YOONが語るAMBUSH®のDNA

カニエ・ウェストやファレル・ウィリアムス等、世界を代表するアーティストやクリエイターに愛されているAMBUSH®。彼らの “ものづくり” に迫るべく、デザイナーのYOONにインタビュー。

by i-D Staff
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20 May 2016, 10:30am

リアーナやG-DRAGON等、世界基準で活躍するセレブリティが愛用するAMBUSH®は、2008年にスタート。代表作の1つとなったPOW®をモチーフとしたジュエリーは、世界中のアーティストやクリエイター達を席巻し、UNDERCOVER やsacai、LOUIS VUITTON(Kim Jones)など錚々たるデザイナー達とのコラボレーションを実現させ、日本を代表する最重要ブランドの1つとなっている。2015年には、Business of Fashion(BOF)が発表する「ファッション界を変える世界の500人」にデザイナーのYOONとディレクターのVERBALが共に選出され、世界で重要なインフルエンサーとして注目を集めている。また同年ブランド初となるパリでの展示会を成功させ、今年2016年には新コレクションを機にブランドを一新し、シルバーをメインとしたクリエイションを再びパリにて発表。最新コレクション「ハルプシュタルケ」は1950年代に現れたハルプシュタルケと呼ばれる若者たちを着想源に、世間が強いる社会的階級や支配的な若者文化による抑圧に立ち向かう彼らの姿勢を投影させ、釘やチェーンなどのインダストリアルモチーフをスタイリッシュなシルバーアクセサリーに昇華させたものとなっている。

今回のコレクションまでの経緯について教えてください。
去年の1月にパリで初めて展示会をした時に、様々な分野の人達からいただいたフィードバックをきっかけに、ジュエリーそのものとデザインを含めて「変わらずに残るものって何だろう」と考え始めたんです。次のステップを決める時に、急いで6月にもう一度展示会を開催する事よりも、新しいスタートとしてブランディングを刷新することに焦点を当て、素材を真鍮からシルバーに変えてチャレンジしてみようと思いました。でも、基本的なところは変わらず、全て日本製にこだわっています。週4回は東京の下町にある現場に見に行って、 自分達のポリシーや基準に合わせて作ってもらえるように、職人の方達とコミュニケーションを取っています。ブランドとして「良いもの」を作ることが最も重要だと捉えているので、きちんとコントロールができる距離でものづくりをするのが、自分たちにとって一番しっくりくるんです。

アパレルラインも増えましたね。
今回ルックブックを制作するときに、他のブランドのアイテムを使うと自分達の世界観を表現するのに限界があることに改めて気づきました。全く新しい形のアクセサリーを作ることが多いので、どうやって自分のスタイルに取り入れたら良いかという声が寄せられたこともあり、それならアパレルを拡充し、トータルコーディネイトで見せてはどうかと。その結果「これだったら私も着用できるかも」「こういう風に着ればいいんだ」と伝わりやすくなったと思います。あくまでもAMBUSH®はジュエリーブランドなので、服はジュエリーの存在をバックアップするもの、というスタンスで作っています。

ヴィジュアルも力を入れて作っていますよね。
今回はDAZED&CONFUSEDのクリエイティブ・ディレクター、ロビー・スペンサーに依頼しました。撮影がパリ展示会の1週間前というタイトなスケジュールでしたが、展示会では『VOGUE PARIS』や『GQ』といった雑誌の方々をはじめ、多くのスタイリストさんに興味を持ってもらえたのがすごく嬉しかったです。今まで実際にお会いしたことがなかったメディアの方々にも、たくさん来場いただきました。

YOONさんは今注目の存在なので、実際会ってみたかったんだとおもいます。
恐縮です!でも、結局は生み出す商品がしっかりとしていることが大前提だと思います。ものづくりって、料理と一緒で愛情がこもっていないと美味しいものが出来上がらないので、どんなものでも、それに対してどれだけ愛とエネルギーが注がれたのかってすぐ分かりますよね。だから私も、ポジティブな気持ちで楽しみながら愛情を持ってやっていきたいといつも思っています。オリジナルへのこだわりはすごく大事にしていて、 パーツも一つ一つ作っているんです。 全て完成するまでは地道な作業の連続ですが、その過程も楽しんでいます。

デザインは、VERBALさんも一緒に考えるんですか?
もちろん携わっていますが、彼は全体のディレクションや経営を主にハンドリングしていて、デザインに関しては実用的な視点からアドバイスをしてくれることが多いです。例えばサイジングで行き詰った時に、こうしたらもっと着やすいとか。1人で考えていると視野が狭くなりがちだから、それをもっと広げてくれたり、ビジネス面でのバランスをうまくとってくれているのですごく大切な存在ですね。

グローバルな視点を持ち、音楽やカルチャーにも精通しているYOONさんですが、現在の日本の若者達やユースのカルチャーをどう見ていますか?
インターネットが普及したことで、好きな時に世界中の情報が得られる時代になり、その影響が大きいのか、日本は真似が多いなと感じることがあります。インスパイアされることは決して悪いことではありませんが、そこからさらにステップアップして新しいことをしてほしいですね。 欧米で起こっていることが"IT"として扱われやすいですが、アジアからももっと何かを発信できるんじゃないかって思います。欧米のものをコピーしたり比較したりするだけじゃなく、もっと時間を費やしてリサーチを重ねて、上のレベルへ発展させるべきなんじゃないかなと。年を重ねると自分の時間を確保するのが段々難しくなってきますし、いろんなことに果敢に挑戦していけるのは、若いうちの特権でもあります。実際に試して、感じて、その中から"私"なのかそうじゃないのかを判断する、いつも成功するとは限らないですが、そういった失敗もたくさん積み重ねて、発信してほしいと思っています。

