キム・ジョーンズ×ケイト・モス対談「僕の仕事は現代のカルチャーで何が起きているかを見ること」

20年以上にわたって親交を結んできたDiorのキム・ジョーンズとケイト・モス。i-D最新号の表紙を飾ったケイトが、マイアミで開催されたDiorのショー翌日に、キムを直撃。Stüssyとのコラボについて訊いた。

by Felix Petty; translated by Nozomi Otaki
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19 February 2020, 12:12pm

Kate Moss's story originally appeared in i-D's The Icons and Idols Issue, no. 359, Spring 2020. Order your copy here.

ケイト・モスキム・ジョーンズの出会いは誰も覚えていない。私たちが知っているのは、ふたりがファッション業界における長年の親友だということだけだ。

彼らの交流が始まったのは遅くとも2003年、セントラル・セント・マーチンズを卒業したキムが最初のレーベルを立ち上げ、メンズウェアの改革に着手したとき。以来ふたりは、キムがDior、Dunhill、Louis Vuittonのクリエイティブディレクターを務めるあいだもずっと同志であり続けてきた。

2018年、Louis Vuittonでのキムのラストコレクションとなったショーのエンディングで、キムはケイトとナオミ・キャンベルに手をひかれて登場。この記念すべき瞬間は、名だたるファッション業界を制したデザイナーの見事なウィニングランとなった。

しかし、ファッション業界の頂点に上り詰める前のキムは、控えめな店員だった。有名になるずっと前のSupremeやStüssyを英国に初めて紹介したカルト的人気を誇るブランド、GIMME FIVEで、創業者マイケル・コッペルマンとともに働いていたのだ。

そんなキムの最新のDiorプレフォールコレクションのコラボ相手は、Stüssyを立ち上げたショーン・ステューシーその人だ。彼は2019年末、ファッション業界から退きつつあったこのアーティスト/デザイナーを、マイアミで行なわれた壮観なショーへと誘い出した。

本コレクションは、ショーンが築き上げ、今なおキムのクチュールに影響を及ぼし続けているストリートウェアの世界に捧げられたトリビュートであり、ワイルドでサイケデリックで華やかな米国らしさを体現していた。

ショー翌日、私たちはショーの興奮冷めやらぬなか、幸運にも写真家マリオ・ソレンティにコレクションアイテムをまとったケイトを撮影してもらう機会を得た。ケイトがキムに質問を投げかけ、彼の最新のクリエイションにまつわる秘話を明らかにする。

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Kate wears all clothing Dior Fall 20 Men's.

ケイト・モス:キム、あなたのインタビューを始めるけど、まずは私のことを話さない?

キム・ジョーンズ:いい始め方だね。

ケイト:冗談だよ! まず訊きたいのは、Diorのクリエイティブディレクターに着任したとき、いちばん楽しみだったことは?

キム:クチュールハウスに入って、アトリエのチームといっしょに、パリを代表する有名ブランドで働けること。僕にとって二大クチュールハウスといえばChanelとDiorだから、Louis Vuittonの後にDiorで仕事ができるなんて感激したよ。

ケイト:あなたのDiorでの仕事を知らないひと、実際に見たことのないひとに説明するとしたら、どう説明する?

キム:僕の仕事は、もちろんブランドに関することも多いけど、同時に現代のカルチャーで何が起きているかを観察することでもある。商品がどのように人びとの手元に届き、どんなものを気に入ってもらえるか、という点では、僕はファッションよりもカルチャーに惹かれる。僕にとってはそのほうが興味深いんだ。ファッションは素晴らしいし、仕事をするのも楽しいけれど、最近はそれ以外のものにも目を配らなきゃいけないと思ってる。それが今、僕が注目していること。世界の人びとに目を向けるんだ。

ケイト:ショーン・ステューシーとのコラボは最高だった。彼って本当にステキなひとだよね。

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キム:ほんとに、彼とコラボできるなんて夢みたいだった! 僕は昔マイケル・コッペルマンの元で働いていて、彼はStüssyを英国で販売していたGimme Fiveの創業者だったから、ショーンのことは知っていたし、よく会ってた。14歳のとき、ロンドンに行って倉庫で35ポンド(当時のレートで約6000円)のTシャツを買ったことをよく覚えてる。皿洗いのバイトを何時間もやって手に入れたんだ。そんな彼が、今回のコレクションに参加してくれた。

ケイト:ずっと彼の大ファンだったの?

