T-shirt LOUIS VUITTON

ルイ・ヴィトンと藤原ヒロシ率いるフラグメントデザイン、池松壮亮が東京をまとう

架空のバンド「Lous V and The Fragments」と名付けられた、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)とフラグメントデザイン(fragment design)のコレクション第2弾。日本映画界を牽引する俳優・池松壮亮が身にまとい、東京を漂う。

by Mayuko Kumagai; photos by Chikashi Suzuki
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24 April 2017, 10:30am

T-shirt LOUIS VUITTON

昨年でも9本もの映画に出演している池松壮亮。映画の可能性を信じ、表現することに敬意を払い、スクリーンの中で躍動する彼が、藤原ヒロシ率いるフラグメントデザインとルイ・ヴィトンのコレクションをまとう。5月に公開となる映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』のことから、ファッションのことまで、一語一語、誠実に、真摯に、言葉を紡いでいく。

『ぼくたちの家族』『バンクーバーの朝日』に続いて石井裕也監督と3度目のタッグとなった『夜空はいつでも最高密度の青色だ』ですが、原作は最果タヒさんの詩集です。どのような気持ちで臨みましたか?
オリジナルではないけど、オリジナルみたいな気分で作品に臨みました。今は圧倒的に小説やマンガが原作の映画ばかりで、俳優としてはちょっと不便に思っていたので楽しかったです。

日本映画はほとんど原作ものという現状ですが、演じる側としては何かしら窮屈さを感じるのでしょうか?
そうですね。できれば(原作を)読みたくない、無視したい。そういうわけにもいかないですけどね(笑)。でもなかなか原作を超える映画が出てこない昨今、この現状はどうかなとも思います。

演じられた慎二ですが、堰を切ったようにバーッとしゃべりだします。どのように役を作っていったんでしょうか?
慎二は不安を感じると何かを埋めるように突然しゃべりだすし、不安を感じていなかったら黙っています。でもそういう人って僕の周りにも多いし、けっこういると思うんです。不安とまではいかなくても場を埋めるために言葉が出てしまう。だから彼にとってしゃべることは無理をしているということなんですよね。すごく優しい人だと思います。誰かの不安や悪い予感を感じとって、言葉はついてきていないのに懸命に何とかしゃべろうとする。そのギアをどこまで上げていくかという話は石井さんと毎回していました。

難しかったですか?
いえ、面白かったです。今回の慎二という役は久々に大切に思う、愛おしい役でした。

Jeans (Japan Limited).

手応えみたいなものを感じましたか?
作品としてはかなり挑戦的なことをやっているので、そういう意味では非常に面白かったです。何となくの感覚ですけど、感度のいい方にこの映画の存在を気づいてもらい始めているというか、良い前評判が何となく耳に入ってきているんですよね。この手の小さな映画がフューチャーされることはなかなかないですけど、今、日本で作られている映画の中で新しいものができたと思いますし、日本映画でまだこういうことができるっていうのは救いでした。

慎二と美香(石橋静河)には身体的な接触がほぼないのに、愛し合っていることがちゃんとわかりますよね。
そんなこと知ってるみたいな当たり前のことを映画では観たくないんですよね。例えばラブシーン。僕もけっこうやってますけど(笑)。人と人が愛し合うことの結果ではなく、そこに行きつくまでのプロセスとか人の心がどう動いていくかということを映画で観たい。僕もこの作品をラブストーリーと言っていますけど、本当は何も信じられなくなった女の子が誰かを信じられる、何かを信じてみようと思えるまでの物語だと思っています。僕も本(台本)を読んだときに、相変わらず石井さんはラブシーンには興味ないんだなと思ったけど、そんなシーンはなくてもラブストーリーとしていけるんじゃないかなとも思いました。

2016年は9本も出演作がありましたし、池松さんは今後の日本映画界を牽引していく存在になると思いますが、どのように出演作を決めているんでしょうか。こだわりなどは?
基本的にはやりたいものしかやってないですよ。時々、間違えることもありますけど(笑)。作品選びにおいて監督はすごく大事だと思いますが、好きな監督だから全部出たいわけではないし、好きな映画だからいつでもやりたいわけではない。そのときそのときの感覚なんですけど、直感に頼るのではなく、すごく考えます。1本、映画を請け負うことは僕にとってはよほどのことで、必死に考えて考えて、それでもやりたいと思ったり、ひょっとしたら面白くなるんじゃないかと感じた作品に出ているつもりです。

Tattoo Sneakers. 

