレタ・ガーウィグのサクラメントへの愛がひしひしと伝わってきて、観ているこちらも、このカリフォルニア南西部の街が故郷のように感じられる。

6.『アメリカン・ハニー』(2016)
トラックのサンルーフから頭を突き出しながら、米国中西部を2時間半ドライブしたような気分を味わえる1本。アンドレア・アーノルド監督が世に送り出した本作は、雑誌の訪問販売で国中を旅する若者グループの姿を追う。シャイア・ラブーフの演技も素晴らしいが、真のスターは本作がきっかけでブレイクしたサッシャ・レインだろう。

7.『フェアウェル』(2019)
ルル・ワン監督の半自伝的なこの物語は、家族を結びつけると同時に崩壊させる嘘を通して、愛する者同士の切れることのない絆を描いている。しかし、〈普遍的な作品〉とは呼ばないでほしい。複数の文化的アイデンティティのあいだで葛藤したことのあるひとなら、誰もが共感できるストーリーかもしれないが、本作はあくまでアジア系のひとびとの物語だ。

8.『グッド・タイム』(2017)
全世界から絶賛を浴びているサフディ兄弟による作品。ロバート・パティンソン主演の本作は、映画祭の観客たちに神経をすり減らすような緊張感をもたらした。銀行強盗の兄が、NY周辺の街なかや郊外を逃げ回りながら、弟を刑務所から出すために奔走する姿を描く。

9.『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』(2017)
デヴィッド・ロウリー監督作品はいずれも唯一無二だが、愛、死、時間と空間について省察した本作は、もっとも奇妙な作品といえるだろう。親密な関係を描きつつも、全体としてはかなり意欲的な作品だ。それ以外に、ルーニー・マーラが5分間パイを食べ続けるシーンを説明できる言葉はない。

10.『HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ』(2017)
主人公は、『君の名前で僕を呼んで』のエリオ役でブレイクする前のティモシー・シャラメ。このダークコメディで、彼はケープコッドで過ごすひと夏のなかで恋に落ち、麻薬取引に手を染めていく高校生を熱演した。ティモシー出演作のなかではマイナーだが、不器用で愛おしい本作は一見の価値ありだ。

11.『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(2013)
ジョナサン・グレイザー監督による不気味なSFスリラー。緊張感に満ちた傑作だが、本作の肝はスカーレット・ヨハンソンを、獲物を求めて彷徨うエイリアン役に抜擢したことだ。本作はヨハンソンが有名女優であることを逆手に取り、グラスゴー訛りでナンパする彼女が、地上に降り立った地球外生命体に匹敵する存在であることをよく理解している。

12.『WAVES/ウェイブス』(2019)
アレクサ・デミー、ルーカス・ヘッジズ、ケルヴィン・ハリソン・Jrが共演し、賛否を二分した『WAVES/ウェイブス』は、初恋と家族からのプレッシャー、相反するそのふたつの連鎖反応を描いている。フランク・オーシャンの音楽が彩る本作は、めったにリアルに描かれる機会のない世代に捧げられたラブレターだ。

13.『ウィッチ』(2015)
「お前は美味しく生きたいか?」という囁きが耳に残る、背筋も凍るような民話。超常現象ホラーを媒体として、家父長制社会のなかで疑心暗鬼に陥る一家を巧みに描いたロバート・エガース監督による本作は、魔術を始めるためにもぴったりな1本だ。

14.『Mid90s』(2018)
主演は、ヨルゴス・ランティモス監督の『聖なる鹿殺し』のボブ役で知られるサニー・ソリヤック。彼はLAでひと夏を過ごし、スケートパークに慰めを見出す悩み多き13歳の少年を演じた。ハーモニー・コリンやラリー・クラーク作品を彷彿とさせる本作は、自分より遥かに大きく感じられる世界で成長していく少年に、温かな眼差しを向けている。

15.『魂のゆくえ』(2018)
ポール・シュレイダーの見事なキャラクター描写によって、イーサン・ホークは全く新しいタイプの〈セクシーな牧師〉に変身した。ホーク演じる小さな町の牧師は、気候変動についての知識を深めていくなかで、信仰の危機に直面する。21世紀の現実をまざまざと見せつける傑作。