キム:うん、彼は僕らの時代のアイコンのような存在だったからね。教科書の表紙にあのロゴを貼ってた。

ケイト:彼がすべての始まりだったんだね。

キム:彼は草分け的な存在なんだ。Supremeのジェームス・ジェビアや、A BATHING APEのNIGOのずっと前から活躍してた。彼らはみんなショーンに憧れ、尊敬してる。今回は米国のマーケットのために何かしたくて。マイアミでショーをやる機会なんてなかなかないから、思い切りアメリカンで愉快なショーにしたいと思ったんだ。クラシックなDiorとはだいぶ違う感じにしよう、って。

ケイト:確かにすごく楽しかったし、パリのショーとは全然違った。パリのショーはいかにもクチュール的で、アトリエの技術が感じられる。今回のアイテムもパリでつくられてはいるけど、色づかいはすごくマイアミ的だった。

キム:今回参照したのはアール・デコ、それからムッシュ・ディオールが現役中に手がけた広告に登場する車。それが出発点になった。単にマイアミのアート・バーゼル開幕前夜だからアーティストとコラボするというわけじゃないけど、ショーンの作品は今まで僕らがDiorでコラボしてきたアーティストたちのような自信に満ち溢れているから、よし、彼とコラボしよう、って思ったんだ。彼は1997年以降、洋服はつくっていないけど、ペンと紙で素晴らしい作品を生み出してきた。それこそが僕にとってのアートだ。それから、もうひとりのコラボレーターはエア ジョーダンに決めた。もしムッシュ・ディオールが今の時代に生きていたら何に興味を持つだろう、って考えたんだ。それはスニーカーやApple製品かもしれないし、まったく別のものかもしれない。それが最高の出発点になるだろうと思ったんだ。

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ケイト:マイアミではたくさん声をかけられた?

キム:確かによく声はかけられるけど、みんな僕の作品を気に入ってくれてるひとばかりだし、自分の仕事を好きでいてくれるひとがいるのは嬉しいよ。僕にとっては、思い切りバズるのと同じこと。自分が知らないひとが自分の服を着てくれるのも嬉しい。最近のスニーカー人気はちょっと想像以上だけど、今回のコラボはすごく楽しかったよ。エア ジョーダンは大好きなスニーカーだし、いつも履いてるから。

ケイト:ステキだよね。私は大のスニーカー好きというわけじゃないけど、1足もらって帰ろうと思って。

キム:マイアミであのスニーカーを買ってくれたんだよね。

ケイト:そう、あなたのマネしたんだけどね。

キム:マイアミのショーはほんとに楽しかった。いかにもDiorらしいショーじゃなく、まったく違うことができたから。それが功を奏したと思う。

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ケイト:会場全体もワクワクしてたよね。でも、あなたがいろんな境界線を押し広げているからこそ、毎回のショーがこんなにも刺激的になるんだと思う。もちろんマイアミのショーも最高だった。こんなにたくさんのひと、豪華なゲストがDiorのショーを観にくるなんてすごいことだし、私もほんとに楽しかった!

キム:楽しかったし、チームのみんなも太陽が降り注ぐ場所で働けて喜んでたよ。フィッティングの休憩時間には、プールの周りに座っておしゃべりしたり。チームとも密にコミュニケーションがとれて仲も深まったし、たくさん笑った。パリだけに留まるんじゃなくて、環境を変えるのもいいね。互いのことをもっとよく知れば、どうすればうまく協働できるかもわかる。良いこと尽くしで最高だったよ。

ケイト:今回のコレクションで特に気に入っているアイテムは?

キム:ビーズのシャツかな。あとはスティーブン・ジョーンズの帽子。

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ケイト:私もあの帽子大好き!

キム:それからブライアンが手がけたニットも。あんなアイテムはきっと2度とつくれない。サイケデリックで、1960年代の米国的な雰囲気に満ちている。

ケイト:制作に1週間かかったっていう手編みのニットもあったよね? これぞクチュールのニット、って感じ。

キム:すべてのアイテムが同じ基準を満たすようにつくられてる。たとえば、制作に1200時間費やしたシャツ。いかにも米国的なスポーツウェアだけど、テーラリングの要素も取り入れた。60年代のハリウッドの豪華な雰囲気を表現したかったんだ。キューバのマーロン・ブランドとか、マイアミのジェームズ・ディーンみたいな。ムッシュ・ディオールは40年代や50年代を参照したけど、僕にとって豪華さの頂点は60年代なんだ。飛行機のなかでタバコをふかし、巨大なイスで酒を飲む。

ケイト:いつかコラボしてみたいアーティストは? 今まで憧れの相手とは何度も仕事をしてきたと思うけど、まだコラボできていないひとはいる?

キム:ひとりいるよ。それからもうひとり、どうしてもコラボしてみたい相手と今交渉中なんだ。だからまだ何も言えないよ!

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ケイト:楽しみ!

キム:i-Dが聞いてないときに教えてあげる。

ケイト:今回のコレクションから私にひとつプレゼントしてくれるとしたら、どのルック?

キム:3番目のルックはどうかな。ルドウィグ(・ウィルスドーフ)が着ていた、ニットに帽子、パイソン柄のショートパンツを合わせたルック。

ケイト:あれすごく好きだった!

キム:休日の散歩にぴったりなルックだと思うよ。

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Credits


Photography Mario Sorrenti
Styling Alastair McKimm

Hair Bob Recine at The Wall Group using Rodin.
Make-up Kanako Takase at Streeters using ADDICTION Beauty.
Nail technician Andrea Vieira. Lighting technician Lars Beaulieu.
Photography assistance Mikhail Yusufov and Ido Eyo.
Digital technician Kotaro Kawashima. Styling assistance Madison Matusich. Make-up assistance Megumi Onishi. Production Select Production.
Production Roly Diaz and Julian Allison. Casting Samuel Ellis Scheinman for DMCASTING.

Model Kate Moss at Kate Moss Agency.

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