YOONさんの若いころはどんな風に研究しましたか?
私はシアトルの郊外に住んでいて、当時はもちろんインターネットもなく、欲しい情報は自ら取りに行かないと無い時代でした。とにかく図書館へ通いつめて、いろいろなジャンルの本を読みあさったりするくらいしか方法がありませんでしたが、そういったリサーチの時間が大好きでした。今考えるとそういう時間があったからこそ、音楽もファッションも含めて今の自分があるのかなと思います。制限があるということが、逆に想像力を活性化させるのかもしれないですね。例えばインターネットはとても便利ですが、自分のフィルターを通して考えることが大切だと思います。情報をただ受け取るのではなく、しっかり選んで、立ち止まって振り返ることも必要です。

今回のコレクションは、"世間が強いる抑圧に立ち向かう姿勢を捉えている"とリリースにありますが、日本においてどんな抑圧を感じてコレクションに反映させたのでしょうか?
特に何かに立ち向かおうと言うつもりではないのですが、時折反骨精神をもっているように思われがちなのは確かです。私は一般的に思い描かれる"デザイナー"に対するイメージに当てはまるタイプではないと思っていますし、メイクやファッションも自分のスタイルを貫きたいと思っています。しかし、日本では派手な出で立ちの女性は見た目だけで判断され、実績や能力があったとしても、それ以上で評価してもらえない風潮がある気がします。例えば、男性は格好も派手でいい車を乗り回して仕事も絶好調だと"イケてるビジネスマン"として見られがちですが、これが女性だった場合、何故か同じように捉えてもらえません。ジュエリーのデザインに関しても、今までのジュエリー界の既存のルールには準じていないかもしれませんが、それが全てではないと思っています。良い意味で規則に従わない姿勢を貫こうとしたり、新しいことを始めようとすると、型にはめたがる俗世間と向き合わなければいけない時が多々あって、そんな経験が "出る杭は打たれる"という諺とシンクロしました。
VERBALといつも話してるのは、ブランドとして何が一番いいのかということ。過去に成功しているビジネスモデルも、自分のブランドにとって有用ではないと思ったら、必ずしも従わなくていいんじゃないかと思う時もありますし。前例に沿っているという理由だけで採用するよりも、自分たちにしか出来ないやり方を大事にして、結果を"形"として残すのが一番大切なことだと思います。
新しいことを始めるのは、既存のものをなぞるよりも膨大な努力やエネルギーが必要。自分たちが納得するものをつくるためには、もちろん壁にぶつかる時もありますし、以前のやり方をとるべきなんじゃないかと自問する時もあります。でも、最終的にはいつも自分たちのビジョンを貫くことを第一に考えベストな方法を選択しています。そのためには、常にフレキシブルなマインドでいることも重要ですね。
周りにどう思われるかよりも、自分たちのポリシーや一つ一つのコレクションに込める思いを大事にして表現したい、という思いを体現したコレクションなんです。

今年お店のオープンを予定しているんですよね?
夏の終わりを予定していますが、ブランドの次のステップとして重要な岐路だと捉えています。ただショッピングをするだけではなく、ブランドのファンはもちろんのこと、クリエイティブな友人達が気軽に訪れて情報を交換し合い、新たなカルチャーの発信源となるようなスポットにしていきたいと思っています。

エイサップ・ロッキーのMVにカメオ出演したときのことを聞かせてもらえますか?
日本での撮影でしたが、出演してみないかという話が知り合いの関係者からVERBALを通して連絡がきたんです。そもそも演技の経験がないので、モデルや女優の友人を紹介すると伝えましたが、曲を聴いた時に斬新だと感じて、挑戦してみようかなと思いました。撮影当日は、ロッキー本人が曲をかけながらコンセプトも説明してくれました。実はPV の内容はその日まで聞かせてもらえなくて、前日まですごく心配だったんです。そして編集が上手なのでロマンティックに見えていますけど、実際は寒くて凍えながらの撮影でした(笑)。受賞は逃してしまいましたが、グラミー賞にもノミネートされて嬉しかったです。

そういう交流もコレクションに反映されていると思いますか?
自分のアイデアや好きなものはもちろんありますが、やはり存在感がある人に会うと影響を受けますね。例えばエイサップロッキーは、素晴らしいカリスマ性を持つアーティストだと思いますし、自然と「こういうかっこいい人がつけるものってなんだろう」と考えますね。周りにいる才能のある人達から受けるインスピレーションは、コレクション制作の大事な着想源の一つになっていると思います 。

AMBUSH® OFFICIAL WEBSITE
WWW.AMBUSHDESIGN.COM
AMBUSH® HALBSTARKECOLLECTION
http://www.ambushdesign.com/collection/?lang=jp

Credits


Photography Dan Bailey
Text Yuka Sone

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