IMAZATO WEARS ALL CLOTHING MODEL'S OWN.

STRUGGLE FOR PRIDEの状況を変える揺るぎないスピリット

6 年の空白期間を経て、日本のアンダーグラウンドシーンのフロントに立つハードコアパンクバンド、Struggle For Pride。東京という街を体現し続け、若い世代のリスナーからも敬意を寄せられているフロントマン今里は静寂を破るノイズの彼方で何を思うのか?

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28 juni 2017, 9:25am

IMAZATO WEARS ALL CLOTHING MODEL'S OWN.

1993年のバンド結成から数回のライブを行なった後に活動を休止。そして、2000年から活動を再開し、ヒップホップ、テクノやハウスといったダンスミュージック、グラフィティやスケートボードなどと地続きのハードコアを真に体現してきたStruggle For Pride。2010年以降、長らく活動できない状況が続いていたが、2016年から再び活動を再開すると、彼らの発する爆音は、長い空白とその間に膨らんだバンドにまつわる神話を瞬時にかき消した。

「どんな音楽でもそうだと思うんですけど、どれだけ年食ってて偉そうにしているバンドでも、たいしたことなければ一発で終わりですからね。だから、久しぶりに活動を再開するにあたって、ただ、懐かしいだけのライブになっていたら、もう辞めようと思っていたんですけど、何度かライブをやるうちにいろいろなことを思い出していって。今年に入ってからは、ようやく初めてライブをやったときのように、全部ひっくり返してやるっていう気持ちで臨めるようになりましたね」

そう語るのは、フロントマンの今里。ノイズコアとも形容される、ライブハウスの空間全体がうねるような極端なバンドサウンドの真っただ中から放たれる彼の叫び、その言葉は、音の渦に巻かれて、聴き取ることはできない。しかし、その音塊に宿る彼らの意志を感じ取ることは決して難しくない。

「もちろん、歌詞はちゃんとあって、そこでは自分の身に起こった事柄や思ったことを書いているし、リスナーとしても歌詞カードを読みながら、レコードを聴くのは大好きなんですけど、恥ずかしさもあって、ヴォーカルの音量は低いまま、ずっと活動してきました。だから、いまさらボリュームを上げることができないっていう(笑)。でも、トロピカリズモ(60年代後半の当時の軍事政権に反発したブラジル音楽)とかを聴いても、言葉はわからないのに、その姿勢は伝わってくるじゃないですか。だから、自分はそこまで伝わりにくいことをやってるつもりはないんです」

Struggle For Prideのメッセージは、音と言葉だけでなく、作品やTシャツのアートワークという形をとることもある。

「Tシャツは、VIOLENT GRIND(下北沢のスケートショップ)でアルバイトしていた10代の頃から作っています。例えば、『TARGET VIDEO』っていうVHSビデオのシリーズがあるんですけど、それを一緒に見ていた友達と盛り上がって、そこに出てた格好いいバンドのレコードをもとに、その日のうちにTシャツを作ったり。そういう気軽な感覚で今も変わらずTシャツを作ってて、思ったこととか、友達にもらった絵を使ったりして、さくっと形にする。だから、自分としては特別変わったことをやっているつもりはないんです」

大阪のハードコアとそこから派生したルードミュージックとしてのスカやレゲエに大きな影響を受け、頻繁にライブに足を運んでは知見を広げている彼だが、2006年に発表したファーストアルバム『YOU BARK WE BITE』以来11年ぶりに制作を行っている新作アルバムは、生まれ育った東京の街に根ざしたものになるという。

「空想の音楽も好きだったりはするんですけど、自分たちに起こったこととか、その周りのことしか自分たちは形にできないし、たまたま、自分は東京に生まれ育ったから、そういうアルバムを作っているという、ただそれだけのこと。自分にとっての東京はただの地元であって、それ以上でもそれ以下でもないんです。ただ、東京以外に帰る場所はないし、この街でずっと一番になりたいと思っていて、それは今も変わらないですね」

制作中のアルバムには、世代、ジャンルを問わず、彼が考える東京を体現しているアーティストが多数参加しており、ノイズコアに収まりきらない折衷性と実験性はStruggle For Prideの突出した個性であるといえる。さらに付け加えるなら、彼らの音楽世界は、激しく抽象的でエクストリームなものではあるが、非日常的なものではなく、むしろ、日常の特別な瞬間を増幅させるものだ。では、沈黙を破り、爆発的に膨らむノイズは何をもたらすのだろうか。

「以前、『CHANGE THE MOOD』っていうシングルを出したんですけど、その曲名は映画『ロッカーズ』から取ったんです。アップタウンのディスコでかかってる音楽がつまらなくて、DJブースにかけこんだ主人公が自分のレコードをかけるシーンがあるんですけど、そのときに『CHANGE THE MOOD』って言うんですよ。自分にとって、あるいは周りのみんなにとって、心地良くない状況を変えることに興味があります」

状況を変える音楽といえば、今回、撮影を行なった代々木公園陸橋の脇は、以前、Struggle For Prideが出演したハードコアのライブイベント「CHAOS PARK」がゲリラ的に行なわれた場所でもある。普段、何気なく通り過ぎていた公園の一角は、そのイベントによって、一瞬にして、身近な、魅力的な場所に変わったのをよく覚えている。

「そのときはお巡りさんに怒られちゃったんですけどね(笑)。怒ってるお巡りさんの後ろで白バイにまたがって遊んでるやつがいて、それを見たお巡りさんも笑っちゃっていて。あれはいい思い出です。公園はみんなの場所だからうるさいって言われたら、止めるべきなんでしょうけど、上手い遊び方は絶対あるはずだし、みんなもっとやるべきだなって」

Credits


PHOTOGRAPHY SASU TEI 
TEXT YU ONODA
Photography assistance Melon, Ayumi Shinnai