Nan Goldin, Blue, 2016

ナン・ゴールディン、未公開ドローイング作品を初公開

現在ニューヨークで開催されているナン・ゴールディンの個展「blood on my hands」。展示を通して、彼女が長年書き続けてきた“日記”が作品制作にどのような影響を与えてきたのかを考える。

by Emily Manning
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24 November 2016, 2:21am

Nan Goldin, Blue, 2016

被写体の魂に内在する、感動的で痛々しいまでの孤独を描き出した、1986年発表の『The Ballad of Sexual Dependency』。ナン・ゴールディンは、序文の中でこの写真集を「この日記を、みんなに読ませてあげる」と書いている。切なくも温かい視線をヴィジュアルで記録せずにいられないアーティスト、ナン・ゴールディン——その半生において、日記は常に生活の大きな一部だったそうだ。「今でも日記はつけているの。昔ほどじゃないけど」と彼女は雑誌『BOMB』とのインタビューで語っている。「昔は、ひとが私に話しかけているときでも日記帳を開いて書き込んだりしていたわ。すべてを書き留めておかずにいられなかった。でも実際のところ、そんなときは大抵酔っ払っていたから、書き留めたものの多くは判読できないの。すべてを書いたのに、そのまま読まずに眠ってる文字がたくさんあるわ」

Nan Goldin, The blue boy with the chip on his shoulder, NY, August 2016, 2016

ゴールディンの最新個展「blood on my hands」で、ゴールディンは子ども時代の日記に描いたドローイングを展示している。読み返してこそいないかもしれないが、強い衝動に突き動かされて書いた昔の日記は、今のアートワーク制作に大きな影響を及ぼしているのだという。

近年、彼女のドローイングは完全に独立したアート作品として存在感を放ちはじめた。まずは「blood on my hands」で初公開された作品群だが、現在はギャラリーMatthew Marks Galleryで展示されている。「日常的に自らの心の内を省みる行為から生まれたこれらの作品もまた、彼女が写真で捉えてきた"痛々しいまでの純粋さ"ともいうべき世界観に溢れています」とギャラリーの案内には書かれている。「しかし、その様々な媒体を通してそこに映し出された象徴的なイメージと、手書きで添えられた言葉、そして表面から透けて見える奥行きの深さは、彼女の作品としては新しい表現手段だといえます」

Nan Goldin, Black, 2016

「blood on my hands」の作品に見られるそれらの新しい表現方法のひとつに、どこか感情に訴えかける配色がある。ある作品には美しいグリーンと深く物憂げなブルー、薄いラヴェンダーが配されているが、この色こそは「blood on my hands」の写真作品でも"まとめ役'として大いに機能を果たしている。過去20余年にわたりゴールディンが打ち出してきた「イメージの並列」に、「色」でまた新たな力を生んでいるのだ。並列されることで、そこに格子状の図形が浮かび上がるわけだが、ブルーやピンク、ゴールド、ブラック、レッドなど、様々な色の格子を生み出している。色分けされ、配列されて新たな作品の一部となった写真には、40年に及ぶ彼女のキャリアを見てとることができる。

Nan Goldin, The cyclops, Berlin/NY, September 2016, 2016

ホイットニー美術館のソンドラ・ギルマン写真部門キュレーター、エリザベス・サスマン(Elisabeth Sussman)は、これらの格子状作品とスライドショー作品に重大な共通点を見出すことができると説明している。ゴールディンは1985年に「The Ballad of Sexual Dependency」で初めてスライドショー形式を用いており(そして現在、MoMAで開催されている個展では、オペラ歌手マリア・カラスやロックバンドのヴェルヴェット・アンダーグラウンドなどの曲をバックにスライドショー形式で作品を展示するという当初の展示環境を再現している)、「スライドショーでの表現に自然と呼応する格子状形式での表現は"個人の魂には、歴史と時空というものが同時に存在する"というゴールディンの思想を反映しているのです」と、ゴールディンが40年にわたり写真で表現してきた固執と依存の孤独について、サスマンは話す。

「blood on my hands」は2016年12月23日までMatthew Marks Galleryにて公開されている。詳しくはこちら

Nan Goldin, Red, 2016

Credits


Text Emily Manning
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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