では『夜空はいつでも最高密度の青色だ』に出ようと思ったきっかけは?
まず詩が原作って聞いたことなかったのですごく新しいと思ったこと。最初に詩を読んだときに映画になりうる題材だと思ったこと。そして"今"を――石井さんが今の東京を描こうとしていたことが自分の中でグッときました。日本で社会を映した映画って、あまりにもなくて、もう作られないんじゃないかと思っていたので、そこに圧倒的に惹かれました。

たしかにキャラクター造形や東京の風景も圧倒的に"今"を映していますね。
昨今の日本映画は社会と切り離されて、物語だけの世界になっているんですよね。それはそれでエンターテインメントになっていればもちろんいいんですけど、映画にはもっとできることがあるんじゃないかと思うんです。映画を観て、その国のことを知ったり、時代に漂うムードやそこに生きる人々の感情を知ることができますよね。僕自身が世界を広げてもらったのも映画ですし。東京を題材にした映画を僕は久しく観ていないと思っていたけれど、もともと今の日本に生きることの気分を最果さんが詩にされていて、そこから石井さんが抽出して映画にしたのが新しいし、興味深かったです。

Beret.

石井監督は池松さんにとってどんな存在ですか?
自分が言葉にできなかったことや表現したかったことを、どうして毎回映画にしてくれるんだろうという感覚があります。今いる映画監督の中ではかなり年齢が近い方なので、感性がぶつかる瞬間があるんだろうなと思っています。石井さんも僕も、映画が映画のまま終わるために作っていないというか。"この先"を信じているから映画をやっている部分もあります。

"この先"とは?
映画が2時間の時間つぶしで終わってほしくないというか。映画を観てくれる人たちの人生にその作品が何かしら携われたらいいなと、その2時間が特別な時間になってくれたらいいなと常に思っています。

なるほど。そこに池松さんの作品選びの一端があるのかなと思いました。
さっきはあえて言わなかったんですけど、やっぱりひとつ(作品選びの)基準があるとしたら、"人間賛歌"です。僕の基準ですけど、台本を読んだときに人間賛歌になりえると思えなかったら、正直、やれない。実はいまだにあまり仕事している感覚がないんです。もちろんプロとしてお金をもらってメシを食っているんですけど。表現って今は誰でもできるものになっていますが、本来、限られた人たちが表現という十字架を背負いながら、多くの人の前でやる崇高なことだと思っていて。表現するということに対して自分が仕事としてやっている発想がまだないんですね。でもやっぱりひとりでも多くの人に観てもらいたいから映画をやっているんだと思います。……答えになっているかわからないですが。

Varsity Jacket.

今日はLOUIS VUITTONを着ていただいてのシューティングだったのでファッションについてもうかがいたいのですが、普段、洋服を選ぶときの基準を教えてください。
俳優は現場に行って脱いで衣装に着替える職業なので難しいです(笑)。僕自身が着ることに対してのファッションというより、衣装に対してものすごく興味があります。服装はその人のキャラクターが見えますし、思想が出るものだと思います。とはいえ、こういう仕事をしていて、街を歩いているときに池松壮亮がいると見られたとき、何を身にまとっているかとかどういう立ち居振る舞いをしているかということは考えますね。これだけ俳優の素の顔が見られてしまう時代ですし。

今日のようなファッション・シューティングは、役を演じることとは違うと思います。池松壮亮としての素を見せながらになるのか、それとも撮影のコンセプトなどを考えて頭の中で"演じる"ように撮られるのか、どちらなんでしょうか。
俳優の良くないところだと思いますけど、キーワードを与えられると引っ張られます(笑)。例えば以前、今回も撮っていただいた(鈴木)親さんと撮影したとき、ブランドの方に「スナイパーです」と言われてそういう気持ちになりました。僕はファッションの撮影をたくさんやっているわけではないですし、写真を撮られるときに何かできるとも思っていないし、そもそも俳優なので本当はよくわかってないというのが正直なところかもしれません。

Cardigan, T-shirts, Trousers and Tattoo Sneakers. 

今日のLOUIS VUITTONの撮影はいかがだったのでしょう。
今日は親さんが撮ってくれるということで、ヴィトンというハイブランドと自分のズレを面白く撮ってくれると思いました。

LOUIS VUITTONグザヴィエ・ドランやレア・セドゥなど、映画俳優をモデルに起用していますよね。だから鈴木親さんも、インターナショナルな基準で考えるとヴィトンを池松さんが着ることはすごくマッチすると。
日本ではテレビやネットが中心になっていますけど、やっぱりヨーロッパは映画が文化の中心にありますよね。『夜空はいつでも最高密度の青色だ』でベルリン国際映画祭に行ったときもそう思いましたし、映画がまだ表現として成立していると感じました。俳優としてファッションのページに出ることにはちょっと抵抗あるんですけど、親さんが言ってくれたように、俳優として表現できるものがあるのであれば、呼ばれたものには応えたいという気持ちがあります。ヴィトンのモデルが映画俳優であるように、本来、映画や音楽、ファッションなどの文化はすべてリンクしていてほしいと思いますし。……つまり、日本映画がもっと頑張らないといけないですね(笑)

Varsity Jacket. Beret.

問い合わせ先:LOUIS VUITTON CLIENT SERVICE 0120-00-1854

Credits


Photography Chikashi Suzuki
Styling Masataka Hattori
Hair and Make-up Hiroki at W
Text Mayuko Kumagai
SOSUKE WEARS ALL CLOTHING LOUIS VUITTON.