『エクス・マキナ』とあわせて観たい映画5本

人工知能とそれを作り出した人間との関係をグラフィカルに、そしてミニマルな空間と語りで描いた映画『エクス・マキナ』。これから観るひとはもちろん、すでに観たひとにもお勧めしたい映画5本を紹介する。

by Sogo Hiraiwa
|
30 June 2016, 7:35am

ダニー・ボイル監督の『28日後…』では脚本を担当した、アレックス・ガーランドが満を持して挑んだ初監督作品『エクス・マキナ』。本年度アカデミー賞では、脚本部門にノミネートされ、視覚効果賞受賞を果たした本作は、登場人物も4人だけのミニマルな語りのSFスリラーだ。『エクス・マキナ』と併せて観るとより楽しめる映画5本を紹介!

1:『フランケンシュタイン』(1931)ジェームズ・ホエール監督
メアリー・シェリー原作の傑作ゴシック小説はこれまで、幾度となく映画化されてきたが、そのなかでも群を抜いて有名なのがこの作品。科学の力で新しい生命を創造しようと人里離れた研究所にこもるフランケンシュタイン博士は、『エクス・マキナ』に登場するネイサンとだぶって見える。世界最大のインターネット会社"ブルーブック"の社長にして、天才プログラマーの彼は山奥にある別荘で、美しい女性型AIの研究にしているのだが……。ガーランドは、この古典映画を脚本の下敷きにして『エクス・マキナ』を撮ったに違いない。

2:『イミテーション・ゲーム』(2014)モルテン・ティルドゥム監督
天才数学者のアラン・チューリングをご存知だろうか? 彼は、第二次世界大戦中、英国の諜報機関MI6の諜報員として、ドイツ軍が誇る暗号"エニグマ"解読に当たっていた。ベネディクト・カンバーバッチ演じるチューリングが、その役に抜擢されてからの波乱の半生を絞ったのがこの映画。あらゆる天才の例にもれず、その名前が称されて今日まで残っているものが2つある。コンピューター関連のノーベル賞とも言われる「チューリング賞」。そしてもうひとつが、「チューリングテスト」である。『エクス・マキナ』にも登場するこの試験は、"機械が知的かどうか?"を判断するもので、合格すれば、少なくともコミュニケーション上は人間と見分けがつかないほど高度な知能をもったAI(人工知能)だということが証明できるテストだ。『エクス・マキナ』で、美しい容姿の女性型AI"エヴァ"といかにも非モテなケイレブが対話をするテストシーンには、観ているこちらもドキドキしてくる。

3:『her/世界でひとつの彼女』(2013)スパイク・ジョーンズ監督
失恋したばかりの中年男セオドアは、ある日、人工知能型のOSをダウンロードする。起動すると画面からは溌剌とした女性の声が聞こえる。彼女はサマンサ。はじめは便利なOSとして彼女と接していたセオドアだったが、ユーモラスで人間らしい彼女に少しずつ惹かれていく。もしかすると恋愛は、「知的」な行為ではないのかもしれない。出会った瞬間からその終わりまで、恋愛は感情に溢れ、合理的とはいえない行動の積み重ねだ。しかし、だからこそ、恋愛は最も人間らしい営みなのだ。恋にときめき、嫉妬や拗ねることすらするサマンサは、AI以上のAI、限りなく人間に近い人工知能とも言えるかもしれない。だが、そんな彼女にも欠けているものがひとつだけある。カラダだ。『エクス・マキナ』に登場するAIたちは、カラダも持ち合わせている。それも完璧なプロポーションで。劇中では「AIに性は必要か?」という、SF的な問いがなされる。性をプログラムした張本人ネイサンがこれに対してどう答えるのかも見所だ。

4:『ポロック 2人だけのアトリエ』(2000)エド・ハリス監督
抽象絵画主義を代表する画家、ジャクソン・ポロック。1940年代、彼が時代の寵児になる以前のある日、ひとりの女性が彼のアトリエを訪ねてくる。自身も画家である彼女こそ、のちにポロックの妻となり、生涯にわたって彼の制作を支えたリー・クライズナーだ。この映画は、その2人の親密な関係を描いた自伝的作品となっている。ポロック作品のトレードマークでもあり、当時の美術界に衝撃を与えた技法に「ドリッピング」というのがある。キャンパスを床に置き、筆やスティックに付着させた顔料や塗料を滴らしたり、散らすことによって描く手法のことをいう。『エクス・マキナ』にも、ポロックの絵が登場する。大富豪であるネイサンが別荘に所有しているものだが、彼がその絵についての持論を語るシーンは、映画全体のテーマを考える上でも重要だろう。どんな内容なのかは、ぜひ映画を観て確かめてほしい。

5:『メトロポリス』(1927)フリッツ・ラング監督
ロボットやAIを題材にした映画の始祖とも言えるのがこの映画。90年前に作られたこの作品は、高度なテクノロジーの上に成り立つ未来都市「メトロポリス」を舞台に、富裕層と貧困層が二極化した階級問題を扱っている。イギリスの国民選挙の結果で思い知らされた通り、私たちが考えている以上に階級間の溝が深く開いている今日において、この映画はいまだに観る価値を失っていない。しかし、なにより『エクス・マキナ』と併せて楽しみたいのは、女性型ロボットの造形である。エヴァが流線型の魅力的でしなやかなボディを持っているのに対し、『メトロポリス』に登場するアンドロイド"マリア"はたい焼きかなにかの型かと見紛うほどの、単なる金属の塊だ。人型AIが実社会で活躍するのはまだ先のことかもしれないが、この90年間で進歩した映像技術とデザイン上の想像力を考えるに、その日は確かに近づいているのだと感じずにはいられない。

『エクス・マキナ』
監督・脚本:アレックス・ガーランド 出演:ドーナル・グリーソン アリシア・ビカンダー オスカー・アイザック ソノヤ・ミズノ 2015年 イギリス 108分 配給協力:パルコユニバーサル映画ⓒUniversal Pictures 全国ロードショー中
http://www.exmachina-movie.jp/

Credits


Text Sogo Hiraiwa

Tagged:
Culture
Her
Ex Machina
Frankenstein
Metropolis
pollock
imitation game
Sonoya Mizuno