16.『ヘレディタリー/継承』(2018)
観客を客席で吐かせようとする映画といえば、私たちを魅了してやまない、骨の髄まで凍りつかせる『ヘレディタリー/継承』をおいて他にない。アリ・アスター監督による本作は、子供の死後、ある一家が奇怪でおぞましい力に苛まれていく様子を描いている。

17.『荒野にて』(2017)
アンドリュー・ヘイ監督がメガホンをとり、愛する馬のために地の果てへと向かう孤独な少年の姿を追った心温まる西部劇。チャーリー・プラマー演じる主人公の目覚ましい成長に共感せずにはいられない。彼の演技はあまりにも繊細で、今にも砕けてしまいそうなほどだ。

18.『CLIMAX クライマックス』(2018)
ギャスパー・ノエ監督作品。ドラッグ三昧で狂乱に耽るダンサーたちの週末を描くサイケデリックな本作は、今まででもっとも狂気的な映画体験といっても差し支えないだろう。キディ・スマイル、ソフィア・ブテラが主演を務め、パリに住む演技未経験のアマチュアダンサーたちも多数起用された。一見するとめちゃくちゃなプロットだが、観客はキャラクターとともに凄まじい幻覚体験へと誘われる。

19.『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017)
唯一無二の持ち味、独特な映像表現で新たなジャンルを確立した、ギリシャ人監督ヨルゴス・ランティモスの作品。このおぞましいサイコスリラーで、彼は自らのスタイルを完成させた。エリー・ゴールディングの楽曲がこれほど効果的に使われる作品は、この先もきっとないだろう。

20.『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017)
フロリダのディズニー・ワールド周辺で暮らす貧困層の生活を色鮮やかに描いた作品。本作で主演を務めたブルックリン・プリンスは、2017年の映画賞シーズンに文字通りウォルマートを抜け出し、映画スターへの階段を駆け上った。大人顔負けの演技をみせる子役たち、厳しくも心優しいモーテルの管理人を演じるウィレム・デフォーの意外なほど繊細な演技をじっくり味わってほしい。

21.『ブリングリング』(2013)
愉快で、過激で、名ゼリフが満載。これぞソフィア・コッポラの強盗映画、という要素が詰まった作品。エマ・ワトソンのバレーガール(LA郊外の高級住宅地、サンフェルナンド・バレーに住む女の子)訛りは笑えるかもしれないが、彼女の「盗みがしたい(I wanna rob)」というセリフは最高だ。

22.『The Lighthouse(ライトハウス)』(2019)
嵐のさなか、大西洋に面する島に取り残されたふたりの男。ペニスのようにそそり立つ灯台が彼らの家だ。ニューイングランドを舞台に、モノクロで描かれるこの民話は、卑劣なユーモアや人魚に欲情するロバート・パティンソンなど、奇怪さに満ちているが、示唆に富んだ傑作でもある。本作の見事な映像は、タチの悪いゲップのように、何ヶ月も消えることはないだろう。

23.『スロウ・ウエスト』(2015)
『スロウ・ウエスト』は、タイトルが示す通り、西部劇を皮肉かつ冷淡に解釈した作品だが、単なる現代版マカロニ・ウェスタンには留まらない。コーエン兄弟作品のように冷笑的で現実を鋭く風刺する本作は、A24製作映画のなかでも知る人ぞ知る名作だ。

24.『ロブスター』(2015)
想像してみてほしい。もしA24が1987年のラブコメ映画『ブラインド・デート』をリメイクしたらどうなるだろう? ただし、パートナーができなければ、無防備な脱落者たちは自ら選んだ動物に変えられ、自然界で自力で生きていかなければならないという条件が加わる。それがこの殺伐とした不条理劇のテーマだ。ヨルゴス・ランティモス監督は、自身初の英語作品となる本作で世界的な名声を獲得し、2度目のアカデミー賞ノミネートを果たした。

This article originally appeared on i-D UK.

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