世界最強のティーンバンド UNLOCKING THE TRUTH

ブルックリン出身のメタルバンド、UNLOCKING THE TRUTH。2億円の契約を破棄、自主製作でデビューアルバム『CHAOS』をリリースしたモンスターキッズの素顔とは。

by Seiko Watanabe
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28 June 2016, 7:05am

結成からSony Musicとの決別。「他の選択肢はなかった」

「ここまでの道のりは辛かったかってよく聞かれるけど、全然そんなことなかったね。むしろ楽しかったよ」と、バンドのリーダーでギターヴォーカルのマルコム(15)は語った。彼がバンドを組むと決めたのは5歳の時。きっかけは父トレイシーに連れて行かれたプロレス観戦だった。その会場で耳にしたメタルサウンドに魅了され、すぐにギターを弾き始めた。その後、友達のバースデーパーティで知り合ったドラム、ジャレッド(15)がアメリカ版アニメ『NARUTO』の主題歌に興味を持ったことから、トレイシーは彼にドラムを買い与えた。その後、アレック(14)をベースに誘って、バンド活動をスタートさせた。

小学生にして、タイムズスクエアで路上ライブを始め、瞬く間に急成長をした彼ら。そのあどけないルックスと相反する強く真のあるパフォーマンスは、路上を行き交う人々を圧倒した。ストリートパフォーマンスの様子はYouTubeで100万再生を記録。その勢いは止まらず、2014年ついに史上最年少でアメリカ最大のロックフェス、コーチェラへの出場を果たしている。ガンズ・アンド・ローゼズ、スラッシュ、マリリン・マンソン、モーターヘッドなど、数々のレジェンド達も彼らのステージを絶賛した。

同年、Sony Musicと約2億円で契約。契約内容は3枚のアルバム制作、プロモーション、ツアーに加え、高校の教育費も保証されていた。しかし、その後レーベル側の意図とバンド側の方向性にズレが生じ、彼らはその契約を破棄した。「商業的に成功したいなんて全く考えていない。いかに音楽に没頭できるかだけを考えているよ」。このマルコムの言葉が、この騒動の何よりの答えなのだろう。

「メタルが好きでもない僕ら世代の人たちが、僕らの音楽を聴いてくれているんだ。それって面白いことだよね」

彼らが暮らすブルックリンは、ジェイ・Zをはじめ多くのアーティストを輩出しているHIP HOPの聖地だ。盛り上がりつつあるバンドシーンだが、まだまだHIP HOP優勢のニューヨークに突如として現れたのがUnlocking The Truthだった。彼らのサウンドは、とてもシャープで躍動感にあふれ、黒人ならではのグルーヴを含んでいる。リハーサルの合間にマルコムは、iPhoneを片手にラップを口ずさみ、ジャレッドはピアノでクラシックを演奏していた。「もちろん僕らはメタルバンドに大きな影響を受けている。でも他にも僕らに影響を与えてくれる才能を持った人たちは沢山いるんだ」。ひとつのジャンルに偏らない、このハイブリッドな感覚こそ彼らの音楽の神髄であり、これからのバンドシーンの兆しとなるに違いない。

今月発売されたデビューアルバム『CHAOS』においても彼らは試行錯誤を重ね、ジャンル性豊かな音楽を生み出している。若さからの疾走感だけではない、洗練された楽曲の数々は幼少から培った彼らのセンスと経験の集大成だ。「ここ数年、特に技術的にかなり成長したし、ここに僕たちが経験した全てのモノが詰まっている。聞けば分かるよ」とアレックはコメントした。14歳の少年から放たれたこのせりふが、彼らが既にミュージシャンとしての自信と誇りを持って生きていることを伝えていた。

「有名になって裕福な暮らしをする。デカくてかっこいい家も買いたい」

州営団地"プロジェクト"出身のジャレッドが語った夢。多民族社会のニューヨークで生まれ、子供たちは幼いときから、自分を表現し成り上がる手段を模索し始める。家族は子供たちの好奇心を後押しすることで、彼らは才能を開花させ、好奇心を野心にかえていく。今月公開される、Unlocking The Truth結成から今に至るまでの様子を納めた彼らのドキュメンタリー映画『BREAKING A MONSTER』(日本公開未定)。本作では、幼少期の彼らを支える家族と、純粋に音楽に没頭しながらも、すでに音楽によって将来を見据える彼らの姿が映し出されている。

現在も、彼らのライブ会場ではマルコムの母が物販を担当し、メンバーの家族、親戚、クラスメイトが集まる。ステージ上からひとりひとりの名前を呼び、「ありがとう」と呼びかけると、会場は一気にアットホームな雰囲気に変わった。アレックに20年後どうなっているか? と質問すると「ビル・ゲイツより有名になってるよ」と答えた。何を迷うこともなく、自分自身の選んだ道を信じることしかしない。そして家族もこれを否定せず、音楽に打込める道をともに探している。「曲のほとんどは、日常生活の些細なことをきっかけに創ったもの。同世代の子たちにはそこを意識して聴いてもらいたいし、自分のやりたいことを一生懸命やって欲しい」とマルコムはキッズにエールをくれた。

Credits


Photography Mari Sarai
Coordination & Text Seiko Watanabe
Interview Yoshi Stoop

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